エヴァ旧劇考察⑤レイとガフの部屋の話

エヴァ旧劇考察も第5段までやってきました。

サードインパクト勃発前夜です。

今回のテーマは"レイとカヲルの正体"そして"ガフの部屋の意味"です。

この話、難しくて重いんですよね……旧劇考察も山場です。
ガフの部屋なんかは後述しますが、旧劇と新劇で意味するところが大分違います(多分)。なので新劇を見た人はその辺も意識しながら読むと楽しめるかもしれませんね。 
 
前回のお話はこちら👇
 
 
 
さて、前回はレイの肉体についてお話ししましたが、そこで疑問になってくるのは「じゃあレイの魂は何?」ということです。
「魂と肉体は別物」というのはこの稿で何度か述べさせてもらいました。レイの肉体はユイのクローンです
 
 

レイの遺伝子は「ユイとアダムのハイブリッド」説

ちなみに、ネット上なんかだと「レイの遺伝子はユイとアダムのハイブリッド」なんて書かれているのを見かけます。そのせいで1人目、2人目、3人目のレイの性格が微妙に違うんだそうです(アダムの遺伝子が強く出るか、ユイの遺伝子が強く出るかの違い)。

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3人のレイ(まごころを、君に)
面白い解釈だとは思いますが、筆者はこれは微妙な解釈だと思いますね。
まず、ユイが取り込まれたのは初号機で、初号機はリリスから作られてるんですよ。初号機からユイの情報をサルベージしたときに遺伝子が混じるとしたら、それはアダムではなくリリスの遺伝子になるはずです。
一応、初号機にはアダムとリリス両方の情報が入っているという可能性もあります。が、その場合レイの肉体は「ユイとアダムとリリスの3つのハイブリッド」になるはずです(カオスすぎ)。少なくとも"ユイとアダムのハイブリッド"にはなりえないんです。ありえるとして"ユイとリリスのハイブリッド"の誤植でしょう。
そもそも旧劇考察⑥で述べますがアダムが遺伝子を持っていること自体筆者はおかしいとも思っています。
 
まあここをそんな深く議論する必要はありません。"レイはほぼユイのクローン"という認識でいきましょう。
 
問題はレイの魂です。これはどこから来たか。仮説は3つです。
 
仮説① 

「レイの魂=ユイの魂」説

レイの肉体はユイのクローンです。じゃあ魂もユイのものにするのが自然です。
ですがこの説は間違いです。ユイの魂はサルベージされずに初号機に残っているからです(旧劇考察③参照)。当たり前じゃん、と思うかもしれませんが、これが一番自然ということを覚えておいてください。魂と肉体はセットであり、ある肉体に別の魂を吹き込むなんてことは本来できません。
エヴァを思い出してください。エヴァとシンクロするのってめちゃくちゃ難しいんです。アスカはネルフでトップスコアの優等生で何年もエヴァに乗るために訓練を受けてきた天才です。レイも零号機とシンクロするのに7か月かかりました。あんなに薬漬けになって色々調整を受けているのにです。(トウジは知らん) それなのにシンジくんはあっさりエヴァを動かせてしまいました。なぜか。エヴァの魂が母親ユイでシンジくんと拒絶反応を起こさないからです。エヴァのエントリープラグが脊髄に差し込む形なのを思い出してもらえばイメージしやすいかなと思います。エヴァの魂(脳)とエヴァの肉体をパイロット(脊髄=エントリープラグ)が正しくコネクションしないとエヴァは起動しないのです。本来肉体と魂の結合は非常にデリケートなものなんじゃないかなと筆者は思います。

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エントリープラグは脊髄に差し込む
 
【2020/5/11 追記】

エントリープラグについて

このエントリープラグよく見ると脊髄に刺してるようでちゃんと脊髄に沿って刺してませんよね。脊髄というよりは身体の中心に向かって刺さってるように見えます。

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Airのワンカット。画面右、エントリープラグは脊髄を横切るように刺さっている
エントリープラグってエヴァの脳と肉体をコネクションしてるのではなく、コアと肉体をコネクションしてるのかもしれませんね。そうなると暴走するときに"プラグ深度が深くなる"という言い方をするのもイメージしやすくなりませんか。コアにパイロットの身体と精神が引きずり込まれる感じでしょうか。また第12使途戦で初号機が暴走するときお母さんの幻が足元から出てきたシーンもありましたね。これはエヴァの魂はコアにあるという示唆を与えてくれます。使徒を倒すのにコアを狙うのも、それが使徒の魂だからってことなんでしょうか。

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"ヤバく"なるとパイロットの座席は下の方へ引きずり込まれる(=プラグ深度)
 
 仮説②

「レイの魂はレイの魂だろ」説

"レイの魂の由来~?!" 何をごちゃごちゃ言っとるんだ。レイの魂はレイの魂に決まってるだろうがッッ!!という説です。正直これが一番素直です。レイにはレイの心があって、それは他の何かであったり、どこかから持ってきたものではないという説です。しかしこれじゃ説明できないことが作中たくさんあるのです。レイの魂が特別なものでなければならない理由は大きく2つあります。
 
レイの魂が特別な根拠
1.レイはカヲルと同等の存在である。
2.人間が死ぬと必ずレイと出会う。
 
普段から人間離れした雰囲気のあるレイですが、ようするに普通の人間じゃないんです、レイは。
24話でカヲルくんが弐号機を引き連れてターミナルドグマに侵入したとき、一瞬だけ正体不明のATフィールドが発生してすぐに消えるシーンがあるのですがあるのですが、そのATフィールドはレイのものでした。
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レイを見上げるカヲルくんとカヲルくんを見下ろすレイ
つまり、レイはその気になったら使途みたいにATフィールドが作れるんです。 カヲルくんはATフィールドを展開して二号機を起動させるまで普通の人間としてシンジくんたちと暮らしていました。ユイも同じです。ボロ出してないだけで普通の人間じゃないんです。
レイとカヲルってそもそもビジュアルが似てますよね。例えば肌が白くて髪の色が薄くて瞳が赤いところ。
 そういえば以前「カヲルくんのコアはその赤い瞳だ」という考察を見かけたことがあります。コアっていうのは使途がみんな持ってる赤い球体で、上の【追記】で述べたようにおそらく使途の魂がある場所です。ヘンテコな考察だなと笑っていたのですが、新劇場版”破”のラストでニアサードが起こるとき、シンジくんの瞳が赤くなっていたのを見て「あながち的外れな考察じゃないのか?」とか最近は思ってます。 
 
レイとカヲルには他にも共通点があります。例えばダミーシステムの材料になってるところ。レイの肉体はネルフのダミーシステムの材料です。カヲルくんはエヴァシリーズのダミープラグになっていることが分かっています。

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Airのワンカット
こういうことから、カヲルくんが使途と呼ばれている以上、レイもそれに相当する何かしら特別な存在だと考えないと不自然というわけです。
 
レイの魂が普通のものではない根拠はもう一つあります。
「人間が死ぬとレイに会う」ということです。なんじゃそりゃ、という人は『まごころを、君に』を見れば分かります。そこで作中の登場人物がばったばった死んでいくのですが、死ぬ直前に絶対レイの幻を見るのです。
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死に際に現れるレイ(ミサト、青葉シゲル)
サードインパクトが起こってるときだけの特別な演出でしょ?と突っ込まれるかもしれませんが、この現象にインパクトは関係ありません。人は死ぬとレイと会う。これは人類の経験する普遍的な現象なのです。(例えばミサトさんサードインパクトが起こるよりだいぶ前に死んでいますが、レイの幻を見ます)

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死んだ人たちを眺めるレイ
こんなことになってて「レイはただのユイのクローンです」で終わりにすることはできないのです。
ちなみにDEATH(TRUE)2に幼女レイが赤城ナオコに絞殺されるシーンがあるのですが、その際レイの瞳にはカヲルくんが映っているのが確認できます。これはテレビ版のときにはなかった演出でした(ここについてはエヴァ考察"まご君"編①で詳しく考察)。

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絞殺されるレイの瞳にカヲルくん
 
このへんの不思議を説明するために、エヴァ考察では以下のような話が通説になっています。これは突飛であんま好きじゃないのですが、そうでもしないと解釈できないって感じです。
 
仮説③

「レイの魂=リリスの魂、カヲルの魂=アダムの魂」説

死ぬときにレイの幻が現れる。これはレイがリリスの魂を持っていれば納得がいきます。人間はリリスから生まれたからです。"始まりと終わりは同じところにある"というのはキール議長の言葉ですが、リリスから人が生まれたとすれば、人の死はリリスによって導かれるはずです。
リリスから生まれた人を死によってあるべき場所に還す、その案内をするのがレイ(=リリスの幻)、というイメージでしょうか。ここはキリスト教というよりは仏教的な感じがしますね。
 
またサードインパクト時、滅亡していく人類を眺めてレイがこう言います。
 
「世界は悲しみに満ち満ちていく。空しさが人々を包み込んでいく。孤独が人の心を埋めていくのね」
 
これ、視点がもう神の視点ですよね。人を俯瞰してこんな風に眺められるのは作中アダムとかリリスしかいないんです。だとするともうカヲルがアダム、レイがリリスと対応させざるをえません。
 
また『まごころを、君に』でレイがリリスと一体化するシーンがあるのですが、ここなんかは露骨です。レイが「ただいま」というと「おかえりなさい。」のテロップが映るのです。レイがリリスに還ることが「おかえりなさい。」ってことはレイはリリスの魂を持ってるってことでしょう。(そこにリリスの肉体がある以上足りないのはリリスの魂しかない)

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レイとリリスの対話。「ただいま」「おかえりなさい。」

 

結論:レイの魂=リリスの魂

 

しかし、これだけじゃ説明できないことが1つ残っています。

それがレイの魂に関するリツコのこんなセリフです。

 

「魂の入った入れ物はレイ一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになってたのよ。ここに並ぶレイと同じものには魂がない」

 

 このセリフ、エヴァで一番意味不明なセリフだと筆者は思ってます。

このガフの部屋ってなんぞ?ってことです。

新劇場版ではなじみのある言葉ですが、旧劇ではこの「ガフ」という単語は3回しか出てきません。

 

1回目はセカンドインパクト時の研究員の言葉

「ガフの部屋が開くと同時に熱滅却処理を開始」

 →直後に大爆発

 

2回目は先のリツコの言葉。

 「魂の入った入れ物はレイ一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになってたのよ。ここに並ぶレイと同じものには魂がない」

 

3回目はサードインパクト時の冬月の言葉

「ガフの扉が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか」

 

1回目と3回目のセリフから

インパクトが起こるときガフの扉が開く

みたいですね。

 

ネット上では"ガフの部屋"の元ネタがよく解説されています。これ、ヘブライ神話で"魂が作られる場所"だそうです。こう考えれば、この難解な"ガフの部屋"の理解は容易です。先の「人の死は人を産んだリリス(レイの幻)によって導かれる」というのと同じです。"はじまりと終わりが同じところにある"のだとしたら、

ガフの部屋で生まれた人の魂はサードインパクトでガフの部屋へ帰る

ことになるでしょう。本来魂を供給するだけのガフの扉が開き、魂がそこへ逆流していく(そして新たな生命体が形作られる)。それがインパクなのではないでしょうか。分かりやすいですね。

 

 ところで新劇場版を見た方はガフの扉ってこんな感じだと思っていませんか☟

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ガフの扉(新劇場版)

旧劇場版でも似たものが出現しています。

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ガフの扉っぽいもの(旧劇)

ですが、筆者が思うにこれはガフの扉ではありません。
 これが出現するのは先に挙げた冬月先生の

「ガフの扉が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか」

という言葉のずっと前だからです。冬月先生が「ガフの扉開くぞ!!」って言ってる時点でこのガフの扉的な何かはとっくに消えてなくなっています。

じゃあ旧劇における"ガフの扉"とはどこにあるのでしょうっていう話はまた後のの考察で。

 

次回は今まで注目していなかった渚カヲルに焦点を当てつつ、ガフの部屋、アダム、リリスについてもう少し深堀していきましょう……。

 

 

【補足】

シンジの見たレイの幻

ちなみに、エヴァでシンジくんが"レイの幻を見る"シーンって2回あるんです。

1回目がテレビ版1話冒頭、シンジくんがミサトさんの迎えを待ってるシーン。

2回目は『まごころを、君に。』のラスト、サードインパクトの後アスカと海岸に寝そべっているシーン。文字通り"始まりと終わりで同じ"ことががおこっていますね。これ、レイの幻がリリスの魂の姿だと解釈すれば理屈っぽく説明できる現象です。リリスは人の死を導く、つまり、それまでのシンジくんが死ぬとき(=新しいシンジくんの人生が始まるタイミング)でレイの幻が出てきているというわけです。

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物語の"始まり"と"終わり"でチラッと現れたレイ

 

 

次のお話し☟

tomaonarossi.hatenablog.com