エヴァ旧劇考察"まご君"編②「セフィロトの樹・ロンギヌスの槍・生命の実・光の翼」
"まご君"考察第2弾です。
今回は"まごころを、君に"を初めから細か~~~く見ていきます。
まご君はAirにも増して情報量が密で、マジでワンカットごとに注目したいポイントが出てきますね……
前回のお話し☟
【目次】
セフィロトの樹の機能
まご君の冒頭はレイとゲンドウがなにやら怪しげなことをしているシーンから始まります。
初めて見る人は「おぉまたヘンテコなことになっとんなぁ」ってなるシーンだと思うのですが、実はここはそんな驚く場面ではありません。
ここに来る前レイが何をしていたのかを思い出しましょう。
なんか変な場所で水に浸かってますね。
以前、サードインパクトは前々から日時が明確に決められていた出来事だと述べました。またレイがここに来たのはサードインパクトのせいぜい5,6時間前です(旧劇考察Air編①参照)。これらのことから
レイはサードインパクトに備えるためここに来た
ということが分かります。この謎場所に来て、サードインパクトに向けて最後の調整を受けたということでしょう。ではその調整とは何でしょうか。
思い返せば、確かにサードインパクト直前、レイの身体は変なことになってましたね。
レイがこんな状態になることは今までありませんでした。当たり前です。日常生活でいきなりこんな風に腕がもげたら大変ですからね。これは明らかにサードインパクトのために何かしらの調整を受けた結果です。ゲンドウはこのレイを見てこう言います。
ゲンドウ「時間がない。A.T.フィールドがお前の形を保てなくなる」
ここでレイが調整を受けている風景をもう一度見てみましょう。なんか変な形をした穴の1つにレイが入っていますね。これは"セフィロトの樹"と言う聖書に出てくるものがモチーフになっています。
このセフィロトの樹は作中もう1回だけ出てきて、それがこのシーン☟
これを見て冬月先生はこう言います。
冬月「アンチA.T.フィールドか」
まとめるとこうです。
・セフィロトの樹型の水槽で調整を受けた後、レイの身体は崩れた。
・セフィロトの樹状に隊列を組んでエヴァ量産型はアンチA.T.フィールドを形成した。
旧劇考察②でA.T.フィールドは肉体を形成する力だと述べました。A.T.フィールドが肉体を保てなくなったということはこのA.T.フィールドが人為的に弱められたということでしょう。セフィロトの樹登場の後、A.T.フィールドの弱体化、アンチA.T.フィールドの発生というほぼ同じことが起こっているんですね。ここから逆説的にセフィロトの樹はA.T.フィールドに対抗する装置だということが分かります。
さて、なぜレイにこんな調整を施す必要があったのかと言われればそれはゲンドウ(の右手)を身体の中に受け入れるためでしょう。A.T.フィールドを弱体化させ、肉体を形成する力を弱めることで、ゲンドウはレイと(あるいはリリスの魂と)直接結びつき、サードインパクトに一枚かましてやろうとしたわけですね。
ロンギヌスの槍のレプリカ
一方その頃のシンジくんはというと……。
大変な目に遭っていました。
このときの初号機は既にシンジくんの操縦を全く受け付けず、ゼーレの思うがままになっています(前記事参照)。このシーンで印象的なのはやはりロンギヌスの槍の挙動です。この項ではこのロンギヌスの槍について少し注目してみましょう。
これを見て委員会メンバーはこう言います。
委員会「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に帰った」
ここでわざわざ"オリジナル"と言うのはオリジナルでないロンギヌスの槍があるからでしょう。「オリジナルでないロンギヌスの槍」と言われて想起されるのは量産型が持っていた両刃剣しかありません。オリジナルでないということで、これをロンギヌスの槍のレプリカとここでは呼称することにします。
要するに、この両刃剣も一種のロンギヌスの槍なわけです。 このレプリカの特徴は何といってもその自在な変形能でした。レプリカの槍が見せた多様な形状を少し振り返りましょう。まず上の画像であるような「両刃剣型」とおなじみの「ロンギヌスの槍型」。それからまっすぐの「銛型」。しゅーっと伸びて初号機の両手を突き刺した「如意棒型」なんてのもありました(この辺のネーミングは筆者が3秒くらいで考えたのでダサくても許してね)。
ここから分かるようにロンギヌスの槍って自在に形状が変化するんです。思い返せばこれはレプリカだけではなく、オリジナルの槍も作中何度か形状変化を見せていました。例えばテレビ版22話。
ちなみに使途を貫いた後、槍はまたすぐに元の二股の形状に戻っているのが確認できます。露骨にはっきりと形が変化しています。また、まご君であればラストシーン「∞型」になった槍が登場しますがここなんかは印象的ですから覚えている人も多いかもしれません。
ここから分かるように、オリジナルかレプリカかに関係なくロンギヌスの槍は形状が自在に変わるということが分かります。
「形状が自在に変わる」と言えば、同じ性質を持っているものがそういえばありましたね。アダムとリリスです。
アダムとリリスは肉体の産みの親であり、自在に肉体を形成することができると以前述べました(旧劇考察⑥参照)。
ここで言う肉体形成能力は言い換えるとA.T.フィールドの形成能力です。A.T.フィールドとは肉体を形作る力であり、A.T.フィールドによって肉体は形を保っています(旧劇考察②参照)。
A.T.フィールドが無くなれば肉体は形を保てず肉体の元であるL.C.L.になってしまいます。まご君には「A.T.フィールドを確認! 分析パターン青!」というセリフがあります。これは、A.T.フィールドを解析すれば、そいつがどういう肉体を持っているかが分かる(=使途なのか人間なのかの判別がつく)という理屈ですね。
話をロンギヌスの槍に戻しましょう。ロンギヌスの槍も形状が自在に変化しました。これも同じように考えることができます。つまり
ロンギヌスの槍は使用者や周囲のA.T.フィールド に呼応して形状変化する
ということです。槍自身がA.T.フィールド形成するわけはないですからね。あくまで周囲のA.T.フィールドに反応するだけです。旧劇考察Air編③で「量産型の両刃剣はなんでいきなり槍に変形したんだろう」という疑問を提示しましたが、「そもそもロンギヌスの槍って自在に変形するものだ」というのがその答えなんですね。
これは別の言い方をすれば
槍の形状を見れば使用者の意思や状態が分かる
と言うことでもあります。
ただ、この槍は周囲のA.T.フィールドから影響を受けるだけでなく、槍の方からも周囲のA.T.フィールドにどんどん干渉していくというのが面白いところです。
ロンギヌスの槍はA.T.フィールドのバリアを簡単に破ります。
量産型に槍を刺すとA.T.フィールドが変形し身体が部分的にレイ化しました(下図左)
アダムに槍を刺すことでセカンドインパクトは誘発されました(下図右)(考察②参照)。
ここから最終的にこういうことが言えます。
ロンギヌスの槍とは、使用者の意思や状況に応じて、周囲のA.T.フィールドを何かしら変容させ、様々な現象を引き起こす一種の触媒のような存在である。
まあ要約してしまえば大したことは言っていません。
サードインパクトは初号機がトリガー
さて、話をサードインパクトに戻しましょう。
まご君考察①で述べたようにこのサードインパクトは初号機が中心となって進行しています。これは覚醒初号機から光の翼が生えていることからも裏付けられます。
見た目(色合い?)が似てるっていうだけで言ってるんですが、想像するにこの2つの光の翼は同等のものです。4本出てるって点でも一致してますしね。
セカンドインパクトにおけるアダム
=サードインパクトにおける初号機
ということでしょう。セカンドインパクトはアダムが覚醒することで引き起こされました(旧劇考察②)。サードはリリスや他の何かではなく、明らかに初号機のせいで始まったのです。問題はなぜ初号機がトリガーになれたのか?ということです。鍵となるのは以下の2つのセリフです。
リツコ「人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たった。それが15年前」(death(true)2)
共にインパクトのトリガーを神と呼称しています。
エヴァ世界での神とは"インパクトを起こし世界を作り変える力を持った存在"のことなんですね。そして冬月先生いわく初号機が神の力を持っているのは「生命の実と知恵の実両方手に入れたから」だそうです。
ここでいう生命の実って何なんでしょう。
ネット上では「生命の実=S2機関」だという意見をよく見かけますが、筆者はこれはどうかなと思います。それを言えば三号機や量産型もS2機関を持っていますが、これらは神ではないからです。いまや人類にとってS2機関とは"自分たちで作れるもの"です。そんな簡単に神になる材料が手に入るわけありませんし、そんな簡単に生命の実が手に入るならゼーレはわざわざ初号機を使ってインパクトを起こそうともしないでしょう(S2機関についてはこちら)。
筆者は生命の実=使途の肉体くらいのイメージでいいんじゃないかと思います。対応から知恵の実=ヒトの肉体です。
DEATH(TRUE)2にはこんなセリフがあります。
リツコ「アダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ」
シンジ「人……人間なんですか?」
リツコ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには人の魂が宿らせてあるもの」
ここから分かるようにエヴァは人間と同じ肉体と魂を持っています。なので知恵の実の方は最初から持っていると考えましょう。じゃあ初号機が生命の実を手に入れたのはいつか? これはテレビ版19話のゼルエル戦しかありません。
この後初号機が使途を捕食するシーンもあります。ここから初号機はヒトの肉体と、少なくとも部分的には使途の肉体、その両方を持っているということが分かります。初号機はこのときに生命の実を手に入れ、神に相当する力を獲得したのです。初号機が使途の何かを手に入れるシーンは劇中ここしかありません。ここ以外ホントにないです。このとき初号機は既に神になり終わっていたということです。
そうなると
どうして初号機が生命の実を手に入れた時点ですぐサードインパクトが起きなかったの?
っていう疑問が出てきます。結論から言うと
起こそうと思えばいつでもサードインパクトは起こせた
んだと思います。ただすぐに起こさなかったのはまだ使途が何体か残っていたからでしょう。以前述べたように使途というのはヒトにとって代わるかもしれない存在です。こいつらを全員殲滅しないとヒトの未来はそもそもありません。だから神の力は手に入れたものの、インパクトを実行せよ!っていうゴーサインは出なかったんだと思います。
このゴーサインを出すのはゼーレです。サードインパクトは前々から発動日時がはっきり決められていたというのはこの稿で何度か述べました。これは言い換えると初号機の覚醒(=サードインパクトの発動)は完全にヒトの管理下にあったということです。ゼーレがその気になればいつでもサードインパクトは起こせたのです。ただ思い通りのインパクトを起こすために時期を待っていただけで。
弐号機が始末された時点でタイミングよく初号機が覚醒したのもこう考えれば分かりやすいですね。分かりやすく言えば、ゼーレに「はい、舞台整ったから初号機出てきてね~」って言われただけなのです。
*続く(鋭意執筆中!)
次回、サードインパクトいよいよ勃発です!