エヴァ旧劇考察②セカンドインパクトとロンギヌスの槍の話
エヴァ旧劇考察第2段です。
この考察記事は大雑把ですが時系列順にお話しを進めていきます。
ようやくセカンドインパクト勃発です。エヴァの全てはここから始まりました。今回のテーマは"セカンドインパクトってなんぞ?"です。前回の続きですが、関連はあんまないのでここから読み始めてもノープロブレムです。
目次
本当のセカンドインパクト
さて、"裏死海文書"のおかげで人類滅亡の運命を知っていたゼーレ。彼らがこの危機を回避するために最初に起こした行動が2000年、南極でのセカンドインパクト誘発です。セカンドインパクトについての手がかりには以下のセリフがあります。
ミサトさん「15年前のセカンドインパクトは人間に仕組まれたものだったの。それは他の使途が目覚める前にアダムを卵にまで還元することによって被害を最小限に食い止めるためのものだったの」(Air)
セカンドインパクトはゼーレが意図的に起こした。
その目的はアダムを卵に戻してしまうことだった。
と言ってますね。AIr冒頭あたりで、ミサトさんはゼーレの引き起こしたセカンドインパクトの真相にたどり着きます。ミサトさんは加地さんを失ってからネルフのやり方に疑問を持ち、独自に動き始めていました。
なぜ、ゼーレはそんなことしたんでしょうか。使途が目覚めたときにアダムがいると何が問題なのでしょう。その手掛かりを探して今度はカヲルくんのセリフを振り返ります。
「アダム、我らの母たる存在。アダムに生まれしモノはアダムに還らねばならないのか。人を滅ぼしてまで」
「ぼくもアダムより生まれしものだからね」
「さあ僕を消してくれ、そうしなければ君らが消えることになる。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ」
使途はアダムから生まれた。
使途がアダムに還ることで人類は滅び、還った使途だけが生き延びる。
ということみたいです。これは前回のエヴァ考察①で話したように「死と新生」を行うサードインパクトの内容とぴったり一致します。つまり、アダムがいれば、人間の死と使途の新生(人間から使途への世代交代)が起こってしまうということです。それを未然に防ぐためにアダムを抹殺しておく必要があった、ということじゃないでしょうか。
人間は絶滅したくないのです。使途に取って代わられるわけにはいかないのです。そのためそのトリガーとなりうるアダムと、人に取って代わるかもしれない使途は絶対に抹殺しないといけないのです。これがゼーレの計画の第一段階です。ゲンドウの意志もここまではまだゼーレと共通します。
しかし!
ここでインパクトは「アダムに使途が接触すれば起こる」というような単純なものではないということは覚えておかないといけません。実際セカンドインパクト時まだ使途は目覚めていません。アダムしかいないのにどうしてあんな大爆発が起こったのでしょう。
人工インパクトの鍵は"ロンギヌスの槍"
セカンドインパクトがいかに誘発されたのかを探るべく、今度はセカンドインパクトで何が起こっていたのかを見てみましょう。セカンドインパクトの記録映像には以下のような研究員の言葉が残っています。
「ロンギヌスの槍は?」
「先週死海からこっちに陸揚げされたままです」
「地下に送る前に処理は必要だろ、大丈夫か?」
「提供者との接触実験は来月13日の予定だ。調整は間に合うよ」
「今日の実験は例のフィールドの自我境界信号だったかな?」
(↑今日何の実験をするかも曖昧な研究者ってどうなの?)
(場所が移る)
「アダムにダイブした遺伝子は既に物理的融合をはたしています!」
「ATフィールドがすべて開放されています!」
「槍だ! 槍を引き戻せ!」
「ガフの扉が開くと同時に熱滅却処理を開始」
「すごい、歩き始めた」
「ヤツ自身にアンチATフィールドに干渉可能なエネルギーを絞り出させるんだ」
(大爆発)
セカンドインパクト直前、アダムに何かの遺伝子を導入し、ロンギヌスの槍を突き刺した。
ということらしいです。これをどうにかして解釈します。
"ロンギヌスの槍"と"ATフィールド"の意味
それを考えるためにここでまた話を少し移して、ロンギヌスの槍の役割について考えましょう。ロンギヌスの槍が出てきたシーンでどんなことが起こったのかを復習します。
・槍の効果
1.ATフィールドを貫通する。
2.セカンドインパクト時アダムに突き刺していた。
3.リリスに刺さっていた槍を抜くと欠けていた足が生えてきた。
4.サードインパクト時、エヴァシリーズが自分の胸に槍のレプリカを刺してリリスと同一化した。
5.サードインパクト時、初号機は槍と合体して生命の樹に還元された。(←は!?)
5番目は意味不明すぎるのでいったん置いておくとして、1~4は結構筋が通ってるんです。まずATフィールドについてですが、これは「誰もが持つ心の壁」という風にカヲルくんは説明しています。この意味は『まごころを、きみに』の冒頭のシーンと合わせてみれば理解しやすくなります。
ここでゲンドウは「時間が無い。ATフィールドがお前の形を保てなくなる」と言います。ATフィールドは心の壁であり、ATフィールドが正常でなければ肉体は保てない、つまり
ATフィールドとは、肉体を形作ることによって本来筒抜けの心を見えないように隠し、心と心を突き放してしまう力
なのです。ATフィールドがもっと強力になれば、使途のように肉体どころか何物も寄せ付けない障壁として使えるようになるでしょう。なので槍を突き刺すことは肉体を取り払うこととイコールであり、場合によってはこれは他者との融合を可能にすることを意味するでしょう。
先ほど言った「リリスに刺さった槍を抜くと欠けていた足が生えてきた(=肉体の回復)」というのなんてこう考えればすごく腑に落ちませんか?
かくしてセカンドインパクトは不発に終わった
ここで、話をセカンドインパクトに戻しましょう。セカンドインパクトでは槍を刺し、遺伝子を導入していましたね。結果は案の定、アダムと導入遺伝子の融合が起こりました。当時南極にいた葛城調査隊のその日の実験目標はあくまで「例のフィールド(おそらくATフィールド)の自我境界信号」なので、槍を刺してアダムのATフィールドに干渉してみようくらいのつもりだったと思うのですが、ゼーレの思惑により大変な事故に繋がってしまいました。
キーとなるのは(手がかりが少なすぎて何とも言えないのですが笑)、遺伝子の導入です。これがなんの遺伝子だったか? ということなんですけど、まあ、人でしょ、多分。使途はまだ目覚めてませんし、リリスは肉体を自由に作る力があるので遺伝子を持ちません(旧劇考察⑥参照)。
こうして覚醒したアダムはセカンドインパクトを起こしました。
でもここまで考えればこの条件で完全なインパクトなど起こせるはずがないんです。先ほど「アダムは使途と接することでインパクトを起こし、人類から使途への世代交代を起こす」と書きました。ここでアダムに接触したのは人の遺伝子だけです。そもそも人間は今絶賛繁栄中なので世代交代する相手がこれじゃいませんし、接触したのは遺伝子だけです。人間には魂があります。魂(心)と肉体は別物です。繰り返しますが、心の周りにATフィールドによって形作られたものが肉体です。なのでアダムに遺伝子(肉体の情報)を融合させたというのは「アダムを覚醒させるのに必要最低限の情報だけをアダムに与えた」という感じでしょうか。
その結果、アダムは不完全なインパクトしか起こせず、暴走したのか、N2兵器で吹っ飛ばされたのかは分かりませんが木っ端みじんになって消滅した……こういうことだと思います。
さて、無事人類滅亡のトリガーとなるアダムを抹殺したゼーレですが、計画はまだまだ終わりません。アダムは消えましたが、使途がまだ残っています。人類滅亡の危機は完全になくなったわけではないようです。
そこで今度は使途殲滅のために、セカンドインパクト前に回収したアダムの情報からエヴァンゲリオンの建造を始めます。そして、「人類補完計画」とかいうカルト計画が少しずつ動き始めるのです……。
☟続きのお話し