エヴァ旧劇考察③エヴァと碇ユイの話

エヴァ旧劇考察第3段です!!

今回のテーマは"エヴァンゲリオン誕生秘話"です。

筆者の一番好きな碇ユイのお話しですよ~↑↑

 

前回の記事はこちらから☟

tomaonarossi.hatenablog.com

 

 

目次

 

決戦兵器エヴァンゲリオン

 さて、セカンドインパクトによってアダムを抹殺したゼーレは人類存続のため計画の第二段階に着手します。それが

 

エヴァンゲリオンの建造

 

です。これはセカンドインパクト前に収集したアダムの情報をもとに行いました。

エヴァンゲリオンの建造は補完計画もありますがそれ以前に使途と戦うため、というのが第一の目的です。アダムや使途はS2機関という超原理で動いています。S2はスーパーソレノイドの略で、とんでもエネルギーを生み出すことができる、この世界でのいわゆるSF設定ですね。

【2020/7/22 追記】

S2機関は一言で言えば"永久機関"です。

エヴァアンビリカルケーブルによって電力を供給されなければ5分しか動けません。それに対し使途は単独でいつまでも活動していられます。この差はS2機関を持つかどうかです。

トウジが乗ったエヴァ三号機はケーブルついてないのに動き回ってました(アニメ18話)。それは第四使途の残骸から採取したS2機関を研究して搭載していたからです。三号機と四号機はS2機関搭載型として開発された次世代型エヴァだということが劇中で示されています。しかし、三号機は使途が取り付くわ、四号機は大爆発してネルフ第二支部ごと吹っ飛ぶわで、その後しばらくS2機関搭載型エヴァは劇中には出てこなくなります。次にS2機関搭載型エヴァが出てくるのは『Air/まごころを、君に』です。冬月先生はアンビリカルケーブルを付けずに単独で飛行するエヴァシリーズを見て「S2機関搭載型を9体全機投入とは、大げさすぎるな」と言っています。

 

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ジャンプ!する三号機と飛行するエヴァシリーズ。

どちらもS2機関を搭載しているのでアンビリカルケーブルがない

 

ゼーレは"裏死海文書"によって間もなく使途が目覚めることを知っていました。エヴァ考察②で述べたように、こいつら使途は人間を滅ぼし、人間に取って代わるかもしれないやつらです。野放しにはできません。しかし使途はS2機関で動いています。人間のそれまでの科学力だけでは太刀打ちできません。

 

そこで!

アダムから採集した情報なり肉片なりからアダム本体を人工的に再現、対使途ヒト型汎用決戦兵器エヴァンゲリオンを建造するわけです! 

 

このエヴァンゲリオン、S2機関は持ちませんが、自らATフィールドを生成し、さらにそのATフィールドどうしを干渉させることで相手のATフィールドを破ることができます。

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ATフィールドに干渉する初号機(新劇場版より)

これで、使途を全員殲滅!

人類滅亡の危機は脱したのでした。めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは、ならなかったのです。

 ゼーレは既に使途を倒した後のことを考えていました。人類補完計画です。エヴァ考察①「ゼーレはキリスト教の一派が母体かもしれない」と書きました。インパクトのトリガーとなるものに「アダム」とか「使途」とか聖書に出てくるものの名前を付けて呼んでるくらいですからね。その立場から見ればゼーレと言うのは一種のカルト集団なのです。補完計画というのはミサトさんいわく、

 

「出来損ないの群体として既に行き詰った人類を完全な単体としての生物へ人工進化させる補完計画」(Air)

 

です。こんなのカルトでしかないでしょう。当然ゼーレの下で働く人たちはゼーレに必ずしも賛同していませんでした。

「DEATH(TRUE)²」では以下のようなやり取りがあります。

 

冬月「ゼーレの持つ裏死海文書。そのシナリオのままだと十数年後に必ずサードインパクトが起こる」
ユイ「最後の悲劇を起こさないための組織、それがゼーレとゲヒルンですわ」
冬月「私は君の考えに賛同する。ゼーレではないよ」

 

この2人は決して"人類補完計画"などといういかがわしい計画のためにゼーレの元にいるわけではないようです。

 

ゼーレ周辺組織

さて、ここでゼーレ周辺の組織関係を今一度確認しておきましょう。

まずよく分からないのが人類補完委員会で、これは実質ゼーレと同じものだと思われます。ピクシブ百科事典なんかには厳密には別で、ゼーレが国連を動かして予算を下ろしてくる際に使う隠れ蓑が"人類補完委員会"と書いてありましたが、”人類補完委員会”なんていかがわしい名前の組織が国連から莫大な予算をもらっていたら客観的に見てドン引きだろとか筆者は思います……。(名前が露骨で隠れ蓑になってない笑) あとマルドゥック機関とかいうのもありますがこれについては後の記事でまた言及します。

 

このゼーレの下で機能する実働組織が"ゲヒルン"(ネルフの前身)です。

このゲヒルンは第三新東京市に国連直轄の"人工進化研究所"という設備(名前が草)を持っていてエヴァンゲリオンや超優秀なコンピューターMAGIの開発を行っています。ゲンドウはそこの所長を務めていました。

しかし、ゲヒルンと言う組織はエヴァが完成し、続いてMAGIが完成した当日に起こったちょっとした人身事故によりメディアの追求を受け、組織解体となってしまいます。

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この人の痴情のせいでゲヒルンは解体になった()

この辺の出来事は第21話「ネルフ、誕生」で詳しく描かれていますので、興味のある人は見てみてくださいね。

その後ゲヒルンの後継組織として作られたのが"ネルフ"です。

こう書くとゲヒルンとネルフはほぼ同じ組織のように見えますがやってることはかなり違います。ヒルンはエヴァ、MAGIの開発が中心的な仕事でした。一方ネルフエヴァを運用して使途を殲滅することを目的とした組織です。作中のネルフメンバーはこのゲヒルン時代を知っているかどうかで、物語の核心を知っているかどうかが変わってきます。

例えば赤城リツコはゲヒルン時代を知っているのでエヴァやアダムのことについて色々知っています。しかし同い年のミサトさんはゲヒルン時代のことを知らないのでアダムの正体なんかについても実際は全然分かっていません。

 

こうしてみると作中にはおおざっぱに3種類の人間がいることが分かります。

1.ゼーレ

2.ゲヒルン時代からのネルフメンバー

3.ゲヒルンを知らない新規ネルフメンバー(シンジくんはここ)

 

この三者がそれぞれ違う意志を持って動いているのが『新世紀エヴァンゲリオン』なのです。

1番目のゼーレは「サードインパクトによって人類を完全な単体へと人工進化させること」を最終目標としています。

3番目の"新規ネルフメンバー"は「死にたくない、生き延びたい」くらいしか考えてません。

難しいのは2番目の"ゲヒルン時代からのネルフメンバー"です。彼らがどう考えていたのかを探っていくべく、彼らのセリフを振り返っていきたいのですが、その前に前提としてエヴァンゲリオンについて詳しく確認しておきましょう。

 

初号機は"特別な"エヴァンゲリオン

 

赤城リツコ「アダムから神様に似せて人間を作った、それがエヴァ

 

カヲル「(弐号機に向かって)さあ行くよ、アダムの分身、そしてリリンのしもべ」

 

このセリフから分かるようにエヴァはどう考えてもアダムのコピーとして人工的に作られたものなのです。ところがキール議長いわく

 

「約束のときが来た。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできん。唯一リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」(Air)

 

 つまり、初号機だけアダムではなくリリスの分身として作られたそうです(これはサードインパクトの行く末にも大きく関わる重要なポイントです(別記事執筆予定))。初号機というのはどうやら"特別なエヴァ"であるみたいです。

初号機には他のエヴァとは異なる特別な点がまだあります。それは碇ユイの魂が入っているということです。旧劇考察Air編③で詳しく述べますがこれはめちゃくちゃ特別な状態です。結論だけ言うと初号機には魂が二つあります。

 

まとめると 

エヴァはアダムのコピーとして作られた。

初号機だけはリリスの分身であり、ユイの心が入った特別なエヴァである。

ということです。

 

ユイさんの真意

先ほどユイさんの魂が初号機に入っていると述べましたが、これはユイさんが意図的にやったことであるということが分かっています。エヴァにエントリーする実験に自ら志願し、その実験が失敗したと見せかけて、敢えてエヴァの中に自分の魂を残すということをユイさんはやっています(ヤバい)。それが分かるシーンをいくつか見てみましょう。

 

・実験前

冬月「だからと言って君が被験者になることもあるまい」
ユイ「全ては流れのままにですわ。私はそのためにゼーレにいるのですから。シンジのためにも」(DEATH(TRUE)²)

 

冬月「人が神に似せてエヴァを作る。これが真の目的かね?」
ユイ「はい。人はこの星でしか生きられません。でもエヴァは無限に生きていられます。その中に宿る人の心と共に。たとえ50億年経って、この地球も、月も、太陽すら無くしても残りますわ。たった一人でも生きていけたら。とても寂しいけど、生きていけるなら」
冬月「人の生きた証は永遠に残るか・・・・・・」(まごころを、君に。)

 

・実験直前

冬月「(ゲンドウに対し)ここは託児所じゃないんだぞ」

ユイ「ごめんなさい冬月先生、私が連れてきたんです」
冬月「ユイくん、今日は君の実験の日なんだぞ」
ユイ「だからなんです。この子には明るい未来を見せておきたいんです」(21話)

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実験日、ユイさんはシンジくんを実験の場に連れてきていた

 

・実験後

冬月「人は、生きていこうとするところにその存在がある。それが自らエヴァに残った彼女の願いだからな」(Air)

 

ここ!

エヴァで最もエモい場所だと作者は思っています! 字面だけ見ても分かりにくいと思うのでユイさんの思いを要約させてもらうとこんな感じです。

 

"ゼーレが何をするか、その果てに人がどうなってしまうか、そこに自分は関与することはできない。しかし、人は生きていこうとするところにその存在がある。だから、たとえ補完計画で人類が人類でなくなったとしても、私がエヴァの中で人として生き続けることで人の生きた証を宇宙に残す。それは寂しいことでは決してなく、希望そのものだから、シンジにもその姿を見せておきたい

 

切ないですね。

え、切なくないですか?

切ないんですよ!!

ユイさんはエヴァに残るということが人として、そして母として正しいと信じました。

「いつか人が滅んで、全てが無くなってしまうとしても、私たちは確かに今を精いっぱい生きている。そして、その輝かしい事実は永遠に不滅だ」 

そう彼女は信じ、きっと息子にもそのことを知っていてほしかったのです。

まさに使途の襲来によって絶滅に瀕している、この不幸な時代に生まれてしまった息子だからこそ、今を生きる素晴らしさを噛み締めてほしい。それがユイさんの願いだったのではないでしょうか……。

 

ゲンドウの行動の根底には常にこのユイの行動があります。彼女の思いを受け止め、そして自分なりに解釈し、彼は彼独自の行動を始めます。

こうして彼の孤独な闘いが始まるのです……。

 

 

☟続きのお話し

tomaonarossi.hatenablog.com

 

☟考察記事まとめはこちら☟ 

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