2019-01-01から1年間の記事一覧

飛翔する性【後編】

額の汗をぬぐって立ち上がった。どろりとした粘液をかぶったように身体がだるく胸の辺りが重苦しい。湿った前髪をかきあげる。窓の方を見るとすりガラス越しに車道の信号が黄色く点滅しているのが分かった。静かで、何もかもが沈黙している。 洗面所に行って…

飛翔する性【中編】

遠い町でリサと出会った。 彼女はその町の小さな喫茶店でウェイトレスをしていた。その店は店内に大きな白いオウムを飼っていることで少しは有名な店だったらしいが、僕はそうとは知らずに喫茶店に入って、そしてそこのニコちゃんという大きなオウムに「イラ…

飛翔する性【前編】

蒸し暑い。シワだらけのシーツが重くべたつく。ため息を吐き出して額の汗をぬぐう。時計の文字盤は夜中の二時。布団に入ってからまだ二時間しか経っていない。少しうとうとしただろうか、確信が持てない。 身体の中までベタつくようだ。胸の奥が少しずつ澱ん…