エヴァ旧劇考察⑥ 渚カヲルの話
エヴァ旧劇考察、ここではこれまでお話しできなかった
"渚カヲル"について少し掘り下げたいと思います。
(この記事今まで書いた考察記事で一番お気に入り)
☟前回のお話し
まずカヲルくん初登場のシーンから。
このときのシンジくんは孤独に打ちひしがれていました。第三新東京市がめちゃくちゃに破壊されたため、トウジやケンスケは家を失ってしまい、今は疎開しています。アスカは精神的に参って入院しています。レイに会う勇気が無いというシンジくんの独白もあります。前話(23話)でレイがダミープラグの材料だったということを知ってしまったからです。
この状況でシンジくんが漏らした言葉がこちら。
「友だちは……友だちと呼べる人はいなくなってしまった……」
辛いシーンです。
こんなときにカヲルくんは夕日の中颯爽とシンジ君の前に現れるわけです。
と、ここでこのカヲルくん初登場シーンをもう一度よく見てほしいのですが、なんか変な石像みたいなのにカヲルくん座ってますね。このとき第三新東京市は第16使途との戦闘でボコボコに破壊されてますから「その瓦礫の一部かなぁ」くらいにしか普通だったら思わないと思うのですが、この石像、実はめちゃくちゃ大事なんです。
根拠はDEATH(TRUE)²でカヲルくんが死んだ直後に映されるこの映像。
そしてエンディングロール。
お分かりのようにカヲルくんが死んでから執拗にこの石像が強調されています。
筆者の考察を結論から言うと、
この石像は元カヲルくんの肉体
なのです。「なにを突飛なことをwww」と思うかもしれませんが、根拠を示します。
一番わかりやすいのは、やはり
・カヲルくんが握り潰されて首が落ちる→石像の首が血で染まる。
この対応です。"カヲルくんの肉体の死"と"像の流血"は、カヲルくんと石像が同等のものでなければ説明できません。
また、旧劇考察⑤で述べたように
・カヲルくんの魂はアダム
というのもポイントです。アダムやリリスが他の生命体と決定的に違うところ。それはこのアダムやリリスはすべての生命の肉体の産みの親であるということです。肉体と魂は別物というのはこの稿で繰り返してきました。魂が生まれるのがガフの部屋で、その魂に肉体を与えるのがアダムとリリスなのです。このことを示唆するミサトさんの言葉を見てみましょう。
ミサト「シンジくん、私たち人間はね、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使途なのよ。他の使徒たちは別の可能性だったの。人の形を捨てた人類」(まごころを、君に)
この言葉、分かりにくいですよね。なんでって使途の定義がめちゃくちゃぐらつくからです。アダムも、リリスも、人類も、みんな使途という同じカテゴリーでくくられています。そのくせアダムとリリスは他の生命体の源だとも言っています。
これは
使途=ガフの部屋から生まれたもの
と考えれば説明できます。ガフの部屋から最初に出てきたものが第1使徒アダムと第2使途リリス。そしてそれ以降にガフの部屋から生まれた魂が順に第3~16使途です。第1使途であるアダムの魂が人の形を取って現れたものが17番目の使途カヲルくんです。アダム、リリス、人類、これらはガフの部屋から生まれたという"魂のレベル"で同等なのです。だから同じ使途という魂のスケールでくくることができるわけです。
こういう点で同じ使途ではあるのですが、肉体のスケールではアダム、リリスは他の使途の産みの親です。先のミサトさんの言葉通りです。また、冬月先生いわく
「ガフの扉が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか」
だそうです。
ミサトさんはアダムやリリスがすべての生命体の産みの親であると言ってます。
冬月先生はガフの部屋が世界の始まりだと言ってます。
はじまりが2つあるんですよね。アダムやリリスが生んだものと、ガフの部屋が生んだもの。この2つを明確に区別しないといけません。
となると
アダム、リリス=肉体の産みの親
ガフの部屋=魂の産まれる所
と分けるのが一番妥当です。
ここまでそれっぽいことを書いてきましたが、それ全部あなたの想像でしょ?と言われるかもしれません。でも、これは後の考察で説明しますが、サードインパクトでリリスが、集めた人の魂に、新しい肉体を与える描写があるんですよ。サードインパクトでリリスは新しい魂を作るわけではありません。あくまで既存の魂に新しい肉体を与えるだけです。なので正しいと筆者は思います。
ここでカヲルくんに話を戻しましょう。カヲルくんはアダムです。そして、上で述べたようにアダムやリリスは自由に肉体を作ることができます。
リリスはレイの肉体があれば簡単にレイと同化しましたし、ほんの数分で宇宙規模にでかい肉体に変身することもできます。その気になればカヲルくんの身体に変身することもできます。肉体を自由に形成できるという点が、アダム、リリスを他の使途の上位の存在たらしめているのです。
また、『まごころを、君に』で、ターミナルドグマから上昇するリリスの手が伊吹マヤをすり抜けていくシーンもありました。あそこなんかは露骨だと思います。リリスにとって肉体とは自由に変形できる水のようなものであり、それはヒトの肉体も同様であるという示唆をあのシーンは与えてくれます。マヤからしてみれば「自分の身体が水のようになって体の内部をくまなく触られていく」ような感じでしょうから、そりゃ絶叫ですよね。
はい、ここまで見れば、カヲルくんも当然なんにでも変身できると考えて問題ありません。カヲルくんはリリスと同等の存在であるアダムなんですから。
だからあの首のない石像がカヲルくんの身体だったと考えても何もおかしいところは無いのです。
また、これは細かい話になりますが
1度作った肉体は(特別な条件がないと)消せない
というのもここで確認しておきましょう。サードインパクトが終わった後クソでかリリスの肉体は崩壊しますが、そのリリスの肉体は消えませんでした。
肉体が崩壊してもリリスが死んだわけではありません。この後も"レイの幻"が出てくるところを見ればリリスは生きていることが分かります(旧劇考察⑤参照)。ただいらなくなった肉体が脱ぎ捨てられただけなのです。
となれば、もともと"カヲルくんの肉体だったもの"も不要になればその辺にポイっとされていても問題ないですよね。
さあ、ここまで「あの石像は元カヲルくんの肉体だ!」と繰り返し述べてきたわけですが、もしそれが正しいとして、1つ疑問が出てくると思います。
カヲルくんはなぜ変身する必要があったのか?
ということです。カヲルくんはゼーレから直接送り込まれてきたということが作中示唆されています。普通に他のエヴァシリーズみたいに飛行機に乗ってネルフに来たらいいじゃないですか。なぜあんな羽の生えたやばい姿でネルフにやってきたんでしょう。理由は1つしかありません。
ゼーレの本拠地が月にあるから
です。根拠はこちらの映像です。
サードインパクトの後、地球は真っ赤っかになっちゃうんですが、なぜか月も一部分だけ赤くなってるんです。そこで「地球が赤くなったのっていつだったか?」を振り返ってみます。
後の考察で述べますがこれ、ヒトが絶滅するタイミングです。人が滅んだ場所から赤く染まっていっているんですよね。
つまり、月が赤く染まっているということは
赤く染まっていた場所には人が住んでいた
ということです。劇中誰かが月に住んでるようなことを示すセリフなどは無いですが、もし誰かがいるとすればそれは世界を裏で支配するゼーレぐらいしかいないでしょう。カヲルくんはゼーレから直接送り込まれた、ということなので、当然
カヲルくんは月からやって来た。
ということになります。どうやってやってきたか? 普通に宇宙船とかに乗ってきた可能性ももちろんあります。が、あの石像がもし元カヲルくんの肉体だったとすれば、それは月から地球にやってくるための肉体だったと考えるのが自然です。
石像がエヴァシリーズっぽい形状をしているのもそのためだと考えれば納得がいきます。サードインパクトが起こったとき、エヴァシリーズは高度22万キロ地点にいたことが劇中示されています。エヴァシリーズっていうのは宇宙空間に耐えうる構造なんです。だから宇宙を渡ってきたカヲルくんの肉体がエヴァシリーズに似た形状をしているというのは筋が通っていませんか?
まとめるとこうです。
・カヲルくんはゼーレ本拠地の月から、地球にエヴァシリーズのような姿になって飛んできた。
・地球に到達したカヲルくんは余分な体を捨てヒト型に変身し、シンジくんと合流した
【2020/9/9 追記】
ネルフの本拠地が月にあることを示唆するかも?しれないシーンを見つけました。
それがこちら。
この第12話の冒頭では、セカンドインパクト時のミサトさんの過去が明らかになるのですが、それはこのカットがチラッと映るところから始まります。月からセカンドインパクトが起こる瞬間を捉えた映像になりますね。
「なぜ月から見たカットから始める必要があったのか?」
旧劇考察②で述べたようにセカンドインパクトはゼーレが意図的に引き起こしたものでした。そのゼーレが月にいたとしたら? セカンドインパクトはこのように月から眺めるはずです。ゼーレがセカンドインパクトの原因だったからこそ、月からのカット(ゼーレの視点)でセカンドインパクトを振り返った……。自然な流れです。
まあ結論ありきの天下り的な解釈ではあるんですけどね~。
*続きのお話し☟
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