エヴァ旧劇考察"まご君"編②「セフィロトの樹・ロンギヌスの槍・生命の実・光の翼」

"まご君"考察第2弾です。

今回は"まごころを、君に"を初めから細か~~~く見ていきます。

まご君はAirにも増して情報量が密で、マジでワンカットごとに注目したいポイントが出てきますね……

 

前回のお話し☟

tomaonarossi.hatenablog.com

 

【目次】

 

セフィロトの樹の機能

まご君の冒頭はレイとゲンドウがなにやら怪しげなことをしているシーンから始まります。

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レイとゲンドウの怪しすぎるムーブ

初めて見る人は「おぉまたヘンテコなことになっとんなぁ」ってなるシーンだと思うのですが、実はここはそんな驚く場面ではありません。

ここに来る前レイが何をしていたのかを思い出しましょう。

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謎場所で浮かんでるレイ

なんか変な場所で水に浸かってますね。

以前、サードインパクトは前々から日時が明確に決められていた出来事だと述べました。またレイがここに来たのはサードインパクトのせいぜい5,6時間前です(旧劇考察Air編①参照)。これらのことから

レイはサードインパクトに備えるためここに来た

ということが分かります。この謎場所に来て、サードインパクトに向けて最後の調整を受けたということでしょう。ではその調整とは何でしょうか。

 

思い返せば、確かにサードインパクト直前、レイの身体は変なことになってましたね。

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何もしてないのに左手が!!

レイがこんな状態になることは今までありませんでした。当たり前です。日常生活でいきなりこんな風に腕がもげたら大変ですからね。これは明らかにサードインパクトのために何かしらの調整を受けた結果です。ゲンドウはこのレイを見てこう言います。

ゲンドウ「時間がない。A.T.フィールドがお前の形を保てなくなる」

 ここでレイが調整を受けている風景をもう一度見てみましょう。なんか変な形をした穴の1つにレイが入っていますね。これは"セフィロトの樹"と言う聖書に出てくるものがモチーフになっています。

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左:セフィロトの樹を模した水槽の中にいるレイ

右:セフィロトの樹(wikipedia)

このセフィロトの樹は作中もう1回だけ出てきて、それがこのシーン☟

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これを見て冬月先生はこう言います。

冬月「アンチA.T.フィールドか」

まとめるとこうです。

・セフィロトの樹型の水槽で調整を受けた後、レイの身体は崩れた。

・セフィロトの樹状に隊列を組んでエヴァ量産型はアンチA.T.フィールドを形成した。

 

旧劇考察②A.T.フィールドは肉体を形成する力だと述べました。A.T.フィールドが肉体を保てなくなったということはこのA.T.フィールドが人為的に弱められたということでしょう。セフィロトの樹登場の後、A.T.フィールドの弱体化、アンチA.T.フィールドの発生というほぼ同じことが起こっているんですね。ここから逆説的にセフィロトの樹はA.T.フィールドに対抗する装置だということが分かります。

 

さて、なぜレイにこんな調整を施す必要があったのかと言われればそれはゲンドウ(の右手)を身体の中に受け入れるためでしょう。A.T.フィールドを弱体化させ、肉体を形成する力を弱めることで、ゲンドウはレイと(あるいはリリスの魂と)直接結びつき、サードインパクトに一枚かましてやろうとしたわけですね。

 

ロンギヌスの槍のレプリカ

一方その頃のシンジくんはというと……。

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シンジ「うわああああああああああ!」

大変な目に遭っていました。

このときの初号機は既にシンジくんの操縦を全く受け付けず、ゼーレの思うがままになっています(前記事参照)。このシーンで印象的なのはやはりロンギヌスの槍の挙動です。この項ではこのロンギヌスの槍について少し注目してみましょう。

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初号機が自力で肩の梗塞具を取り除くと月からロンギヌスの槍が帰ってきた!

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ロンギヌスの槍は初号機の喉元でピタッと止まる

これを見て委員会メンバーはこう言います。

委員会「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に帰った」

ここでわざわざ"オリジナル"と言うのはオリジナルでないロンギヌスの槍があるからでしょう。「オリジナルでないロンギヌスの槍」と言われて想起されるのは量産型が持っていた両刃剣しかありません。オリジナルでないということで、これをロンギヌスの槍のレプリカとここでは呼称することにします。

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量産型が持ってきた両刃剣は"ロンギヌスの槍のレプリカ"だった

要するに、この両刃剣も一種のロンギヌスの槍なわけです。 このレプリカの特徴は何といってもその自在な変形能でした。レプリカの槍が見せた多様な形状を少し振り返りましょう。まず上の画像であるような「両刃剣型」とおなじみの「ロンギヌスの槍型」。それからまっすぐの「銛型」。しゅーっと伸びて初号機の両手を突き刺した「如意棒型」なんてのもありました(この辺のネーミングは筆者が3秒くらいで考えたのでダサくても許してね)。

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左:銛型

右:如意棒型(初号機の手に突き刺さってる)

ここから分かるようにロンギヌスの槍って自在に形状が変化するんです。思い返せばこれはレプリカだけではなく、オリジナルの槍も作中何度か形状変化を見せていました。例えばテレビ版22話。

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零号機が槍を投げる瞬間、槍はぬるっと変形してまっすぐの「銛型」になった

ちなみに使途を貫いた後、槍はまたすぐに元の二股の形状に戻っているのが確認できます。露骨にはっきりと形が変化しています。また、まご君であればラストシーン「∞型」になった槍が登場しますがここなんかは印象的ですから覚えている人も多いかもしれません。

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∞型ロンギヌスの槍

ここから分かるように、オリジナルかレプリカかに関係なくロンギヌスの槍は形状が自在に変わるということが分かります。

「形状が自在に変わる」と言えば、同じ性質を持っているものがそういえばありましたね。アダムとリリスです。

アダムとリリスは肉体の産みの親であり、自在に肉体を形成することができると以前述べました(旧劇考察⑥参照)。

ここで言う肉体形成能力は言い換えるとA.T.フィールドの形成能力です。A.T.フィールドとは肉体を形作る力であり、A.T.フィールドによって肉体は形を保っています(旧劇考察②参照)。

A.T.フィールドが無くなれば肉体は形を保てず肉体の元であるL.C.L.になってしまいます。まご君にはA.T.フィールドを確認! 分析パターン青!」というセリフがあります。これは、A.T.フィールドを解析すれば、そいつがどういう肉体を持っているかが分かる(=使途なのか人間なのかの判別がつく)という理屈ですね。


話をロンギヌスの槍に戻しましょう。ロンギヌスの槍も形状が自在に変化しました。これも同じように考えることができます。つまり

ロンギヌスの槍は使用者や周囲A.T.フィールド に呼応して形状変化する

ということです。槍自身がA.T.フィールド形成するわけはないですからね。あくまで周囲のA.T.フィールドに反応するだけです。旧劇考察Air編③で「量産型の両刃剣はなんでいきなり槍に変形したんだろう」という疑問を提示しましたが、「そもそもロンギヌスの槍って自在に変形するものだ」というのがその答えなんですね。

これは別の言い方をすれば

槍の形状を見れば使用者の意思や状態が分かる

と言うことでもあります。

ただ、この槍は周囲のA.T.フィールドから影響を受けるだけでなく、槍の方からも周囲のA.T.フィールドにどんどん干渉していくというのが面白いところです。

 ロンギヌスの槍A.T.フィールドのバリアを簡単に破ります。 

量産型に槍を刺すとA.T.フィールドが変形し身体が部分的にレイ化しました(下図左)

アダムに槍を刺すことでセカンドインパクトは誘発されました(下図右)(考察②参照)

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槍の機能は"A.T.フィールドを貫通する"だけじゃない!

ここから最終的にこういうことが言えます。

ロンギヌスの槍とは、使用者の意思や状況に応じて、周囲のA.T.フィールドを何かしら変容させ、様々な現象を引き起こす一種の触媒のような存在である。

まあ要約してしまえば大したことは言っていません。

 

サードインパクトは初号機がトリガー

さて、話をサードインパクトに戻しましょう。

まご君考察①で述べたようにこのサードインパクトは初号機が中心となって進行しています。これは覚醒初号機から光の翼が生えていることからも裏付けられます。

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セカンドインパクト時のアダムの光の翼

サードインパクト時の初号機の光の翼

見た目(色合い?)が似てるっていうだけで言ってるんですが、想像するにこの2つの光の翼は同等のものです。4本出てるって点でも一致してますしね。

セカンドインパクトにおけるアダム

サードインパクトにおける初号機

ということでしょう。セカンドインパクトはアダムが覚醒することで引き起こされました(旧劇考察②)。サードはリリスや他の何かではなく、明らかに初号機のせいで始まったのです。問題はなぜ初号機がトリガーになれたのか?ということです。鍵となるのは以下の2つのセリフです。

リツコ「人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たった。それが15年前」(death(true)2)

冬月「使徒の持つ生命の実とヒトの持つ知恵の実、その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった」(まご君)

共にインパクトのトリガーを神と呼称しています。

 エヴァ世界での神とは"インパクトを起こし世界を作り変える力を持った存在"のことなんですね。そして冬月先生いわく初号機が神の力を持っているのは「生命の実と知恵の実両方手に入れたから」だそうです。

 ここでいう生命の実って何なんでしょう。

ネット上では「生命の実=S2機関」だという意見をよく見かけますが、筆者はこれはどうかなと思います。それを言えば三号機や量産型もS2機関を持っていますが、これらは神ではないからです。いまや人類にとってS2機関とは"自分たちで作れるもの"です。そんな簡単に神になる材料が手に入るわけありませんし、そんな簡単に生命の実が手に入るならゼーレはわざわざ初号機を使ってインパクトを起こそうともしないでしょう(S2機関についてはこちら)

筆者は生命の実=使途の肉体くらいのイメージでいいんじゃないかと思います。対応から知恵の実=ヒトの肉体です。

DEATH(TRUE)2にはこんなセリフがあります。

リツコ「アダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ

シンジ「人……人間なんですか?」

リツコ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには人の魂が宿らせてあるもの」

ここから分かるようにエヴァは人間と同じ肉体と魂を持っています。なので知恵の実の方は最初から持っていると考えましょう。じゃあ初号機が生命の実を手に入れたのはいつか? これはテレビ版19話のゼルエル戦しかありません。

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使途の肉体をくっつけると初号機の左手が再生した

この後初号機が使途を捕食するシーンもあります。ここから初号機はヒトの肉体と、少なくとも部分的には使途の肉体、その両方を持っているということが分かります。初号機はこのときに生命の実を手に入れ、神に相当する力を獲得したのです。初号機が使途の何かを手に入れるシーンは劇中ここしかありません。ここ以外ホントにないです。このとき初号機は既に神になり終わっていたということです。

そうなると

どうして初号機が生命の実を手に入れた時点ですぐサードインパクトが起きなかったの?

 っていう疑問が出てきます。結論から言うと

起こそうと思えばいつでもサードインパクトは起こせた

んだと思います。ただすぐに起こさなかったのはまだ使途が何体か残っていたからでしょう。以前述べたように使途というのはヒトにとって代わるかもしれない存在です。こいつらを全員殲滅しないとヒトの未来はそもそもありません。だから神の力は手に入れたものの、インパクトを実行せよ!っていうゴーサインは出なかったんだと思います。

 

このゴーサインを出すのはゼーレです。サードインパクトは前々から発動日時がはっきり決められていたというのはこの稿で何度か述べました。これは言い換えると初号機の覚醒(=サードインパクトの発動)は完全にヒトの管理下にあったということです。ゼーレがその気になればいつでもサードインパクトは起こせたのです。ただ思い通りのインパクトを起こすために時期を待っていただけで。

弐号機が始末された時点でタイミングよく初号機が覚醒したのもこう考えれば分かりやすいですね。分かりやすく言えば、ゼーレに「はい、舞台整ったから初号機出てきてね~」って言われただけなのです。

 

 

 

*続く(鋭意執筆中!)

次回、サードインパクトいよいよ勃発です!

エヴァ旧劇考察"まご君"編①「サードインパクト概論」

ついにエヴァ考察"まご君"編に突入です。 

今回のテーマは要するにまごころを、君に』では何が起こっていたの?です。

この考察記事はこれまで「このシーンが~」とか「このセリフが~」とかこっっっっっまかいことばっか書いてきました。しかし、エヴァ旧劇考察"まご君"編第1弾となる今回はいつもとは違います。細かいシーンはいったん飛ばして、映画全体をおおざっぱに見ながらお話を進めていきましょう。(結論ありきで進む場所もありますが、別稿でまた解説しますのでいったんお許しください)

 

ちなみに、このサードインパクト、一言で言うなら色んな人の思惑が交錯した結果、イレギュラーなことが起こりまくったというのが筆者の解釈です(1回しかないのにイレギュラーもクソもないだろうという感じですが……)

 

前回の記事☟

tomaonarossi.hatenablog.com

 

 

目次

 

ゼーレのサードインパクト

 さて、サードインパクトに際してまず動き出したのはゼーレです。彼らは戦略自衛隊エヴァ量産型を派遣してネルフを制圧、邪魔者となるかもしれない弐号機を破壊しました前回記事参照

そして初号機に槍を刺したり、なんか高いところに初号機を引っ張って行ったり(下図)することでサードインパクトの準備を始めます(この辺の細かい意味は後の記事で)。量産型はゼーレが派遣したものなのでこの量産型の挙動は当然ゼーレの意思を反映したものです。

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初号機に色々仕込む量産型

こういう量産型の挙動を見て冬月先生はこう言います。

冬月「ゼーレめ、初号機を依り代とするつもりか」

どうやら

ゼーレは初号機を使って自分たちの思うサードインパクトを進めている

ようです。しかし結論から言うとゼーレの思う通りのサードインパクトは起こりませんでしたシンジくんがいたからです。戦略自衛隊(戦自)がネルフに侵攻したとき、戦自はシンジくんを殺そうとしていたことを思い出してください。ゼーレの計画において必要なのは初号機だけであって、パイロットはむしろその計画遂行の障害だということが分かります。

劇中でゼーレメンバーはどや顔でこんなことを言っています。

委員会一同「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

まるでパイロットがいることも計画のうちだったみたいな言い草です。でもホントはシンジくんにそこにいてほしくなかったのがゼーレの本音なのです。

 

そりゃそうです、どこの馬の骨とも知れないただの中学生に大事なサードインパクトの行く末を少しでも握らせるなんてゼーレの望みではあるはずがありません。

実際、サードインパクトの発動にシンジくんは必要ではありませんでした。劇中、シンジくんが初号機を全く操縦していない(できていない)ことを見れば明らかです。シンジくんの意思と関係なく初号機は動き出し、動き出した初号機はなぜか既に実質暴走状態で、あとは戦うこともできずに量産型のなすがまま、それがシンジくんと初号機の状況でした。

この点から言えばゼーレの計画がくじかれたのは一重にミサトさんのおかげです。絶体絶命のシンジくんを戦自から救い、無理矢理にでも初号機の元に送り届けたミサトさんの行動は作中一のスーパーファインプレイだと思います。

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戦自を撃退し(まじファインプレイ)、シンジくんを無理やり連行したミサトさんの行動が結果的にゼーレの計画をくじくことになった

ここでじゃあ「なんで初号機は勝手にゼーレの思うがままに動いてるの?」ということですが、これは詳しくは後の考察に回します。が、初号機が最初に動き出した場面(=立ち往生していたシンジくんを操縦席に導いた場面)に限って言えば「ユイさんの意思」と言っていいでしょう。

初号機がパイロット無しで勝手に動くシーンは作中2回あります。1度目はテレビ版1話

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崩れてきた瓦礫からシンジくんを守るように初号機が勝手に動いた

これは息子を守ろうとするユイさんの行動と考えていいと思います。前の記事で述べたように、初号機はエヴァ本体の魂に加えて、ユイさんの魂がコアに取り込まれている特別なエヴァです。これはデフォルメの状態で既にパイロットが搭載されているようなものです。

初号機が勝手に動いた2度目のシーンはまご君のここ☟

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戦自が拘束した初号機は勝手に動き出し、立ち往生していたシンジくんを操縦席に導いた

ここもどう考えてもユイさんの行動でしょう。サードインパクトが起こる前にシンジくんを乗せることで、未来の行く末を息子に託したのです。こんなことをするのはユイさん以外考えられません。これはゼーレの思惑ではありませんしね。そう考えるとここは唯一ユイさんがゼーレに反抗したシーンといった見方もできるでしょう。

 

ここで「いや初号機が勝手に動くシーンって他にもいっぱいあるでしょ?」って思った人もいると思います。初号機が何度も見せる暴走シーンです。ですが暴走はユイさんの行動ではありません。零号機暴走事故を思い出してください。零号機にはエヴァ本体の魂1つしかありません。パイロットの意思と関係なく、そのエヴァ本体の魂に機体を乗っ取られた状態が暴走です。だからあんなに暴走状態のエヴァは理性を失った野性的な感じになるんでしょうね。筆者が思うに"エヴァ本体の魂"っていうのは誰かヒトから抜き取ったようなものではなく、赤ん坊に元から魂があるように、初めからエヴァのものとしてある魂なんだと思います。だからユイさんがエヴァを動かすときは理性的で目的があるのに対し、暴走するときはヒトらしくないあんな野性的な感じになるんじゃないでしょうか。(エヴァの魂については旧劇考察Air編③参照)

 

ゲンドウのサードインパクト

しかし動いているのはゼーレだけではありません。ゲンドウも何やら動き出します。旧劇考察④ゲンドウはゼーレに対抗するする切り札としてレイを用意していると述べました。ゲンドウはレイとそして右手に移植したアダム(の肉体)を使って自分なりのサードインパクトを始めようとします。

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右手に移植したアダムの肉体とレイを使って何やら企むゲンドウ

ここでゲンドウのセリフを振り返りましょう。

ゲンドウ「アダムはすでに私と共にある。ユイと再び会うにはこれしかない。アダムとリリス、禁じられた融合だけだ。(中略) 始めるぞ、レイ。A.T.フィールドを、心の壁を解き放て。欠けた心の補完、不要な体を捨て、全ての魂を今、1つに。そして、ユイの元へ行こう」

 ゲンドウはアダムとリリスの融合によってサードインパクトを起こし、ユイの元へ行こうとしているようです。

 

結論から言うとアダムとリリスは融合したものの、ゲンドウの思い通りのことは起こりませんでした。レイに拒絶されちゃったからです。

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ゲンドウの右手だけ取り込んでレイはゲンドウを拒絶した

でもアダムとリリスの融合は果たされています。本来のサードインパクトは「アダムと使途が融合することでヒトから使途への世代交代を起こす」というものでしたが、ヒトがそれを阻止しました(旧劇考察②)。

じゃあアダムとリリスが融合すると何が起こるんでしょうか? それを考えるためにここではアダムとリリスの関係について少し振り返りましょう。

ネット上ではよく、「アダムとリリスは地球の覇権を巡って争いあっている存在だ」という意見を見かけます。筆者はこの言い方はかなり語弊があると思っています。DEATH(TRUE)²のこのシーンを見てください。

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幼いレイが絞殺されるときその瞳にはカヲルくんが映っている

レイが死ぬときそこにカヲルくんがいるというのはレイの死をカヲルくんが導いているということを意味します(旧劇考察⑤参照)。

ヒトはリリスから生まれたから、ヒトの死はリリスによって導かれます。

同じ理屈で言えば、レイ(リリス)の死をカヲルくん(アダム)が導くということは、リリスはアダムから生まれたということでしょうか? そんなことはありません。

カヲルくんが死んだときを思い出してください。

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カヲルくんが死ぬときもそう言えばレイが来ていた!!!!

カヲルくんの最期にレイが現れたというのは偶然やレイの気まぐれではありません。ここでレイが来ないと設定が破綻するという必然のもとレイは登場しているのです。ここから言えるのはカヲルくんの死はレイが導いているということです。

 

つまり、アダムとリリスはお互いに死を導きあう存在であり、対立する存在というよりはむしろ循環する2つで1つの存在だということです。

なのでサードインパクトでヒトから使途へ世代交代するというのも、アダムとリリスの闘争の結果というよりは、単純にそういう自然の摂理なんだろうと思います。ヒトがそのルールを変に捻じ曲げてしまったわけですが。

 

さて、問題はこの循環する2つの存在が融合することで何が起こるのか、ということです。これがこの記事の結論になります。

サードインパクトでは生きているヒトの魂と死んだヒトの魂がすべて集められ、新たな肉体をもった新しい生命が新生した。

単純に今生きているヒトだけが生き残るわけではありません。生と死が交わり、アダムとリリス両方を産みの親に持つ新生命が誕生した、というのがポイントです。

ゲンドウがアダムとリリスの融合にこだわったのもここに理由があります。ユイさんはエヴァの中に取り込まれた結果、たとえエヴァ本体が死んでも永遠に死なない特別な存在になりました。そこに今生きているゲンドウが行くためにはやっぱり生と死をつなげるこのアダムとリリスの融合が必要不可欠だったんだと思います(詳しくは後述)。

 

ヒトの絶滅とその行く末

さて、サードインパクトで起こったことを理解するにあたってまず確認しておかないといけないのが魂の描写です。まご君ではこの赤い点がヒトの魂です。

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根拠として分かりやすいのがキール議長の最期で、キール議長の身体が溶けて崩れるのと同時に赤い魂が飛んでいくのがよく見れば確認できます。

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肉体が崩れるシーン(とそこから回収される魂)が唯一はっきり描かれるキール議長

悲鳴と共に地球表面が赤く染まり、大量の赤い魂が回収されていく下のシーンもこれを踏まえれば人類がまさに絶滅してるところなんだなというのが分かります。

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絶滅する人類と回収される魂

そして注目してほしいのはこの魂の行き先です。

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リリスのもとに向かった魂はリリスの手の中に入るものと、黒き月の中に入って行くものとで二手に分かれている

魂の行く手は二手に分かれていますね。

そしてこの直後、初号機はリリスの中に入ります。そこでシンジくんはある光景を目撃します。

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左:リリスの体内に入る初号機(だった生命の樹)

右:リリス体内でシンジくんが見た光景

たくさんのヒトが泳いで奥の白い球体に向かってますね。この泳いでる人たちはリリスの中に回収されたヒト(の魂)でしょう。

回収された魂のうち半分は黒き月に入っていきました。

そしてもう半分の魂はリリスの中に入り白い球体に向かっていきます。

この白い球体は何でしょうか。対応的に"白き月"以外に考えられません。

 

ここで"黒き月""白き月"について軽く補足しておきます。ヒントになるのがこのセリフです。

冬月「生命の源たるリリスの卵、"黒き月"」(まご君)

このセリフからリリスが生まれた場所が黒き月(=ジオフロント)、対応からアダムが生まれた場所を白き月と呼んでいます。

このサードインパクトは先も述べたようにアダムとリリスが融合して発動しました。だから魂が黒き月だけに回収されるというのはむしろ不自然な話で、白き月の方にも半分回収されるというのは何も驚くことではありません。

 

こうして全ての魂が回収される一方、シンジくんには一つの問いかけがなされます。「何を願うの?」と。全ての魂は回収されます。そのあとは新しい肉体を得て新生するだけです。ここではつまり「あなたはどういう肉体で生まれ変わりたいですか?」と尋ねられているわけです。

最初に述べたようにこのサードインパクトはゼーレの思惑によって初号機を中心に展開していきます。しかしミサトさんの尽力によってシンジくんが初号機に搭乗してしまったため、この一番大事なヒトのあり方を決めるところはシンジくんにゆだねられる形になってしまったんですね。

シンジくんからしてみれば、勝手に巻き込まれてそんな滅茶苦茶責任あること押し付けられて、迷惑もいいところだったと思うのですが……笑

 

こうしてシンジくんは色々考えて、紆余曲折あった結果、最終的な結論がこちら。

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「他人なんてもういらない」「みんな死んじゃえ」

それがシンジくんの結論でした。

アダムとリリスはその思いに応える形で新しいヒトの肉体を作り始めます。

 

新生人類

こうして新しい人類が誕生しました。新生したシンジくんから見た世界がこちら

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レイはこの世界をこう説明します。

レイ「ここはLCLの海。生命の源の海の中。A.T.フィールドを失った自分の形を失った世界。どこからが自分でどこからが他人か分からない曖昧な世界。どこまでも自分でどこにも自分がいなくなっている脆弱な世界」

シンジ「ぼくは死んだの?」

レイ「いいえ、全てが一つになっているだけ。これがあなたの望んだ世界そのものよ」

 他人を拒絶したシンジくんに与えられた世界は、他人がいない、その代わり自分もどこにもいない、そういう世界だったのです。

ここで、この新しい世界をよく見てください。

上下に赤い水面、見下ろすと地球、見上げると月、そして地平線の彼方に黒き月と右手にあるのは対応的に白き月でしょう。

この状況とぴったり合致するものが劇中1つだけ出てきているんです。

それが以下のシーンでリリスの首から迸る血の柱です。

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つまり

リリスの首からブシャーッと出る血、これが生まれ変わった新しい人類の身体です!!

マジかよwwと思ったそこのあなた、でもよく見てくださいよ。

シンジくんがもしこのほとばしる血の柱に新生したとしたら、どんな景色が見えると思いますか? 上下を赤い水面で囲まれ、見下ろすと地球、見上げると月、地平線の彼方(=血の流れの源)に黒き月、白き月が見えるはずです。

それにシンジくんが新しい世界(L.C.L.の海)にやってくるのは劇中リリスの首から血が噴き出すこのシーンの直後なんです。だからこう考えると時間の経過にピッタリ一致します。

トンデモ考察ではあると思いますが、結構気に入っています。あとこう考えるとホントに映画見やすくなるので機会があればぜひそういう視点で映画見てみてほしいと思います。

ブッダは母親の右わきから生まれたって逸話がありますよね。テンションはそんな感じでしょうか。

 

サードインパクトで起こったことを大まかにまとめるとこうです。

①ゼーレによって初号機中心にサードインパクトが勃発

②ゲンドウによってアダムとリリスが融合、死者を含めた全人類の魂が白き月と黒き月に回収される

③シンジくんが「他人なんていらない」と願ったため"他人も自分も無い単一個体"として人類が新生することが決定し、リリスの首から新生する。

 

さて、こうして新生した人類ですが、いざ生まれ変わってみるとシンジくんはあんまり気に入らなくて……? 

という話はまたおいおいしていきましょう。

 

今回のお話しはここまで。

次回以降はこの記事をもう少し深堀しつつ、細かい演出についてじっくり見ていきます。

 

 

*続きのお話し☟

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エヴァ旧劇関連記事まとめ☟

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エヴァ旧劇考察Air編③「覚醒弐号機」

エヴァ旧劇考察、Air編もそろそろ終盤です。

戦略自衛隊(=戦自)の侵攻により壊滅的なダメージを受けたネルフ

しかし、弐号機が覚醒することで状況が変わってきます。

 

前の記事☟ 

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目次

 

 まず弐号機覚醒までの流れを簡単に振り返ります。このときアスカと弐号機は戦自の侵略を逃れて地底湖の底に隠れていました。

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地底湖に隠された弐号機

既にネルフを制圧しつつあった戦自は湖の中にどんどこ魚雷を放り込むことでこの弐号機の破壊を試みます。

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弐号機の頭上で魚雷が破裂すると頭を押さえて苦しむアスカ

上のシーン、弐号機とのシンクロ率が低下していたアスカですが痛覚は依然シンクロしていることが分かります。エヴァを起動できないほどシンクロ率が低下していたアスカ(23話)が鮮明に痛みを感じるほど弐号機と感覚を共有しているというのはどういうことでしょう。ともかく、その"痛み"をきっかけに死を意識したアスカは恐怖から感情を爆発させ、そこで"母らしき幻"を確認します

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弐号機にいたのはお母さんらしき人影

こうして弐号機が覚醒しました。

この記事ではこの辺りを詳しく見ていきましょう。

 

幼児退行したアスカ

まずこの時のアスカですが、筆者は幼児退行していると思っています。根拠はまず下の一連のカット。

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海のカット。直後に幼いアスカ

この一瞬挟まる波のカットなんですが、波はキャラクターの現実と精神の境界の暗示だと考えてください。だから波を挟んだ後に出てくるのはアスカの精神そのものの像です。この波のカットが出てくるシーンは他にもあって例えば20話☟。

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エントリープラグ内の映像(現実)→波の映像→シンジくんの精神描写

波の映像の前後で、現実の描写と精神の描写が切り替わるのが分かりやすく確認できます。

また、時間的にAirと同じであるテレビ版25話ではアスカのことを指して「分離不安」であるという描写も見られます。これ、幼児に典型的な精神症状なんです。

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さらにこの時のアスカは弐号機と異常にシンクロしているというのにも注目しましょう。先ほど本来なら起動もできないほどシンクロ率が落ちているはずの弐号機となぜか痛覚を(それもかなり鮮明に)共有しているという話をしました。このことは他にもこんなシーンで確認できます。

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弐号機の頭が槍で貫かれると、アスカも頭(左目)から流血している

機体のダメージがパイロットの肉体に反映されています。これは今まででは考えられない異常なシンクロ率と言わざるを得ません。1話サキエル戦で初号機の頭が破壊されたときも、19話ゼルエル戦で弐号機の腕と頭が吹っ飛んだときも、痛覚の共有こそありましたがパイロットの肉体にこうも露骨にダメージが入ることはありませんでした。

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弐号機の右腕は槍で引き裂かれた

話が少し逸れますが、ここから例えば上のシーンについて、アスカの右腕がぱっくり割れるこのカットは演出なんかじゃなく、少しショッキングですが現実にアスカの右腕がこうなったんじゃないかという想像ができます。

このことは"まご君"のラスト、全てが終わった後のアスカが左目と右腕を包帯で巻いたいで立ちをしているところからももっともらしく思えます(詳しくは後述)。

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全てが終わった後のアスカ(左目と右腕に包帯)

この異常なシンクロ率はやっぱりアスカが異常な精神状態じゃないと説明できないだろうというのが筆者の主張です。

作中で散々言われていたようにシンクロ率というのはパイロットの深層心理を反映するものです。自分の存在価値に疑問を持ったり、不安を感じているとシンクロ率は低下します。このときのアスカにはそういったものが全くありません。彼女にあるのはただシンプルに「死にたくない」というのと「ママが見てるから頑張る」この二つだけです。これを幼稚と言わずしてなんと言いましょう。逆にこのシンプルさ故に異常なシンクロ率が出ていると考えれば……色々辻褄が合います。

こういうところからアスカは幼児退行しているという見方ができます。印象的な「死ぬのは嫌死ぬのは嫌……」と極度に死を恐れる(割にうずくまったまま何もしない)アスカの反応や、やたらと"ママ"にこだわり"ママ"に執着する幼稚としか言いようがない行動はここからきているのです。

 

弐号機にはアスカのお母さんがいるのか?

こんな状態のアスカが見たという"ママ"は本当に本物の母親なのでしょうか? 映画だけ見ていると本物にも見えるのですがよくよく考えると不自然な点が実はいくつもあります。ここでは弐号機にはアスカの母親の魂が入っているのか?という問題を見ていきましょう。

ちなみに筆者は「弐号機にアスカの母親はおらず全部アスカの妄想だった」と思っています。

 

根拠① 弐号機から聞こえた「一緒に死んで頂戴」

アスカが「死ぬのは嫌」と連呼しているとき、弐号機からアスカの母のものらしき声が聞こえてきます。その声は「まだ死なせない」「死んではダメよ」などアスカを守ろうとする声なのですがよく聞くとその中に「一緒に死んで頂戴!」という声が混じっているんですね。この言葉はアスカが幼少期に実際に母親に言われた言葉であり、彼女のトラウマを作った言葉でもあります(25話)。本来アスカの記憶の中にしかないはずの言葉が聞こえてくるというのは一体どういうことでしょう。アスカを守ろうとするその声も、アスカが見た母の姿もみんな幻覚でアスカの妄想に過ぎないという気がしてきませんか?

 

根拠② アスカの母の死と弐号機の製造時期

作中アスカの母はまだ開発途上のエヴァと不完全な接触をしたため精神が崩壊し、自殺したことが明らかになっています。明らかにアスカの母親とエヴァとの接触は失敗だったのです。

「仮定が現実の話になった」
「因果なものだな。提唱した本人が実験台とは」
「では、あの接触実験が直接の原因というわけか」
「精神崩壊。それが接触の結果か」
「しかし、残酷なものさ。あんな小さな子を残して自殺とは」(22話)

恐らく「エヴァからの浸食」「逆流」が起こって精神崩壊に至ったんでしょうね(これはエヴァとのシンクロに失敗したときによく出てくる言葉です(例えば14話))。こんな人の魂がエヴァに入っているとは考えにくいです。

 

また弐号機って恐らくかなり新しい機体です。アスカ自身弐号機を最初の制式タイプと呼んでいました。つまり、初号機や零号機の戦績を解析して弐号機が完成したっていうことです。実際テレビ版では8話になってようやく弐号機が登場しました。これはヤシマ作戦の後です。それまで弐号機はそもそも完成すらしてなかったってことだと思います。

これに対してアスカ母の自殺は文脈からしエヴァ開発のかなり初期の段階の出来事です。当然初号機完成の何年も前の出来事です。

こんな新しい機体に、そんな昔になくなった人の魂搭載するでしょうか。筆者はちょっと不自然だと思います。

 

こういうわけでアスカの母が弐号機に入っていると考えると作品の設定上色々厳しいところがあるんですね。

 

エヴァには魂がある

ところが話はそう単純ではありません。それは以下のようなセリフがあるからです。

レイ「心を開かなければエヴァは動かないわ」
アスカ「心を閉ざしてるってえの? この私が」
レイ「そう、エヴァには心がある
アスカ「あの人形に?」(22話)

 

カヲル「この弐号機の魂は今自ら閉じこもっているから」

カヲル 「ありがとう、シンジくん。弐号機は君に止めておいてもらいたかったんだ。そうしなければ彼女(=弐号機の魂)と生き続けたかもしれないからね」(24話)

 

リツコ「アダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ
シンジ「人……人間なんですか?」
リツコ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには人の魂が宿らせてあるもの」(DEATH(TRUE)²)

作中繰り返しエヴァには人の魂が入っているということが確かに示されているんです。

 

これをどうにか解釈しないといけないのですが、筆者の考察はこうです。

 

エヴァは製造段階で任意の人の魂が搭載され完成する

 

・アスカとシンジの母親は魂を搭載したエヴァのコアとパイロットをシンクロさせる実験の犠牲者に過ぎない

 

根拠はまず以下のシーンです。

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サードインパクトが終わった後、初号機は死んだ(魂がレイに導かれた)

旧劇考察⑤で述べたように人はリリスから生まれ、リリスに導かれて死にますレイに見守られるという形で映画上はそれが表現されていました。サードインパクトが終わった後、初号機は役目を終え、レイに見守られながら色あせていきます。これはどう考えても初号機が死んだことを意味します。そしてそこにレイがいる以上ここで死を迎えたのは人の魂以外ありえません。エヴァに人の魂が入っていなければここでレイが出てくるはずがないんです。

間違いなく

エヴァは人の魂を搭載して完成するのです。

言い方を変えれば

エヴァのコアは人の魂

とも言えるでしょう。

そして、ここで初号機の死と共に死んだのはユイさんではないというのがポイントです。

 

じゃあ誰が死んだのか? 

「ユイさん以外の魂(=それがエヴァそのものの魂)」としか言いようがありません。

エヴァとのシンクロに失敗し「エヴァからの逆流」が起こってアスカのお母さんは精神崩壊した、と先程書きました。ユイさんが帰らぬ人になったのもエヴァとのシンクロに失敗したからです(そして、ユイさんの魂は初号機の中に取り込まれました(旧劇考察③参照))二人ともエヴァのコアを作ろうとして死んだわけではなく、エヴァとシンクロしようとして亡くなったのです。二人はあくまで"エヴァのコア"という人の魂を搭載したものとパイロットをいかにシンクロさせるかという研究の犠牲者でしかないんですよね。

 

で、この事について面白い考察をしていた人がいたので作者の解釈も交えつつ紹介します。

 

それが

これら尊い犠牲の結果、パイロットとエヴァを安全にコネクションするために、生体コンピュータによって"パイロットの母親を機械的に再現する"という仕掛けが生み出された

というものです。

 

前の考察記事でMAGIは人の人格を再現した生体コンピュータであり、その技術はエヴァの操縦にも使用されていると述べました。ここでエヴァパイロットは全員母親がいないということを思い出してください。結論ありきになりますが、エヴァパイロットに母親がいないのは、パイロットにその機械的に再現された母親を違和感なく受け入れてもらうためと考えれば辻褄が合います。生体コンピュータが作る母の人格を違和感なく受け入れることが、エヴァパイロットの間でいわば緩衝材になり、それがエヴァの起動に必要だということです。(実際、それを母だと思いこむことができたので弐号機とアスカのシンクロはめちゃくちゃ高くなりました)

 またシンジくんのクラスメイトが全員パイロット候補生というのもこう考えれば理解しやすいです。つまり母親がいない学生のうち、その母親の情報が十分にそろっている(=人格の機械的再現が可能な)学生が集められているというわけです。

 

 

さて、こうして覚醒した弐号機は戦略自衛隊を相手に無双していきます。

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エヴァ無双

これじゃまずいということでゼーレは戦自に続いてエヴァシリーズ全9体をネルフに送り込みます。こうしてエヴァエヴァの戦争が始まるのです。

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弐号機の敗因

弐号機 vs 量産型9体の戦いは圧倒的に弐号機の優勢で進行します。

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粉砕されていくエヴァシリーズことエヴァ量産型

ところが戦闘終盤、最後の一機を倒そうかというときになって突然量産型の両刃剣(プラモデルの解説書でそう呼ばれてた)がどこからともなく飛んできます。最初はATフィールドでこれを防ぐ弐号機でしたが……。

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どこからともなく飛んできた両刃剣は、いきなりロンギヌスの槍に変形した

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すると倒したはずの量産型がなぜか復活して……

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この辺りはトラウマシーンとして有名

ここは初めて映画を見た人はなんで????ってなるところだと思います。
結論から言うと弐号機は量産機を一体も倒せていなかったわけですが、弐号機の敗因ははっきりしています。

それは量産機のコアを破壊していなかったからです。
それが分かりやすいのが量産型最後の一機を倒そうかと言うこのシーン。

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左:映画のシーン

右:同シーンのセル画(拾い画ですが……)

量産型は初号機や他の使途と同様にコアを持っているのが分かります。使途を倒すときは散々コアだけを狙えと教育されてきたはずのアスカですが、冷静な思考のできないこのときのアスカはそのことをすっかり見落としていました。使途はコアを破壊しなければいくら肉体を破壊しても死にません(1話)。エヴァ量産型も使途と同じくS2機関を搭載しているのでその点は同じです(旧劇考察③参考)。ここから明らかに量産型は死んだフリをしていたんだということがわかります。実際、まともに向かって行ってもフルパワー弐号機相手では量産型は手も足も出ませんから、そこで適度に戦って適度に死んだふりをして、弐号機の充電が切れるのを待っていたのです。こう見えてかなり狡猾な奴らなんです。
ところが弐号機の充電が切れる間近の惜しいところで最後の一体がコアを破壊されそうになってしまいます。後の考察で述べますがこの量産型はサードインパクトを起こすための重要なキーです。一機たりとも失うわけにはいきません。

そこで死んだふりをしていた量産型のうち一人が助け舟を出したというのがこの突然飛んできた両刃剣の正体だったんだと思います。

こうして量産型は狙い通り一機もかけることなく、最終的に弐号機は破壊されてしまいました。

 

 今回のお話しはここまで。

邪魔者を排除した量産機はついにサードインパクト、人類新生の儀式に取り掛かります……!

なんで両刃剣がロンギヌスの槍に変形したの?というのは次回以降に。

旧劇考察まご君編②参照

 

 次回、エヴァ旧劇考察、いよいよ"まご君"編に突入です!!!!

 

 

 

*続きのお話し☟

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今までのエヴァ関連記事のまとめ☟

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エヴァ旧劇考察Air編②「戦争開始、ゼーレvsネルフ」

エヴァ旧劇考察Air編第2弾です。

今回もまだ世界観考察はそんなにしていません。気付いたらメタ的な話ばかりになってました……。

 

ついに対立したゼーレとネルフ(ゲンドウ)。

 

サードインパクトのありようについて決裂した二者による全面戦争が始まります。

 

今回はこの辺を深く見ていきましょう。

 

前回の記事☟

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目次

 

と、本題に入る前にエヴァの演出というか映像作りの話を少ししたいと思います。

ピントの話

言うまでもなくエヴァはアニメーションです(と言っても"まご君"にはまさかの実写パートがあるのですが笑)。しかし、まるで実写映画のように(あるいは庵野監督が好きな特撮映画のように)、シンジくんたちを被写体としてそこにカメラを向けているかのような映像作りがいたるところでなされています。その例の1つがこのピントを動かすという手法です。

 

例えばミサトさんが登場するこのシーン

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夕暮れの芦ノ湖の風景が左から右に流れていきます(=カメラを右から左に振る)。

そしてカメラのピントがぎゅっと手前に寄ってミサトさんが映るバックミラーに焦点。

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先の映像は実は車内のミサトさんから見える風景だったということが分かります。

 

他にもこんなシーンがあります。

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ネルフのMAGIにゼーレがハッキング攻撃をしかける場面。

もともと冬月にピントを当てていますが、次の瞬間にはそれをぐっと遠ざけ、奥に控えるゲンドウに焦点を当てています。

こういうキャラクターを被写体としてそこにカメラを向けているかのような映像作りは画面を劇的に見せるためのちょっとした工夫の1つと言えるでしょう。

 

ところでなぜこんな細かい話をするかと言うとですね……。

 

サードインパクト時に露骨にシンジくんを被写体化する描写があって、その被写体化という行為自体が世界観考察のカギを握ってくるから

 

なんです。

ちなみにここなんですが☟。

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「このシーンって何?」とか「なんで夕日が二つ?」とかいう話もそのうち細か~くやっていきます(お楽しみに)。

 

もはや雑談の域になりますが、演出的な面ではもう一つ指摘したいことがあります。

視線の話

先ほど挙げた冬月先生をもう一度見てみましょう。

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よくよく考えればこの冬月先生「どこ見てんの?」って思いませんか。この冬月先生の視界にゲンドウが入ることは立ち位置的にありえないですよね。ゲンドウは冬月の後ろにいるわけですから。これは、実際見えてないのに見ているかのように映すことで、視線の先の注目対象に視聴者の意識を持っていくという演出的効果を狙ったものと言えます。この手法、よく出てくるんですよ。たとえばこれ☟

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マヤの視線の先にゲンドウと冬月。しかしマヤの視界に彼らが実際に入っているわけではありません。露骨な”見えてないのに見ているように映す”手法が使われていますね。他にもここ☟

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このような”実際見えてないのにそれを見ているように映すことで場面を盛り上げる手法”を効果的に使った有名なドラマがあります。

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はい。

家政婦は見た!』です。

以前テレビで主演の市原悦子さんがおっしゃっていたのですがこのカット、実際には見えないくらいのギリギリのところでやるんだそうです。確かに言われてみれば扉の陰でギリギリ何も見えてなさそうな感じしません?笑 視線の対象はこのドラマでは派遣先の家庭のスキャンダルとかそういったものですね。市原悦子さんいわく、こうすることで緊張感のあるカットが撮れるんだそう。

視線をどう使うかというのは映像を作る上では大事なポイントなんでしょうね。

 

あと少し話は変わりますが、旧劇場版エヴァでは今後この"目"というモチーフがいたるところで使われるようになります。なのでそういう観点からもこの「目に注目する」という視点は少し頭の片隅に置いておいてください。

目が意味を持って描写される例☟☟

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さて、長すぎる前置きはここまでにして本題に入りましょう。

 

ゼーレ侵攻(MAGI編)

いよいよ全面戦争に突入したゼーレとネルフ(なぜ戦争が起こったのかは後の考察で)。

 怒ったゼーレはネルフを占領するべくまず

MAGIのハッキングに乗り出します。

それだけ? と思うかもしれませんが冬月先生が本編で「MAGIの占拠は本部のそれと同義だ」と言っています。細菌型の使途がMAGIに取り付いた13話ではリツコの「MAGIを切り捨てることは本部の破棄と同義なのよ」という言葉もあります。

ここからわかるように MAGIの占拠=ネルフの敗北です。

13話ではMAGIが乗っ取られたせいで危うくネルフ本部が爆散消滅しそうになってましたね(1つのAIにそこまでのことができてしまうって組織としてやばい気もしますが)。MAGIの権限というのはマジで超でかいってことです。

 ここでMAGIについて少し振り返りましょう(13話)。

リツコ「人格移植OSって知ってる?」
ミサト「ええ第7世代の有機コンピュータに個人の人格を移植して思考させるシステム。エヴァの操縦にも使われている技術よね」
リツコ「MAGIがその第1号らしいわ」

 実際MAGIの中心部は脳みそみたいなデザインになっています。

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 この人格の再現であるMAGIの存在はエヴァという世界を理解する上で地味に大切な仕組みです。エヴァ旧劇考察①のラストでちょろっと述べたように、エヴァというのは究極的には「ヒトは進化の果てにどこへ向かうのか」というお話しであり、言い方を変えれば「ヒトとは何か」「ヒトの本質とは一体何か」を追究するお話しでもあります。例えばテレビ版最終話なんかは露骨で、シンジくんは観念世界で「僕って何なんだ!」と繰り返し叫んでいましたね(同じこのセリフを4回は言ってる)

これを踏まえた上で筆者はヒトの本質を究極まで機械的、物質的に解釈した結果の1つとしてMAGIという仕掛けが用意されているんじゃないかなと想像します。"ヒトの持つ感情も思考も人格もみんな脳が作る電気信号である"、"ヒトの本質はこの電気信号そのものである"、"その電気信号を再現できればそれはヒトである"という思考です。実際リツコは作中何度もMAGIに向かって「母さん」と呼びかけています。リツコにとってMAGIは単なるコンピュータではなく、母の分身か、あるいは母そのものなんだということが分かります。科学者であるリツコらしい言葉ですよね。MAGIをこんな風にヒト扱いしているのは作中リツコだけです。

同じ考え方が土台にある映画として『MATRIX』が有名ですね。『攻殻機動隊』にも似たところがあります。エヴァ攻殻機動隊も1995年の作品でマトリックスは1999年の映画なんですよね……なんかそういう考え方が流行ってた時期なんですかね?笑

 

ゼーレ侵攻(戦略自衛隊編)

"MAGIのハッキング"というゼーレの試みはリツコの 奔走により失敗に終わります。そこでゼーレは戦略自衛隊(通称: 戦自)を派遣し、ネルフを武力によって直接占拠しようとします。この辺りから物語が破滅に向かって一気に加速していきます。

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戦略自衛隊(この辺の兵器の作画すごく凝ってる)

目立つのはやっぱり残酷な描写が多いところです。死んだ仲間を泣きながら引きずるネルフ職員が銃殺されるシーン。手を挙げて投降するネルフ職員を撃ち殺し、倒れてもなお執拗に銃弾を浴びせるシーン。火炎放射機を人に使用する戦自……。中々きついものがあります。デカダンスというか、世紀末というか、世界の終わりが近づいているという感じがします。ここで筆者が注目したいのが以下のシーンです。

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肩を支えあい歩く戦自隊員の上に……

戦自侵攻の後、エヴァシリーズがネルフに投下されるシーンです。

見えにくいのですがよく見ると戦自隊員がエヴァの下敷きになってますね(映像だともう少し見えやすい)。左手前のピントがぼやけてるのも隊員の亡骸でしょうか。蹂躙されるのはネルフ職員だけではないようです。戦自によってネルフは蹂躙され、その戦自はゼーレによって道具にされるという権力構造を垣間見ることができます。(あとよく見たら公衆電話の受話器がポロって落ちてるのが作画が細かくてかわいい)

 

 ともかく一貫して見ることができるのは「命が軽く扱われる様子」です。言い方を変えれば「ヒトが簡単に死ぬ様子」でもあります。なんでこんな描写をわざわざ劇中に入れたんでしょう。一回もストーリーに絡んだことのない無名のネルフ職員や戦自の死亡シーンがなぜ必要だったんでしょうか。

「その方が盛り上がるから」

「アスカや他のネルフメンバーの未来の伏線」

それもあるでしょうが、それだけではないと筆者は思います。

結論から言えばヒトは弱く簡単に死ぬ儚い存在だということを見せるためなんじゃないかなというのが筆者の見解です。極めてシンプルです。繰り返すようにエヴァ「ヒトとは何か」を追究する物語でもあります。だから物語を進める前に、「ヒトは元来とても弱く、簡単に壊れてしまう儚い存在である」ということははっきり示しておきたかったんじゃないでしょうかね。

(なんでこんなことを言うかというと"まご君"と似た展開の映画『伝説巨神イデオン』において、監督の富野由悠季が同じ趣旨のことを自分で言ってたんですね……。作中に残酷な死亡シーンを入れたのにはこういう意図があるんだって。まあ展開が似てるだけの全く違う映画の話なので参考にはならないんですが)

 

 さて、ネルフ vs 戦自の戦いは戦自の圧倒的優勢で進行します。ネルフは大ピンチです。状況をまとめると

・N2兵器で地上を吹っ飛ばされネルフ本拠地が丸裸

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ネルフ丸裸。地上の川の水が行き場を失って滝のように落ちてきている

ネルフ本部は元々地下の謎の空間(=ジオフロント)に作られた施設です。 いわば天然の要塞なわけですが、こうなってしまえば最早要塞的価値はありません。また外部との電源やネットワークが完全に遮断され孤立状態ということも加えておきましょう。

 

 ・初号機は確保され、パイロットも不能状態

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戦自の注入したベークライトでガチガチに固定された初号機

この時点で初号機はすでに戦自に確保されています。ネルフも戦自の侵攻を足止めするためにベークライトを施設内に注入するシーンがあるのでそれとごっちゃになるかもしれませんが、初号機をこんな風にしたのはあくまで戦自です。戦自の無線をよく聞けば分かります。また、パイロットも精神的に参ってしまって体育座り以外の挙動をマジで全くしません。 

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シンジくんは常に体育座り。車内ですら体育座り

ちなみにミサトさんは初号機がすでに確保されているのを無線で知っていながら無理やりこんな状態のシンジくんを初号機の元へ連行しました。鬼畜です。

 

・零号機は既に破壊され、弐号機がかろうじて残っているがそのパイロットも不能状態

忘れがちですが零号機は第16使途との戦いで爆散して消滅しています。弐号機はかろうじて残っていますがパイロットはご存じの通り動けません。

 

つまり、このときのネルフは守ることもできなければ攻める戦力もない絶望的な状況というわけです。

 

ところが、どういうわけか、いきなり都合よく弐号機が覚醒することで状況は変わってきます。

なぜ急にアスカと弐号機が覚醒したんでしょうか。弐号機の中にいたのはアスカのお母さんなんでしょうか。そんでもってなんで弐号機はエヴァシリーズに負けて、時期を見たように初号機が覚醒したんでしょうか。

次回はこの辺りに焦点を当ててみていきましょう。山場です!!!!

 

 

 

続きのお話し☟

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エヴァンゲリオン旧劇場版"まごころを、君に"書き起こし

前の話Airの書き起こしはこちら☟

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ゲ「アダムはすでに私と共にある。ユイと再び会うにはこれしかない。アダムとリリス、禁じられた融合だけだ。時間がない、A.T.フィールドがお前の形を保てなくなる。始めるぞ、レイ。A.T.フィールドを、心の壁を解き放て。欠けた心の補完。不要な体を捨て、全ての魂を今、1つに。そして、ユイの元へ行こう」

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レイ「……うっ」

 

 

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シ「アスカ……はっ、うわあああ!」

レ「碇くん」

シ「あああああ!」

 

 

戦自情報参謀「大気圏外より高速接近中の物体アリ」

支隊長「なんだと?」

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冬「いかん、ロンギヌスの槍か」

 

キ「ついに我らの願いが始まる」

幹部4「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に還った」

幹部9「いささか数が足りぬがやむをえまい」

一同「エヴァシリーズを本来の姿に。我ら人類に福音をもたらす真の姿に。等しき死と祈りをもって人々を真の姿に」

キ「それは魂のやすらぎでもある。では儀式を始めよう」

 

 

日「エヴァ初号機、拘引されていきます」

青「高度1万2千、さらに上昇中」

冬「ゼーレめ、初号機を依り代とするつもりか」

 

 

シ「はあ、はあ、はあ……」

 

 

キ「エヴァ初号機に聖痕が刻まれた」

一同「今こそ中心の樹の復活を」

キ「我らがしもべエヴァシリーズはみなこのときのために」

 

 

青「エヴァシリーズS2機関を解放」

日「次元測定値が反転。マイナスを示しています。観測不能! 数値化できません」

冬「アンチA.T.フィールドか」

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伊「全ての現象が15年前と酷似してる。じゃあこれってやっぱり、サードインパクトの前兆なの?」

 

 

戦闘員「S2機関臨海。これ以上はもう分子間引力では維持できません!」

支隊長「作戦は失敗だったな」

(大爆発)

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青「直撃です! 地上堆積層融解!」

日「第2波が本部周辺を掘削中! 外殻部が露呈していきます!」

冬「まだ物理的な衝撃波だ。アブソーバーを最大にすれば耐えられる」

 

 

幹部8「悠久の時を示す、赤き土の禊をもって」

幹部11「まずはジオフロントを」

キ「真の姿に」

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冬「人類の……生命の源たるリリスの卵、"黒き月"。今更その殻の中に還ることは望まぬ。だがそれも、リリス次第か」

 

 

ゲ「事が始まったようだ。さあレイ。私をユイのところへ導いてくれ……まさか」

レ「私はあなたの人形じゃない」

ゲ「あっ、なぜだ」

レ「私はあなたじゃないもの」

ゲ「レイ! 頼む、待ってくれ、レイ!」

レ「駄目、碇くんが呼んでる」

ゲ「レイ!」

レ「ただいま」

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(リリスと一体化するレイ。心臓の鼓動。動き出すリリス)

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青「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!」

日「A.T.フィールドを確認! 分析パターン青!」

伊「まさか、使途!?」

日「いや、違う! ヒト! 人間です!」

(第7発令所を上昇していくリリス)

伊「ひいっ、いや! いやあああ!」

 

 

シ「うう……ちくしょう、ちくしょう……」

(初号機に近づくリリス)

リリス「ああ……ああ……」

シ「綾波?」

リリス「ああ……」

シ「ひっ、うわあああ」

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委員会一同「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

キ「三度の報いのときが今」

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青「エヴァシリーズのA.T.フィールドが共鳴!」

日「さらに増幅しています!」

冬「レイと同化を始めたか」

(変形するリリス)

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シ「ひっ、うわあああ! ああ! ああ! ああ! ああ!」

 

青「心理グラフ、シグナルダウン!」

日「デストルドーが形而化されていきます」

冬「これ以上はパイロットの自我がもたんか」

 

シ「もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ……」

カヲル「もういいのかい?」

シ「はっ、そこにいたの? カヲルくん」

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青「ソレノイドグラフ反転。自我境界が弱体化していきます」

日「A.T.フィールドもパターンレッドへ!」

冬「使徒の持つ生命の実とヒトの持つ知恵の実、その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった。そして今や命の胎芽たる生命の樹へと還元している。この先にサードインパクトの無からヒトを救う箱舟となるか、ヒトを滅ぼす悪魔となるのか。未来は碇の息子にゆだねられたな」

伊「ねえ、私たち正しいわよね」

青「分かるもんか」

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ユイ「今のレイはあなた自身の心。あなたの願いそのものなのよ」

レ「何を願うの?」

(水滴)

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(夕暮れの公園、揺れるブランコ。子どもたちの歌う"むすんでひらいて")

シ「そうだ、チェロを始めたときと同じだ。ここに来たら何かあると思ってた」

女の子1「シンジくんもやりなよ」

女の子2「頑張って完成させようよ、お城!」

幼いシンジ「うん!」

女の子1「あ! ママだ!」

女の子2「帰らなきゃ」

女の子1「じゃあねー!」

女の子たち「ママ~、ふふっ、ママ~!」

(鳴りやむ"むすんでひらいて"。カラスの鳴き声)

シ「うっ……」

(涙しながら砂の山を作るシンジ。山が完成すると蹴って壊してしまう。それからまた壊れた山を作り直すシンジ)

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ア「ああもう! あんた見てるとイライラすんのよ!」

シ「自分みたいで?」

幼いアスカ「ママ!」

ア「ママ」

シンジ「ママ……」

 

 

ミ「結局、シンジくんの母親にはなれなかったわね」

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ミ「ふふ、ねえ、しよ?」

加地(以下、加)「またか?」

ミ「うん」

加「今日は学校で友だちと会うんじゃなかったっけ」

ミ「ん~? ああ、リツコね。いいわよ、まだ時間あるし」

加「もう一週間だぞ? ここでゴロゴロし始めて」

ミ「だんだんね、コツがつかめてきたのよ。だから、ねえ?」

 

ミ「多分ね、自分がここにいることを確認するためにこういうことするの」

ア「ばっかみたい。ただ寂しい大人たちが慰めあってるだけじゃないの」

リ「身体だけでも必要とされてるものね」

ミ「自分が求められる感じがして嬉しいのよ」

ア「イージーに自分にも価値があるんだって思えるものね、それって」

シ「これが、こんなことしてるのがミサトさん?」

ミ「そうよ。これも私。お互いに溶け合う心が映し出すシンジくんの知らない私。ホントのことは結構痛みを伴うものよ。それに耐えなきゃね」

 

ア「あーあ、私も大人になったらミサトみたいなこと、するのかな~」

(ミサトの喘ぎ声)

ア「ねえ、キスしようか

ミ「駄目!」

ア「それとも怖い?」

ミ「子供のするもんじゃないわ」

ア「じゃいくわよ」

 

ア「何も分かってないくせに。私のそばに来ないで」

シ「分かってるよ」

ア「分かってないわよバカ! あんた私のこと分かってるつもりなの? 救ってやれると思ってんの! それこそ傲慢な思い上がりよ! 分かるはずないわ!」

シ「分かるはずないよ。アスカは何にも言わないもの。何も言わない何も話さないくせに分かってくれなんて、無理だよ!」

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レ「碇くんは分かろうとしたの?」

シ「分かろうとした」

ア「バーカ、知ってんのよ、あんたが私をオカズにしてること。いつもみたくやってみなさいよ。ここで見ててあげるから。あんたが全部私のものにならないなら、私、何もいらない」

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シ「だったら僕に優しくしてよ」

女性陣「優しくしてるわよ」

シ「嘘だ! 笑った顔でごまかしてるだけだ。曖昧なままにしておきたいだけなんだ」

レ「本当のことはみんなを傷付けるから。それはとてもとてもつらいから」

シ「曖昧なものはぼくを追い詰めるだけなのに」

レ「その場しのぎね」

シ「このままじゃ怖いんだ。いつまたぼくがいらなくなるのかもしれないんだ。ざわざわするんだ。落ち着かないんだ。声を聞かせてよ! ぼくの相手をしてよ! ぼくに構ってよ!」

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シ「何か役に立ちたいんだ。ずっと一緒にいたいんだ」

ア「じゃあ何もしないで。もうそばに来ないで。あんた私を傷つけるだけだもの」

シ「あ、アスカ、助けてよ。ねえアスカじゃないとダメなんだ」

ア「嘘ね」

シ「はっ」

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ア「あんた誰でもいいんでしょ。ミサトもファーストも怖いから。お父さんもお母さんも怖いから。私に逃げてるだけじゃないの」

シ「アスカ、助けてよ」

ア「それが一番楽で傷つかないもの」

シ「ねえぼくを助けてよ」

ア「ホントに他人を好きになったことないのよ! 自分しかここにいないのよ。その自分も好きだって感じたことないのよ! ……哀れね」

シ「助けてよ……ねえ誰かぼくを……お願いだからぼくを助けて。助けてよ……助けてよ……ぼくを助けてよ! 一人にしないで! ぼくを見捨てないで! ぼくを殺さないで!」

ア「嫌」

(アスカの首を絞めるシンジ)

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シ「誰も分かってくれないんだ」

レ「何も分かっていなかったのね」

シ「嫌なことは何にもない。揺らぎのない世界だと思っていたのに」

レ「他人も自分と同じだと一人で思い込んでいたのね」

シ「裏切ったな、ぼくの気持ちを裏切ったんだ!」

レ「初めから自分の勘違い。勝手な思い込みにすぎないのに」

シ「みんなぼくをいらないんだ。だからみんな死んじゃえ」

レ「ではその手は何のためにあるの?」

シ「ぼくがいてもいなくても誰も同じなんだ。何も変わらない。だからみんな死んじゃえ」

レ「では、その心はなんのためにあるの?」

シ「むしろいない方がいいんだ。だからぼくも死んじゃえ」

レ「ではなぜここにいるの?」

シ「ここにいてもいいの?」

(無言)

シ「うわあああああ!」

 

 

日「パイロットの反応が限りなく0に近づいていきます」

青「エヴァシリーズおよびジオフロント、E層を通過。なおも上昇中。」

電子音声「現在、高度22万キロ。F層に突入」

日「エヴァ全機、健在!」

青「リリスよりのアンチA.T.フィールド、さらに拡大、物質化されます」

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日「アンチA.T.フィールド臨界点を突破!」

青「駄目です! このままでは個体生命の形を維持できません!」

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冬「ガフの部屋が開く。世界の始まりと終局の扉がついに開いてしまうか」

 

レ「世界が悲しみに満ち満ちていく。空しさが人々を包み込んでいく。孤独が人の心を埋めていくのね」

(LCLになって消える日向と青葉)

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冬「碇、お前もユイ君に会えたのか」

伊「みんなのA.T.フィールドが消えていく。これが答えなの? 私が求めていた」

リ「ふふふ」

伊「先輩!」

リ「マヤ」

伊「先輩、先輩、先輩、先輩! あ」

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キ「始まりと終わりは同じところにある。良い、全てはこれで良い」

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ゲ「この時を、ただひたすら待ち続けていた。ようやく会えたな、ユイ。俺がそばによるとシンジを傷つけるだけだ。だから、何もしないほうが良い」

ユイ「シンジが怖かったのね」

ゲ「自分が人から愛されるとは信じられない。私にそんな資格はない」

カヲル「ただ逃げてるだけなんだ。自分が傷つく前に世界を拒絶している」

ユイ「人の間にある形もなく目にも見えないものが」

レ「怖くて心を閉じるしかなかったのね」

ゲ「その報いがこのありさまか。すまなかったな、シンジ」

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(自分に槍を刺すエヴァシリーズ)(水滴)

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(リリスの中に入る初号機)

(頬を叩く音。雑多な映像が無秩序に流れていく。心無い言葉の連続)

 

ア「意気地なし」

ミ「そんなに辛かったらもうやめてもいいのよ」

レ「そんなに嫌だったらもう逃げだしてもいいのよ」

ミ「楽になりたいんでしょ。安らぎを得たいんでしょ。私と一つになりたいんでしょ。心も体も一つに重ねたいんでしょ」

 

ア「でも、あなたとだけは絶対に死んでも嫌!」

 

 

シ「ねえ」

ミ「なに?」

シ「夢って何かな」

ア「夢?」

レ「そう、夢」

 

テロップ「気持ち、いいの?」

 

シ「分からない。現実がよくわからないんだ」

レ「他人の現実と自分の真実との溝が正確に把握できないのね」

シ「幸せがどこにあるのかわからないんだ」

レ「夢の中にしか幸せを見出せないのね」

シ「だからこれは現実じゃない。誰もいない世界だ」

レ「そう、夢」

シ「だからここにはぼくがいない」

レ「都合のいい作り事で現実の復讐をしていたのね」

シ「いけないのか」

レ「虚構に逃げて真実をごまかしていたのね」

シ「僕一人の夢を見ちゃいけないのか」

レ「それは夢じゃない。ただの現実の埋め合わせよ」

シ「じゃあ、ぼくの夢はどこ」

レ「それは、現実の続き」

シ「ぼくの現実はどこ」

レ「それは夢の終わりよ」

 

 (リリスの首から血が噴き出す)

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シ「ああ……綾波、ここは?」

レ「ここはLCLの海。生命の源の海の中。A.T.フィールドを失った自分の形を失った世界。どこからが自分でどこからが他人か分からない曖昧な世界。どこまでも自分でどこにも自分がいなくなっている脆弱な世界」

シ「ぼくは死んだの?」

レ「いいえ、全てが一つになっているだけ。これがあなたの望んだ世界そのものよ」

シ「でもこれは違う。違うと思う」

レ「他人の存在を今一度望めば再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また他人の恐怖が始まるのよ」

シ「いいんだ。ありがとう」

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シ「あそこでは嫌なことしかなかった気がする。だからきっと逃げ出してもよかったんだ。でも逃げたところにも良いことはなかった。だってぼくがいないもの。誰もいないのと同じだもの」

カヲル「再びA.T.フィールドが君や他人を傷つけてもいいのかい?」

シ「構わない」

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シ「でもぼくの心の中にいる君たちは何」

レ「希望なのよ。ヒトは互いに分かり合えるかもしれない……ということの」

カヲル「好きだという言葉と共にね」

シ「だけどそれは見せかけなんだ。自分勝手な思い込みなんだ。祈りみたいなものなんだ。ずっと続くはずないんだ。いつかは裏切られるんだ。ぼくを見捨てるんだ。でもぼくはもう一度会いたいと思った。その時の気持ちは本当だと思うから」

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(崩壊するリリスの身体)

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カヲル「現実は知らないところに。夢は現実の中に」

レ「そして真実は心の中にある」

カヲル「ヒトの心が自分自身の形を作り出しているからね」

レ「そして新たなイメージがその人の心も形も変えていくわ。イメージが、想像する力が、自分たちの未来を、時の流れを、作り出しているもの」

カヲル「ただヒトは自分自身の意思で動かなければ何も変わらない。だから見失った自分は自分の力で取り戻すのよ。たとえ自分の言葉を失っても。他人の言葉に取り込まれても」

レ「自らの心で自分自身をイメージできれば誰もがヒトの形に戻れるわ」

 

ユイ「心配ないわよ。すべての生命には復元しようとする力がある。生きていこうとする心がある。生きていこうとさえ思えばどこだって天国になるわ。だって生きているんですもの。幸せになるチャンスはどこにでもあるわ。太陽と月と地球がある限り。大丈夫」

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(水滴)

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ユイ「もういいのね?」

シ「幸せがどこにあるのかまだわからない。だけどここにいて、生まれてきてどうだったのかこれからも考え続ける。だけどそれも当たり前のことに何度も気づくだけなんだ。自分が自分でいるために。でも母さんは。母さんはどうするの」

 

冬「ヒトが神に似せてエヴァを作る。これが真の目的かね?」

ユイ「はい。ヒトはこの星でしか生きられません。でもエヴァは無限に生きていられます。その中に宿るヒトの心と共に。たとえ50億年たって、この地球も、月も、太陽すらなくしても残りますわ。たった一人でも生きていけたら。とてもさみしいけど、生きていけたら」

冬「ヒトの生きた証は永遠に残るか」

シ「さよなら、母さん」

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エヴァ旧劇考察もやってます!

記事一覧はこちらから☟

tomaonarossi.hatenablog.com

エヴァンゲリオン旧劇場版Air書き起こし

エヴァ旧劇考察もやってます☟

tomaonarossi.hatenablog.com

 

 

(セミの鳴き声)(波打つ音)

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(第一脳神経外科、病院)

アナウンス「東棟の第2・第3区画は本日18時より閉鎖されます。引継ぎ作業はすべて16:30までに終了してください」

(心電図の音)(303号室、惣流・A・ラングレー)

シンジ(以下シ)「ミサトさんも…綾波も怖いんだ。助けて。助けてよアスカ。ねえ、起きてよ。ねえ。目を覚ましてよ。ねえ……ねえ、アスカ、アスカ、アスカ! うう……助けて。助けてよ、助けてよ、助けてよ、助けてよ。またいつものように僕を馬鹿にしてよ、ねえ!」

(シンジの荒い息遣い)

シ「うっ……最低だ、俺って」

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伊吹マヤ(以下伊)「本部施設の出入りが全面禁止?」

日向マコト(以下日)「第一種警戒態勢のままか?」

伊「なぜ? 最後の使途だったんでしょ? あの少年が」

青葉シゲル(以下青)「ああ、全ての使途は消えたはずだ」

日「今や平和になったってことじゃないのか」

伊「じゃあここは? エヴァはどうなるの? 先輩も今いないのに」

青「ネルフは組織解体されると思う。俺たちがどうなるのかは検討もつかないな」

日「補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか」

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ミサト(以下ミ)「出来損ないの群体としてすでに行き詰った人類を完全な単体としての生物へと人工進化させる補完計画。まさに理想の世界ね。そのためにまだ委員会は使うつもりなんだわ。アダムやネルフではなく、あのエヴァを。加地くんの予想通りにね」

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キール議長(以下キ)「約束の時が来た。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできぬ。唯一リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」

ゲンドウ(以下ゲ)「ゼーレのシナリオとは違いますが」

冬月(以下冬)「人はエヴァを生み出すためにその存在があったのです」

ゲ「人は新たな世界へと進むべきなのです。そのためのエヴァシリーズです」

幹部9「我らは人の形を捨ててまでエヴァと言う名の箱舟に乗ることはない」

幹部12「これは通過儀式なのだ。閉塞した人類が再生するための」

幹部5「滅びの宿命は新生の喜びでもある」

幹部3「神も人も全ての生命は死をもってやがて1つになるために」

ゲ「死はなにも生みませんよ」

キ「死は君たちに与えよう」

冬「人は生きていこうとするところにその存在がある。それが自らエヴァに残った彼女の願いだからな」

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(目覚めるレイ、満月、どこかへ消えるレイ)

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(眠れないシンジ、救急車のサイレン)

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(キーボードをたたく音)

ミ「そう、これがセカンドインパクトの真意だったのね」

(警告音)

ミ「気づかれた?……いえ、違うか。……始まるわね」

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(警告音)

冬「左は青の非常通信に切り替えろ。衛生を開いても構わん。そうだ! 右の状況は?」

電話:男性職員「外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています」

冬「目的はMAGIか?」

青「全ての外部端末からデータ侵入。MAGIへのハッキングを目指しています」

冬「やはりな。侵入者は松代のMAGI2号か?」

青「いえ、少なくともMAGIタイプ5、ドイツと中国、アメリカからの侵入が確認できます」

冬「ゼーレは総力を挙げているな。彼我兵力差は1対5。分が悪いぞ」

男性職員「第4防壁突破されました」

日「主データベース閉鎖。ダメです! 侵攻をカットできません!」

伊「さらに外殻部侵入、予備回路も阻止不能です!」

冬「まずいな。MAGIの占拠は本部のそれと同義だからな」

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アナウンス「総員第1種警戒態勢、繰り返す、総員第1種警戒態勢。D級勤務者は可及的速やかに所定の配置についてください」

(開くドア)

リツコ(以下リ)「分かってるわ。MAGIの自立防御でしょ」

男性職員「はい。詳しくは第2発令所の伊吹2尉からどうぞ」

リ「必要となったら捨てた女でも利用する。エゴイストな人ね」

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(♪DECISIVE BATTLE)(電話の呼び出し音)

ミ「状況は?」

日「おはようございます。先ほど第2東京からA-801が出ました」

ミ「801?」

日「特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄、および指揮権の日本国政府への委譲。最後通告ですよ。ええ、そうです。現在MAGIがハッキングを受けています。かなり押されています」

伊「伊吹です。今赤城博士がプロテクトの作業に入りました」

ミ「リツコが?」

 

 

(キーボードをたたく音)

リ「私、馬鹿なことしてる? ロジックじゃないものね、男と女は……そうでしょ? 母さん」

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男性職員「強羅地上回線復旧率0.2%に上昇」

ミ「あとどれくらい?」

日「間に合いそうです。さすが赤城博士です。120ページある――」

ミ「MAGIへの侵入だけ? そんな生やさしい連中じゃないわ。多分……」

 

冬「MAGIは前哨戦にすぎん。奴らの目的は本部施設および残るエヴァ2体の直接占拠だな」

ゲ「ああ、リリス、そしてアダムさえ我らにある」

冬「老人たちが焦るわけだ」

 

 

伊「マギへのハッキングが停止しました。Bダナン型防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です」

電子音声「フリーズ フリーズ フリーズ……」

リ「母さん、またあとでね」

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幹部6「碇はMAGIに対し第666プロテクトをかけた。この突破は容易ではない」

幹部4「MAGIの接収は中止せざるを得ないな」

キ「できうるだけ穏便に進めたかったのだが致し方あるまい。本部施設の直接占拠を行う」

 

 

戦略自衛隊戦闘員「始めよう。予定通りだ」

(ネルフへの攻撃が開始)

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(警告音)

女性職員「第8から第17までのレーダーサイト沈黙!」

青「特科大隊、強羅防衛線より侵攻してきます」

日「御殿場方面からも2個大隊が接近中」

 

冬「やはり最後の敵は同じ人間だったな」

ゲ「総員第1種戦闘配置」

伊「戦闘配置? 相手は使途じゃないのに。同じ人間なのに」

日「向こうはそうは思っちゃくれないさ」

 

(侵入する戦略自衛隊、刺殺されるネルフ職員)

ネルフ隊員1「おいどうした、おい!」

隊員2「なんだ?」

隊員1「南のハブステーションです」

(爆発)

 

 

男性職員1「台ヶ岳トンネル使用不能

男性職員2「西5番搬入路にて火災発生」

男性職員3「侵入部隊は第1層に突入しました」

ミ「西館の部隊は陽動よ! 本命がエヴァの占拠ならパイロットを狙うわ。至急シンジくんを初号機に待機させて」

日「はい」

ミ「アスカは?」

青「303号病室です」

ミ「構わないから弐号機に乗せて」

伊「しかしいまだエヴァとのシンクロは回復していませんが」

ミ「そこだと確実に消されるわ。かくまうにはエヴァの中が最適なのよ」

伊「了解。パイロットの投薬を中断。発疹準備!」

ミ「アスカ収容後、エヴァ弐号機は地底湖に隠して。すぐに見つかるけどケージよりはマシだわ。レイは?」

青「所在不明です。位置を確認できません」

ミ「殺されるわよ。補足急いで」

 

 

(謎の空間にいるレイ)

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日「弐号機射出。8番ルートから水深70に固定されます」

ミ「続いて初号機発進。ジオフロント内に配置して」

青「ダメです! パイロットがまだ……」

ミ「なんてこと……」

 

 

アナウンス「セントラルドグマ第2層までの全隔壁を閉鎖します。非戦闘員は第87経路にて退避してください」

青「地下第3隔壁破壊。第2層に侵入されました」

冬「戦自約1個師団を投入か。占拠は時間の問題だな」

ゲ「冬月先生、あとを頼みます」

冬「分かっている。ユイ君によろしくな」

(破壊されるネルフ)

男性職員1「第2グループ応答なし」

男性職員2「77電算室連絡不能

青「52番のリニアレール爆破されました」

日「タチ悪いな。使途の方がよっぽどいいよ」

ミ「(無理もないわ。みんな人を殺すことに慣れてないものね)」

(ネルフ職員の悲鳴)

 

戦闘員「赤のケーブルから優先して切断」

男性職員1「第3層Bブロックに侵入者! 防御できません!」

青「Fブロックからもです。メインバイパスを挟撃されました」

ミ「第3層まで破棄します。戦闘員は下がって。803区間までの全通路とパイプにベークライトを注入」

青「はい!」

アナウンス「第703からベークライトを注入開始。完了まで後30」

アナウンス「第7377、ベークライトを注入」

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ミ「これで少しはもつでしょ」

日「葛城3佐、ルート47が寸断されグループ3が足止めを食っています。このままではシンジくんが!」

 

(銃声、体育座りのシンジくん)

 

ミ「非戦闘員の白兵戦闘は極力避けて。向こうはプロよ。ドグマまで後退不能なら投降した方がいいわ。……ごめん、あとよろしく」

日「はい」

 

 

戦闘員「双子山はもういい。長尾峠の封鎖を急げ」

師団長「意外と手間取るな」

副長「我々に楽な仕事はありませんよ」

 

 

日「分が悪いよ。本格的な対人要撃システムは用意されてないからな、ここ」

青「ま、せいぜいテロどまりだ」

日「戦自が本気を出したらここの施設なんてひとたまりもないさ」

青「今考えれば侵入者要撃の予算縮小ってこれを見越してのことだったのかな」

日「ありうる話だ……うわっ」

(爆発音)

うずくまる伊吹に銃を渡す青葉

青「ロック外して」

伊「私……私鉄砲なんて撃てません」

青「訓練で何度もやってるだろ」

伊「でも、その時は人なんていなかったんですよ!」

青「馬鹿! 撃たなきゃ死ぬぞ」

(アイキャッチ)

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(崩れた自分の身体を眺めるレイ)

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ゲ「レイ。やはりここにいたか。約束の時だ。さあ、行こう」

 

 

男性戦闘員1「ドグマ第1層は完全に制圧。送れ」

無線「第2発令所とMAGIオリジナルはいまだ確保できず。左翼下層フロアにて交戦中」

男性戦闘員3「フィフスマルボルジエは直ちに熱滅却処置に入れ」

女性戦闘員「エヴァパイロットは見つけ次第射殺。非戦闘員への無条件発砲も許可する」

男性戦闘員4「柳原隊、新庄隊、速やかに下層へ突入」

 

 

(シンジくんに走り寄る戦闘員)

戦闘員「サード発見。これより排除する……悪く思うな、坊主」

(銃声、吹き飛ぶ戦闘員)

ミ「悪く思わないでね」

(戦闘員3人を片付けるつよつよミサトさん)

ミ「さあ、行くわよ。初号機へ」

 

 

(無線を傍受するミサトさん)

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無線「第7ケイジの山岸支隊はどうか」

無線2「紫の方は確保しました。ベークライトの注入も問題ありません」

無線3「赤い奴は既に射出された模様。目下移送ルートを調査中」

ミ「まずいわね、奴ら初号機とシンジくんの物理的接触を断とうとしてるわ。こいつはウカウカできないわね、急ぐわよ。シンジくん?」

(体育座りで黙るシンジ)

ミ「ここから逃げるのか、エヴァのところに行くのかどっちかにしなさい。このままだと何もせずにただ死ぬだけよ」

シ「助けてアスカ……助けてよ」

ミ「こんなときだけ女の子にすがって、逃げて、ごまかして。中途半端が一番悪いわよ! さあ立って! 立ちなさい!」

シ「もう嫌だ。死にたい。何もしたくない」

ミ「なに甘ったれたこと言ってんのよ! あんたまだ生きてるんでしょう! だったらしっかり生きて、それから死になさい」

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冬「構わん。ここよりもターミナルドグマの分断を優先させろ」

日「あちこち爆破されているのにやはりここには手を出さないか」

青「一気に方を付けたいところだろうが、下にはMAGIのオリジナルがあるからな」

日「できるだけ無傷で手に入れておきたいんだろう」

青「ただ対BC兵器装備は少ない。使用されたらやばいよ」

日「N2兵器もな」

(直後、大爆発(N2兵器))

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青「チッ、言わんこっちゃない」

日「奴ら、加減ってものをしらないのか」

冬「ふん、無茶をしおる」

(大量に投下されるミサイル)

伊「ねえ! どうしてそんなにエヴァがほしいの?」

 

 

ミ「サードインパクトを起こすつもりなのよ。使途ではなく、エヴァシリーズを使ってね。15年前のセカンドインパクトは人間に仕組まれたものだったわ。けどそれは他の使途が覚醒する前にアダムを卵にまで還元することによって被害を最小限に食いとめるためだったのよ。シンジくん。私たち人間もね。アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使途なのよ。他の使徒たちは別の可能性だったの。人の形を捨てた人類の。ただお互いを拒絶するしかなかった悲しい存在だったけどね、同じ人間同士も。いい? シンジくん。エヴァシリーズをすべて消滅させるのよ。生き残る手段はそれしか無いわ」

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首相「電話が通じなくなったな」

秘書「はい。3分前に弾道弾の爆発を確認しております」

首相「ネルフが裏で進めていた人類補完計画。人間すべてを消し去るサードインパクトの誘発が目的だったとは……とんでもない話だ」

秘書「自らを憎むことができる生物は人間くらいのものでしょう」

首相「さて、残りはネルフ本部施設の後始末だが」

秘書「ドイツか中国に再開発を委託されますか」

首相「買いたたかれるのがオチだ。20年は封地だな。旧東京と同じくね」

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無線戦闘員「表層部の熱は引きました。高圧蒸気も問題ありません」

無線2「全部隊の初期配置、完了」

副長「現在ドグマ第3層と紫のやつは制圧下にあります」

隊長「赤いやつは?」

情報参謀「地底湖の水深70にて発見。専属パイロットの生死は不明です」

 

 

(うずくまるアスカ)

アスカ(以下ア)「ああ……生きてる?」

(大量に投下される魚雷)

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ア「ああ! あっ……うっ」

(爆発)

ア「死ぬのは嫌……死ぬのは嫌……」

声「まだ生きていなさい」「死んではダメよ」「まだ死なせないわ」「まだ殺さないわ」「一緒に死んで頂戴!」

ア「死ぬのは嫌ーーー!」

幼女アスカ「ママ、ここにいたのね」

ア「ママ!」

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(弐号機覚醒)

戦闘員1「こ、これは!」

戦闘員2「やったか?」

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ア「どぉりゃああ!」

(駆逐艦をぶん投げる弐号機)

ア「ママ! わかったわ! A.T.フィールドの意味、私を守ってくれてる。私を見てくれてる! ずっとずっと一緒だったのね! ママ!」

 

 

無線の伊吹「エヴァ弐号機起動。アスカは無事です!」

ミ「アスカが?」

(ビクッとするシンジくん)

 

 

下士官「ケーブルだ! 奴の電源ケーブル、そこに注目すればいい!」

(切断されるアンビリカルケーブル)

ア「チッ アンビリカルケーブルが無くったって! こちとらには1万2千枚の特殊装甲とA.T.フィールドがあるんだから! 負けてらんないのよーっ! あんた達に!」

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キ「忌むべき存在のエヴァ。またも我らの妨げとなるか。やはり毒は同じ毒をもって制すべきだな」

 

 

ア「エヴァシリーズ……完成していたの?」

(エヴァシリーズの唸り声)

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冬「S2機関搭載型を9体全機投入とは……大げさすぎるな。まさかここで起こすつもりか」

 

 

ミ「いい? アスカ。エヴァシリーズは必ず殲滅するのよ。シンジくんもすぐに上げるわ。頑張って」

(プッシュ音)

ミ「で、初号機へは非常用のルート20で行けるのね」

日「はい、電源は3重に確保してあります。3分以内に乗り込めば第7ケイジへ直行できます」

(プッシュ音)

(シンジくんを引きずっていくミサト)

 

 

ア「必ず殲滅、ね。ミサトも病み上がりに軽く言ってくれちゃって。残り3分半で9つ。1匹につき20秒しかないじゃない。おおりゃあああ!」

(エヴァシリーズ粉砕)

ア「erste!」

 

 

ミ「……ここね。……うっ」

(着弾音)

戦闘員「目標は射殺できず。追跡の是非を問う」

無線「追跡不要。そこは爆破予定である。至急戻れ」

戦闘員「了解」

 

 

(ミサトさんを見つめるシンジくん)

ミ「これで時間、稼げるわね。ふっ……大丈夫、大したことないわ、うっ」

(エレベーターの扉が開く)

ミ「電源は生きてる。行けるわね」

シ「はっ」

ミ「いい? シンジくん。ここから先はもうあなた一人よ。すべて一人で決めなさい。誰の助けもなく」

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シ「ぼくは、だめだ。だめなんですよ。人を傷つけてまで、殺してまでエヴァに乗るなんて、そんな資格ないんだ。ぼくはエヴァに乗るしかないと思ってた。でもそんなのg負かしだ。なんにも分かってないぼくにはエヴァに乗る価値もない。ぼくには人のためにできることなんてなんにもないんだ! アスカにひどいことしたんだ。カヲルくんも殺してしまったんだ。優しさなんてかけらもない。ずるくて臆病なだけだ。ぼくには人を傷つけることしかできないんだ。だったら何もしない方がいい!」

ミ「同情なんかしないわよ。自分が傷つくのが嫌だったら何もせずに死になさい」

シ「うっ……うっ……」

ミ「今泣いたってどうにもならないわ!」

シ「うっ……」

ミ「自分が嫌いなのね。だから人も傷つける。自分が傷つくより人を傷つけた方が心が痛いことを知っているから。でもどんな思いが待っていても、それはあなたが自分一人で決めたことだわ。価値のあることなのよ、シンジくん。あなた自身のことなのよ。ごまかさずに自分にできることを考え、償いは自分でやりなさい」

シ「ミサトさんだって、他人のくせに、何にも分かってないくせに!」

ミ「他人だからどうだって言うのよ! あんたこのまま辞めるつもり? 今ここで何もしなかったら私許さないからね。一生あんたを許さないからね。今の自分が絶対じゃないわ。後で間違いに気づき後悔する。私はその繰り返しだった……ぬか喜びと自己嫌悪を重ねるだけ。でもその度に前に進めた気がする。いい? シンジくん。もう一度エヴァに乗ってケリをつけなさい。エヴァに乗っていた自分に。何のためにここに来たのか。何のためにここにいるのか。今の自分の答えを見つけなさい。そしてケリをつけたら、必ず戻ってくるのよ」

(ネックレスを手渡す)

ミ「約束よ」

シ「……うん」

ミ「いってらっしゃい……大人のキスよ。帰ってきたら続きをしましょう」

シ「はっ」

(倒れるミサト)

ミ「こんなことなら、アスカの言う通り、カーペット、替えときゃよかった……ねえ、ぺんぺん。加地くん、私、これでよかったわよね……?」

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(直後爆発)

 

(涙するシンジくん)

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ア「わあああああああああああ!」

(エヴァシリーズと交戦する弐号機)

ア「もうしつこいわね! 馬鹿シンジなんか当てにできないのに! うおおおおお!」

 

 

リ「お待ちしておりましたわ」

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(交戦する弐号機)

ア「うわあああ!」

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リ「ごめんなさい。あなたに黙って先ほど、MAGIのプログラムを変えさせてもらいました。娘から最後の頼み。母さん、一緒に死んで頂戴……はっ、作動しない? なぜ……はっ、カスパーが裏切った? 母さんは娘より自分の男を選ぶのね」

ゲ「赤城リツコくん。本当に――」

リ「……嘘つき」

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日「外はどうなってる!」

伊「活動限界まで1分を切ってます。このままじゃアスカは!」

 

 

ア「だあああ! 負けてらんないのよ! ママが見てるのに!」

シ「ママ? 母さん……」

ア「これでラストー! ううう!」

飛んでくる諸刃剣がロンギヌスの槍に変形する。

ア「ロンギヌスの槍? ……ひぃっ」

槍が弐号機の頭を貫通する。

ア「きゃあああああ!」

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ア「ああ!ああ!ああ!」

 

 

伊「内臓電源、終了。活動限界です。エヴァ弐号機、沈黙……なにこれ、倒したはずのエヴァシリーズが」

(起き上がる血まみれのエヴァシリーズ)

伊「エヴァシリーズ活動再開」

青「とどめを刺すつもりか」

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伊「うっ」

日「どうした!」

伊「もう見れません! 見たくありません!」

日「はっ、これが弐号機?」

 

 

ア「うっ、くっ、うう! 殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる!」

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日「暴走か!」

伊「アスカ! もうやめて!」

 

 

伊「ひいっ、シンジくん! 弐号機が! アスカが! アスカが!」

シ「だってエヴァに乗れないんだ。どうしようもないんだ」

動き出す初号機

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シ「母さん……」

 

 

ゲ「初号機が動き出したか」

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副長「エヴァンゲリオン初号機」

師団長「まさに悪魔か」

 

 

シ「アスカ……はっ、うわあああ!」

 

 

つづく

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第26話"まごころを、君に"へ続く

tomaonarossi.hatenablog.com

エヴァ旧劇考察Air編①「Airは死の前日から始まる物語」

いよいよ劇場版の考察が始まりました。

ここからは細かい演出も含め、めちゃくちゃ丁寧に見ていこうと思います。(どれくらい丁寧かというとワンカ ットごとに見るレベル)

今回は旧劇の前半を占めるAirについて詳しく見ていきましょう。

(今回は世界観考察してないので読み飛ばしても大丈夫です)

 

 

今までのお話しはこちらから☟

tomaonarossi.hatenablog.com

 

 

 

旧劇場版25話Airはシンジくんが立ち尽くしてるシーンから始まります。

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「シンジくん、君なにしとんや」って話なんですが、まず

 

映画が始まった時点で

シンジくんは既に精神的に潰れた状態

 

にあるということを押さえておいてほしいと思います。テレビ版25話"終わる世界"では、カヲルくんを殺してしまったことから強烈な自責の念に苦しんでいるシンジくんを見ることができます。

 

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テレビ版25話。カヲルくんを殺してしまったことで苦しむシンジ

ここから分かるようにシンジくんはかなり精神的につらい状態なのです。ただ、テレビ版では自問自答したり叫んだりうるさいシンジくんが、劇場版ではほとんどしゃべりません。ここがテレビ版と劇場版の対照的なところですね。劇場版のシンジくんはとにかく徹底的にしゃべりません。なのでただでさえ分かりにくい話が余計分からなくなるんだと思います。

 

敢えて分かりやすくこの時のシンジくんの状態を説明するなら、鬱、無気力、自殺念慮って感じだと思います。いつも一人で、目がうつろで、口を開けば「助けて」「何もしたくない」「死にたい」が出てくる。今のシンジくんはそういう状態です。だから劇中ほとんどしゃべらないんです。しゃべれないと言った方が正確かもしれません。

精神的に疲弊した人間をテレビ版よりリアルに描写しているんだなと筆者は感じます。なんでこんなこと言うかというと(こう言うと失礼かもしれませんが)庵野監督は"病んだ人間"の描写にかけて超一流の作家だからです。もしそれを感じてみたいという方は庵野監督の『式日』という映画をぜひご覧になってください。庵野節がバリバリに効いた、彼の世界観が垣間見れる、超クールな映画です。

 

また、演出的なことを言えばシンジくんの"心の声"の描写が意図的に排除されていると言うこともできるでしょう。鬱で無気力と言っても別に頭の中まで真っ白というわけじゃありません。シンジくんは間違いなく色んなことを感じ、考えています。ただ語らないだけです。

 

そこで、冒頭のシーンに戻りましょう。汗だくのシンジくんですが、髪は濡れてないっぽいのでどうやら水をかぶったりしたわけじゃないようです。また旧劇考察⑥で詳しく述べたようにここはカヲルくんと出会った思い出の場所です。想像するにこの炎天下の中、汗だくになるまでずーっとそこにいたっていうことでしょう。なんのために? 

カヲルくんを思うため、以外にありません。

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電柱の変圧器?が落ちて水面に波ができる

筆者が露骨だなと思うのは途中で挿入される上のこの一連のカットです。これ、カヲルくんの最期ですよね、どう見ても。考えすぎかもしれませんが。

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変圧器の落下、カヲルくんの最期

また、テレビ版24話の最後、シンジくんが同じ湖畔で体育座りして落ち込んでいるシーンがあります。

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カヲルくんを殺した後。シンジくんとミサトさん(24話)

Airは24話の続きです。ここから思うにシンジくんはカヲルくんを殺してしまってからもよくこの湖畔に来ていたんでしょうね。

もともとここがお気に入りの場所だったのか、それともカヲルくんと出会ったことでここが思い入れのある場所になったのかはわかりませんが、ともかくよくここに来て、そして自分がやってしまったことを胸の内で反芻していたのでしょう。

カヲルくんは遺体や遺品みたいなものを何も残しませんでしたから、彼の存在を感じようと思えばここに来るしかなかったのかな?とも想像します。

ともかく、たとえ真夏の炎天下の下だったとしても長時間いられるくらいシンジくんにとってこの場所が大切ってことです。この場所、ひいてはカヲルくんの存在が、シンジくんにとってどれほど大きいものだったかということが容易に想像できる大事なシーンです。

 

さて、カヲルくんの不在を噛み締めたシンジくんが次に向かったのはアスカの病室です。ここでシンジくんの超絶射精シーンが見られるわけですが、ここも要するにシンジくんの精神的なダメージを示すシーンだと思います。そういうことをしてしまうくらいシンジくんの心はボロボロだということです。それまでのお話しを見ていれば、シンジくんが日常的にそういうことをやってしまうクソ野郎というわけではないということは分かると思います。実際このあと、シンジくんは自分のやってしまったことをものすごく後悔して余計鬱になってしまうくらいですから。シンジくんは他人を堂々と傷つけられるほど傲慢でもなければ自己中心的でもありません。

 

カヲルくんの不在を噛み締め、アスカの不在から精神的弱さを露呈したところで、第25話Airアイキャッチが入ります。(このアイキャッチマジかっこいい)

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今のシンジくんはこういう状態ですよっていう前説明が終わり、いよいよ映画が始まります!って感じです。

 

ここでカヲルくん→アスカときて、あれ、レイは?となるかもしれませんが旧劇場版において

レイはシンジくんにとって最早人間じゃない

(=友だちでもなくただ怖いもの)

になってしまっているということも押さえておきましょう。

24話でシンジくんはレイのこういう姿↓を目撃してしまっています。

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レイは父親ゲンドウの怪しげな計画によって作られたものだとシンジくんは分かっているのです。父親を憎み、怖がるのと同様に、レイもシンジくんにとってはもう理解できない、怖い存在になってしまっています。だからシンジくんはレイに助けを求めることはしませんでした。(このことは後に起こるサードインパクトにも少し影響します)

 

そういう点から言えば、この映画で最も報われなかったキャラクターはレイなんじゃないかとか作者は思ったりします。レイの中身は確かに人間ではありませんでした(旧劇考察⑤)。しかしヒトの形をして、ヒトと触れ合い、ヒトの愛情やぬくもりを理解しつつありました。そればかりか、それに応える形でシンジくんに対して愛情を示そうとさえしていました。でもそれが報われることはありませんでした。

そこまでだったらまだいいんですが、レイの切ないところはそうやって他人に拒絶されても、レイ自身は誰のことも拒絶しなかったということです。それどころかサードインパクトの際は、常にシンジくんに寄り添い、シンジくんの願いを聞き、それを実現させる役割を果たしています。徹底的な無私無欲の精神が垣間見えます。人間ここまで無視無欲でいられるものでしょうか。

 

さて、シンジくんの現状説明が終わり、25話Airアイキャッチが入った後、映画は雑多なシーンが少し連続します。色々注目するポイントはあると思うのですが、ここでは"時間の経過"に少し注目してほしいです。

まず、アイキャッチの後、最初に出てくるのはネルフの映像です。ここで日向マコト

 

補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか……

 

 という言葉を残します。直後、画面いっぱいにカウントアップするタイマーの映像。

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現在の時刻12:49:40

その次に映るのはミサトさんです。

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日が暮れ、辺りは薄暗くなってきています。

その次、ゲンドウがゼーレと対決するシーンを挟んで(ここについてはまた後に詳しく考察します)レイが目覚めるシーン。

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満月が高い位置にあるのでもう夜も更けてかなり遅い時間だと推察できます。

そして眠れないシンジくんのカット。

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シンジくんのSDAT、音楽は終わって電源が切れかかっています。

音楽を聴くわけでもなく長時間ただ横になってじーっとしているようです。

ここもシンジくんの沈んだ精神状態を強調するシーンになります

そして夜明けのカット。

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眠れないシンジくんの直後がこのカットなので「あーシンジくんはあのまま一晩中眠れなかったのかな」みたいな想像もしてしまいます。それからセカンドインパクトの真相を探るミサトさんのカット。

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ミサトさんの持つパソコンの画面。

6:00になった瞬間データが削除され、画面がDELETEDの文字で覆われます。

そしてゼーレのネルフ侵攻とサードインパクトが始まるわけです。

 

 筆者に言わせれば

こんな露骨な時間経過描写はない

です。

ネルフのシーン(12:49なのでお昼頃)

→ミサトのシーン(夕方、日没直後? 日本は常夏なので19時くらい?)

→レイ、シンジのシーン(夜中)

→夜明けのシーン(早朝)

→ミサトのシーン(朝6時)

きれいな時間経過です。要するにこれ全部一晩で起こった出来事だったんですね。

 

また先ほど挙げたマコトの

補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか……

 という言葉と6:00ちょうどにゼーレが動き出したことからサードインパクトが決行される日時は事前に予定されていたようです。

そこから、上に書いたシーンは全て予定されたサードインパクトの前日に起こったものだということが分かります。冒頭のシーンも、シンジくんの超絶射精も、ゼーレとゲンドウの対決もみんな人間が人間として存在できる最後の日の出来事だったということです。これらが一日で全部起こってるとすれば情報量としては結構密ですね。 

また、メタ的な視点で言えばここに出てくる人たちは後数時間で死ぬことが運命づけられているということもできますね。人生最期の数時間を見ていると思えばこれらのシーンの印象は少し変わってきます。

 

旧劇考察①で述べたようにAirは"死へ向かう物語"です。その観点から言えば「Airは死(=サードインパクト)の前日から始まる物語」だったんですね。

 

また映画冒頭、シンジくんがアスカのお見舞いに行くシーンでは

 東棟の第2・第3区画は本日18時より閉鎖されます。引継ぎ作業はすべて16:30までに終了してください

というアナウンスを聞くことができます。

どういう形で知らされていたのかはわかりませんが「明日何かが起こる」ということは極秘事項でもなんでもなく、結構広く知られた共通認識だったんでしょうね。

 

さて、ここで先ほどのミサトさんがパソコンを見ているシーンにまで戻りましょう。

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ミサトさんはこの画面を見て

 

そう、これがセカンドインパクトの真相だったのね……

 

という言葉を漏らします。

つまり

この画面にセカンドインパクトの真相が記されてるってことじゃないですか‼‼‼‼

 

早速和訳してみましょう。

(以下和訳。ここの英語難しい……誤訳してたらすいません)

 

 

(前文は途切れて見えない)

大阪の周辺に住んでいた元大学生を含むあるグループが協力してGEHIRN(ADAMに関わる計画)を企画した。

3.この出来事において最も注意を引いたのはコンベンションのオープニングで流されたアニメーションだ。この見世物はプロのスタジオの力を全く借りずに作られたもので、このコンベンションのためだけに作られていた。5分かそれくらいだったが、それはこのコンベンションのボランティアスタッフがひと夏丸々かけて仕上げたものだった。それを作ったスタッフは少しアニメ制作の知識(といってもそれは十分な知識とは言えないが……)がある美大の学生数人を中心に構成されていた。付け加えると、このようなコンベンションでは手作りのモデルキット(ガレージキット)やTシャツのような商品も一般的である。

4.経験を積むため、コンベンションの中心メンバーは"SECOND IMPACT"というADAMの専門店を立ち上げた。それは日本で初めてSFに関連する商品を並べて販売する店舗だった。SEELEと連携することでこの店舗はアマチュアのイベントを後援し続けた。

 5.2002年、ADAMはSEELE(SECOND IMPACT)として大阪に帰ってくるとオープニングアニメーションを作り始めたが、それは素晴らしい評価を得た。SEELEのようにこれも独立して作られたもので、5分かそれくらいの映像だったが、質としてはプロレベルであるとして喝采を受けた。アマチュアの領域からプロのアニメ界へ最終的に乗り出してきたこの作品は"GEHIRN--オネアミスセカンドインパクト"である。それは当時24歳だっ山賀博之が監督し、おもちゃメーカーのバンダイによる初めてのアニメ映画として制作された。ゲヒルンの様々な特撮……(途切れて見えない)

 

そしてこの映画を作るために2012年12月、アニメ制作会社であり、ジェネラルプロデューサーであり、販売会社であるGEHIRN.が創設された。

(0と1の羅列)

7.GEHIRNはオリジナルアニメシリーズ"トップをねらえ!"のvol.1‐3と、NHKアニメシリーズ"不思議の海のナディア"を制作しはじめた。そしてオリジナルビデオアニメ"オタクのビデオ2011"と"SECOND IMPACT"を制作した。これは「オタク」の歴史に焦点をあてつつ、同時にGEHIRN自身の歴史も茶化しつつ紹介するものだった。

 8.これらの才能ある人々はGEHIRNの特撮作品という体でアマチュアの映画作成活動をすることも思いついた。2001年から2003年の間に彼らはADAM(大日本愛国軍)、EVA-00(帰ってきたウルトラマンのパロディ)、ADAM(ヤマタオロチの復讐)を支援を受けながら作成し、様々な地域で上映した。

9.そしてこの映画を作るために2012年……(ここから先は上と同じ文章のコピペ笑)

 

以上、和訳でした。

完全な内輪のネタでした笑

実際にあったことの記事を書いて、その中に出てくる固有名詞部分をADAMとかGEHIRNとかエヴァ作中の固有名詞に置き換えたって感じですね。読む感じ同じGEHIRNでも場所によって違うものを指しているようなので、その辺の置き換えはホントてきとうみたいです。

 

 

 次のお話し☟

tomaonarossi.hatenablog.com

 

 

 

今まで書いた記事で個人的に気に入ってるやつ☟

tomaonarossi.hatenablog.com