JOJO第4部はアンチ3部だッ!!!!
エヴァ旧劇考察⑥ 渚カヲルの話
エヴァ旧劇考察、ここではこれまでお話しできなかった
"渚カヲル"について少し掘り下げたいと思います。
(この記事今まで書いた考察記事で一番お気に入り)
☟前回のお話し
まずカヲルくん初登場のシーンから。
このときのシンジくんは孤独に打ちひしがれていました。第三新東京市がめちゃくちゃに破壊されたため、トウジやケンスケは家を失ってしまい、今は疎開しています。アスカは精神的に参って入院しています。レイに会う勇気が無いというシンジくんの独白もあります。前話(23話)でレイがダミープラグの材料だったということを知ってしまったからです。
この状況でシンジくんが漏らした言葉がこちら。
「友だちは……友だちと呼べる人はいなくなってしまった……」
辛いシーンです。
こんなときにカヲルくんは夕日の中颯爽とシンジ君の前に現れるわけです。
と、ここでこのカヲルくん初登場シーンをもう一度よく見てほしいのですが、なんか変な石像みたいなのにカヲルくん座ってますね。このとき第三新東京市は第16使途との戦闘でボコボコに破壊されてますから「その瓦礫の一部かなぁ」くらいにしか普通だったら思わないと思うのですが、この石像、実はめちゃくちゃ大事なんです。
根拠はDEATH(TRUE)²でカヲルくんが死んだ直後に映されるこの映像。
そしてエンディングロール。
お分かりのようにカヲルくんが死んでから執拗にこの石像が強調されています。
筆者の考察を結論から言うと、
この石像は元カヲルくんの肉体
なのです。「なにを突飛なことをwww」と思うかもしれませんが、根拠を示します。
一番わかりやすいのは、やはり
・カヲルくんが握り潰されて首が落ちる→石像の首が血で染まる。
この対応です。"カヲルくんの肉体の死"と"像の流血"は、カヲルくんと石像が同等のものでなければ説明できません。
また、旧劇考察⑤で述べたように
・カヲルくんの魂はアダム
というのもポイントです。アダムやリリスが他の生命体と決定的に違うところ。それはこのアダムやリリスはすべての生命の肉体の産みの親であるということです。肉体と魂は別物というのはこの稿で繰り返してきました。魂が生まれるのがガフの部屋で、その魂に肉体を与えるのがアダムとリリスなのです。このことを示唆するミサトさんの言葉を見てみましょう。
ミサト「シンジくん、私たち人間はね、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使途なのよ。他の使徒たちは別の可能性だったの。人の形を捨てた人類」(まごころを、君に)
この言葉、分かりにくいですよね。なんでって使途の定義がめちゃくちゃぐらつくからです。アダムも、リリスも、人類も、みんな使途という同じカテゴリーでくくられています。そのくせアダムとリリスは他の生命体の源だとも言っています。
これは
使途=ガフの部屋から生まれたもの
と考えれば説明できます。ガフの部屋から最初に出てきたものが第1使徒アダムと第2使途リリス。そしてそれ以降にガフの部屋から生まれた魂が順に第3~16使途です。第1使途であるアダムの魂が人の形を取って現れたものが17番目の使途カヲルくんです。アダム、リリス、人類、これらはガフの部屋から生まれたという"魂のレベル"で同等なのです。だから同じ使途という魂のスケールでくくることができるわけです。
こういう点で同じ使途ではあるのですが、肉体のスケールではアダム、リリスは他の使途の産みの親です。先のミサトさんの言葉通りです。また、冬月先生いわく
「ガフの扉が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか」
だそうです。
ミサトさんはアダムやリリスがすべての生命体の産みの親であると言ってます。
冬月先生はガフの部屋が世界の始まりだと言ってます。
はじまりが2つあるんですよね。アダムやリリスが生んだものと、ガフの部屋が生んだもの。この2つを明確に区別しないといけません。
となると
アダム、リリス=肉体の産みの親
ガフの部屋=魂の産まれる所
と分けるのが一番妥当です。
ここまでそれっぽいことを書いてきましたが、それ全部あなたの想像でしょ?と言われるかもしれません。でも、これは後の考察で説明しますが、サードインパクトでリリスが、集めた人の魂に、新しい肉体を与える描写があるんですよ。サードインパクトでリリスは新しい魂を作るわけではありません。あくまで既存の魂に新しい肉体を与えるだけです。なので正しいと筆者は思います。
ここでカヲルくんに話を戻しましょう。カヲルくんはアダムです。そして、上で述べたようにアダムやリリスは自由に肉体を作ることができます。
リリスはレイの肉体があれば簡単にレイと同化しましたし、ほんの数分で宇宙規模にでかい肉体に変身することもできます。その気になればカヲルくんの身体に変身することもできます。肉体を自由に形成できるという点が、アダム、リリスを他の使途の上位の存在たらしめているのです。
また、『まごころを、君に』で、ターミナルドグマから上昇するリリスの手が伊吹マヤをすり抜けていくシーンもありました。あそこなんかは露骨だと思います。リリスにとって肉体とは自由に変形できる水のようなものであり、それはヒトの肉体も同様であるという示唆をあのシーンは与えてくれます。マヤからしてみれば「自分の身体が水のようになって体の内部をくまなく触られていく」ような感じでしょうから、そりゃ絶叫ですよね。
はい、ここまで見れば、カヲルくんも当然なんにでも変身できると考えて問題ありません。カヲルくんはリリスと同等の存在であるアダムなんですから。
だからあの首のない石像がカヲルくんの身体だったと考えても何もおかしいところは無いのです。
また、これは細かい話になりますが
1度作った肉体は(特別な条件がないと)消せない
というのもここで確認しておきましょう。サードインパクトが終わった後クソでかリリスの肉体は崩壊しますが、そのリリスの肉体は消えませんでした。
肉体が崩壊してもリリスが死んだわけではありません。この後も"レイの幻"が出てくるところを見ればリリスは生きていることが分かります(旧劇考察⑤参照)。ただいらなくなった肉体が脱ぎ捨てられただけなのです。
となれば、もともと"カヲルくんの肉体だったもの"も不要になればその辺にポイっとされていても問題ないですよね。
さあ、ここまで「あの石像は元カヲルくんの肉体だ!」と繰り返し述べてきたわけですが、もしそれが正しいとして、1つ疑問が出てくると思います。
カヲルくんはなぜ変身する必要があったのか?
ということです。カヲルくんはゼーレから直接送り込まれてきたということが作中示唆されています。普通に他のエヴァシリーズみたいに飛行機に乗ってネルフに来たらいいじゃないですか。なぜあんな羽の生えたやばい姿でネルフにやってきたんでしょう。理由は1つしかありません。
ゼーレの本拠地が月にあるから
です。根拠はこちらの映像です。
サードインパクトの後、地球は真っ赤っかになっちゃうんですが、なぜか月も一部分だけ赤くなってるんです。そこで「地球が赤くなったのっていつだったか?」を振り返ってみます。
後の考察で述べますがこれ、ヒトが絶滅するタイミングです。人が滅んだ場所から赤く染まっていっているんですよね。
つまり、月が赤く染まっているということは
赤く染まっていた場所には人が住んでいた
ということです。劇中誰かが月に住んでるようなことを示すセリフなどは無いですが、もし誰かがいるとすればそれは世界を裏で支配するゼーレぐらいしかいないでしょう。カヲルくんはゼーレから直接送り込まれた、ということなので、当然
カヲルくんは月からやって来た。
ということになります。どうやってやってきたか? 普通に宇宙船とかに乗ってきた可能性ももちろんあります。が、あの石像がもし元カヲルくんの肉体だったとすれば、それは月から地球にやってくるための肉体だったと考えるのが自然です。
石像がエヴァシリーズっぽい形状をしているのもそのためだと考えれば納得がいきます。サードインパクトが起こったとき、エヴァシリーズは高度22万キロ地点にいたことが劇中示されています。エヴァシリーズっていうのは宇宙空間に耐えうる構造なんです。だから宇宙を渡ってきたカヲルくんの肉体がエヴァシリーズに似た形状をしているというのは筋が通っていませんか?
まとめるとこうです。
・カヲルくんはゼーレ本拠地の月から、地球にエヴァシリーズのような姿になって飛んできた。
・地球に到達したカヲルくんは余分な体を捨てヒト型に変身し、シンジくんと合流した
【2020/9/9 追記】
ネルフの本拠地が月にあることを示唆するかも?しれないシーンを見つけました。
それがこちら。
この第12話の冒頭では、セカンドインパクト時のミサトさんの過去が明らかになるのですが、それはこのカットがチラッと映るところから始まります。月からセカンドインパクトが起こる瞬間を捉えた映像になりますね。
「なぜ月から見たカットから始める必要があったのか?」
旧劇考察②で述べたようにセカンドインパクトはゼーレが意図的に引き起こしたものでした。そのゼーレが月にいたとしたら? セカンドインパクトはこのように月から眺めるはずです。ゼーレがセカンドインパクトの原因だったからこそ、月からのカット(ゼーレの視点)でセカンドインパクトを振り返った……。自然な流れです。
まあ結論ありきの天下り的な解釈ではあるんですけどね~。
*続きのお話し☟
エヴァ考察記事まとめ☟
エヴァ旧劇考察⑤レイとガフの部屋の話
エヴァ旧劇考察も第5段までやってきました。
サードインパクト勃発前夜です。
今回のテーマは"レイとカヲルの正体"そして"ガフの部屋の意味"です。
レイの遺伝子は「ユイとアダムのハイブリッド」説
「レイの魂=ユイの魂」説
エントリープラグについて
「レイの魂はレイの魂だろ」説
「レイの魂=リリスの魂、カヲルの魂=アダムの魂」説
結論:レイの魂=リリスの魂
しかし、これだけじゃ説明できないことが1つ残っています。
それがレイの魂に関するリツコのこんなセリフです。
「魂の入った入れ物はレイ一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになってたのよ。ここに並ぶレイと同じものには魂がない」
このセリフ、エヴァで一番意味不明なセリフだと筆者は思ってます。
このガフの部屋ってなんぞ?ってことです。
新劇場版ではなじみのある言葉ですが、旧劇ではこの「ガフ」という単語は3回しか出てきません。
1回目はセカンドインパクト時の研究員の言葉
「ガフの部屋が開くと同時に熱滅却処理を開始」
→直後に大爆発
2回目は先のリツコの言葉。
「魂の入った入れ物はレイ一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになってたのよ。ここに並ぶレイと同じものには魂がない」
3回目はサードインパクト時の冬月の言葉
「ガフの扉が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか」
1回目と3回目のセリフから
インパクトが起こるときガフの扉が開く
みたいですね。
ネット上では"ガフの部屋"の元ネタがよく解説されています。これ、ヘブライ神話で"魂が作られる場所"だそうです。こう考えれば、この難解な"ガフの部屋"の理解は容易です。先の「人の死は人を産んだリリス(レイの幻)によって導かれる」というのと同じです。"はじまりと終わりが同じところにある"のだとしたら、
ガフの部屋で生まれた人の魂はサードインパクトでガフの部屋へ帰る
ことになるでしょう。本来魂を供給するだけのガフの扉が開き、魂がそこへ逆流していく(そして新たな生命体が形作られる)。それがインパクトなのではないでしょうか。分かりやすいですね。
ところで新劇場版を見た方はガフの扉ってこんな感じだと思っていませんか☟
旧劇場版でも似たものが出現しています。
ですが、筆者が思うにこれはガフの扉ではありません。
これが出現するのは先に挙げた冬月先生の
「ガフの扉が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか」
という言葉のずっと前だからです。冬月先生が「ガフの扉開くぞ!!」って言ってる時点でこのガフの扉的な何かはとっくに消えてなくなっています。
じゃあ旧劇における"ガフの扉"とはどこにあるのでしょうっていう話はまた後のの考察で。
次回は今まで注目していなかった渚カヲルに焦点を当てつつ、ガフの部屋、アダム、リリスについてもう少し深堀していきましょう……。
【補足】
シンジの見たレイの幻
ちなみに、エヴァでシンジくんが"レイの幻を見る"シーンって2回あるんです。
1回目がテレビ版1話冒頭、シンジくんがミサトさんの迎えを待ってるシーン。
2回目は『まごころを、君に。』のラスト、サードインパクトの後アスカと海岸に寝そべっているシーン。文字通り"始まりと終わりで同じ"ことががおこっていますね。これ、レイの幻がリリスの魂の姿だと解釈すれば理屈っぽく説明できる現象です。リリスは人の死を導く、つまり、それまでのシンジくんが死ぬとき(=新しいシンジくんの人生が始まるタイミング)でレイの幻が出てきているというわけです。
次のお話し☟
エヴァ旧劇考察④碇シンジと綾波レイの話
エヴァ旧劇考察第4段です。
今回のテーマは
"ゲンドウとシンジの関係"と"レイの肉体について"です。
前半は世界観の考察にはほとんど関係ないのですが、「エヴァのキモは世界観考察ではなく、本来はその上にある人間ドラマなんだッッ!!!」ということを筆者は強く主張していきたい所存なのでそういう人間性の話もここではやっていきます。
前回のお話しはこちらから☟
目次
リリスの下半身はいずこへ
そう言えば前回、初号機の話で一つ言い忘れていたことがありました。
初号機はアダムではなく
このことに関してネット上で見つけた考察があります。それが「リリスに下半身が無いのは初号機を作るのに使ったからだ」というものです。これを聞いたときは突飛で笑っちゃいました。
確かに、ロンギヌスの槍はセカンドインパクトの時南極にあったのに、その後はなぜかリリスの胸に刺さっています。これはひとりでにそうなったわけなく、「誰かが南極から運んで意図的にリリスに刺した」んです。なんのためでしょうか。
エヴァ考察②でロンギヌスの槍は「ATフィールドを破る=肉体の形成を阻害する」という趣旨のことを書きました。もし、ロンギヌスの槍でリリスの下半身の再生を防いでいるとしたらどうでしょう。(実際、テレビ版で零号機が槍を抜くとリリスの足が生えてきました)
そもそも、リリスに元から足が生えていなかったということは考えにくいです。リリスにはもともと足があったはずです(槍抜けば足生えたわけですし)。ではその足はどこにいったか? ということです。人間が使ったというのが妥当でしょう。何かの研究か実験かはわかりませんが足が無くなった後、槍を刺したのは人間なんですから。
そして劇中、リリスが関与したと言われているのは唯一、初号機だけです(前記事参照)。となるとここにつながりがあると考えるのは不自然な話じゃ全然ありません。面白い考察だと思います。
【2021/1/19追記】
ですが結論から言うとこれは間違っていると言わざるを得ません。セカンドインパクトの後、南極に放置されていたロンギヌスの槍はテレビ版12話になってようやく回収されました。リリスに槍を刺して磔にしたのは第14話です。この時点で初号機はとっくに完成してますからね……。
シンジくんは望まれて生まれてきた子供なのか?
さて、話を本筋に戻します。セカンドインパクトの後、エヴァを建造する過程でユイさんを失ったゲンドウ。赤城ナオコいわく「この日を境に碇所長は変わったわ」(21話)ということです。今まで以上に無口で不愛想になったゲンドウの姿が目に浮かびます。
この直後からゲンドウは「人類補完計画」(ゼーレの最終的なイメージとは異なる形のもの)を推し進め始めます。またこの時期に彼は実の息子を手放しています。
それがユイとゲンドウの息子、碇シンジです。物心ついて間もない彼の心はこのことで深く傷つけられてしまいます。
テレビ版第1話でシンジくんはゲンドウと久しぶりの再開を果たすわけですが(3年ぶり)、そこでシンジくんはこう言います。
「何をいまさらなんだよ。父さんはぼくがいらないんじゃなかったの!?」
この言葉からも決して生優しい別れではなかったことが容易に想像できます。劇中では「ぼくはいらない子なんだ」という意味合いの言葉がシンジくんの口からこぼれることもたびたびあります。シンジくんの精神的な不安定さは全てこのときのトラウマに端を発していると言っていいでしょう。
このことによってシンジくんは随分臆病な子供になってしまったようです。赤城リツコには「人の言われたことには素直に従う、それが彼の処世術」だなんて失礼な評価を受けます。
父と別れてからのシンジくんの生活ですが、彼いわく「先生のところにいた」そうです。里親というよりは孤児院かその類での生活というイメージでしょうか。また一時期チェロを習っていたという記述もあります。チェロなんて習うくらいですから貧しい暮らしではなかったようです。父がネルフ所長ですからね。
さて、ここで考えたいのは「なぜゲンドウは息子を手放したのか?」ということです。この辺りは無限に考察できるポイントだと思います。シンジとゲンドウの関係はエヴァファンなら必ず注目してほしいところです。
例えば、そもそもシンジくんは必要とされて生まれてきたのか? というような疑問があります。根拠はシンジくんの誕生日です。公式では2001年6月6日にシンジくんは生まれたことになっています。セカンドインパクトが起こったのは2000年9月です。セカンドインパクトのホントに直後(もしかしたら直前)にできた子供ということになります。タイミングが良すぎます。
セカンドインパクトで地球の環境は激変して、人口の半分が亡くなっています。冬月先生はセカンドインパクトの翌年を「地獄の1年だった」と評しています。そんなときに子ども作りますかね?
さらに、エヴァに乗れるのはセカンドインパクト後に生まれた子供だけというのもひっかかります。エヴァに乗せるために一刻も早く子供を作らねばならないという必要性に迫られてシンジくんが生まれたという可能性が見えてきませんか?
ですが、個人的には筆者はこれは無いんじゃないかなと思います。
シンジくんは愛されていました。
ゲンドウとユイの「名前決めてくれた?」「男の子だったらシンジ、女の子だったらレイと名付ける」みたいな仲良しシーンも作中では描かれていますし、少なくともユイさんはシンジくんを愛していたはずです。作中のユイさんにシンジくんを蔑ろにするようなそぶりはありません。ユイさんがエヴァに入る日、シンジくんをわざわざ研究所に連れてきたというのも愛情あってのことでした(旧劇考察③参照)
2人はもともとシンジくんをエヴァに乗せるつもりは無かったんじゃないかなと思います。エヴァに乗せるつもりだったらシンジくんを捨てはしません。テレビ版1話で
「レイでさえ零号機とシンクロするのに7か月かかった」
というセリフがあります。しかしシンジくんは使途が攻めてきた当日にネルフに呼び出されています。いくらシンジくんに初号機とシンクロする見込みがあるからって無茶ぶりがすぎます。これ、どう考えてもレイが実験でケガして(零号機暴走事故)エヴァに乗れないから仕方なく呼び出されたとしか考えられません。
それに対して綾波レイはどうでしょうか。「女の子だったらレイと名付ける」と言ってるくらいですから、レイはゲンドウにとって娘のような存在です。またレイは愛するユイのクローンであることが劇中で示されています。つまり、ゲンドウにとってレイはありえないくらい大切なのが明白なのです。しかし、レイは明らかにエヴァに乗るために"作られて"いるのです。(エヴァに乗る以外にもレイには"役割"があるようですがそれはまた別の機会で触れます)
実の息子は自分の元から遠ざけ、代わりにエヴァに乗せるために作った娘には愛情を注ぐ。これは一見奇妙な屈折です。
みなさんはどう思いますか。
ゲンドウはなぜシンジを手放したのか?
漫画なんかではそもそもゲンドウはシンジを憎んでいたって解釈がなされています。ユイさんの愛情を一心に受けるシンジが妬ましかったんですって。まあ、そういう解釈も可能ですよね。愛がないので筆者はあまり好きではありませんが。
筆者はゲンドウなりにシンジを思ってと解釈します。根拠はゲンドウのこんな言葉です。
「俺がそばにいるとシンジを傷付けるだけだ。だから、何もしない方がいい」(まごころを、君に)
ユイを失ったゲンドウ。邪魔になった赤城ナオコ博士を死に追い詰めたり、ゼーレから胎児アダムを奪ったり、自分の計画のためには手段を選ばない男になりました。ゲンドウはそんな姿をシンジに見せたくなかったんじゃないかなと筆者は思います。
ゲンドウはリツコいわく「不器用な人」ですから、単純に父としての息子との距離感を測り損ねていたということもあるでしょう。ですが、手元に置いておいて今後のごたごたにできるだけ巻き込みたくなかったというのが大きい気がします。なんてたってシンジはユイに愛されていたのですから。ユイの愛したシンジを自分の汚れ仕事に巻き込むのには罪悪感を感じるはずです。
もっとも、単純に仕事が忙しくてシンジに構っていられなかったってだけかもしれません。その場合、ゲンドウは典型的な家族を顧みれない仕事一辺倒の人間ということになってきます。
まあ、この問題に答えはありません。きっとどれも少しずつ正解で、どれも少しずつゲンドウの本質なのです。先にあげたゲンドウの言葉を根拠にするなら、考えあってゲンドウはシンジを手放したんだと筆者は思いたいですが。
しかし、たとえゲンドウに考えがあったとしても、それでシンジくんが深く傷ついた事実は変わりません。シンジくんは結構ガチで父親のことを嫌っていたと思います。父親に褒めてほしい認めてほしいという感情もあるにはあったのでしょうが、シンジくんの中のゲンドウは基本的に"嫌いな人"です。どのくらい嫌いかというと、サードインパクトの時、シンジくんの願いによって人類が補完されるのですが、ゲンドウただ1人だけ嫌われすぎて補完されなかったくらいです。
子どもを傷つけるっていうのは実際それくらい酷いことなんでしょうね。これはエヴァが教えてくれる人生の本質情報の1つです。
もう一人の子供、レイ
さて、シンジくんにはそんな風に辛く当たってしまうゲンドウでしたが、彼はレイのことは溺愛しています。零号機暴走事故が印象的ですね。零号機の起動実験でエヴァが暴走し、その際にレイは大けがをしてしまいます。(そのせいでシンジくんを呼び戻さないといけないことになりました)
しかし、レイはあくまで計画のために"作られた"子どもです。水槽の中にレイの肉体がいくつも浮かんでいるシーンが印象的ですね(23話)。
このシーンは意図的に"不気味に"描かれていますね。不自然ってことです。レイは劇中2回死ぬシーンがありますが、その後もレイが平然と復活しています。"レイの代わりがいくらでもあるから"です。しかしどうやら魂は一つしかないようです。リツコいわく
「ここにあるのはダミー。そしてレイのためのただのパーツにすぎないわ。(中略) 魂の入った入れ物はレイ一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになってたのよ。ここに並ぶレイと同じものには魂がない。ただの入れ物なの 」
ということです。要約すると
レイは肉体の代わりはたくさんあるが、魂は1つしかない。
ってことです。ガフの部屋ってなんぞ?っていうのは次回の考察に回します。ポイントは肉体が変わるたびに記憶も無くなるということです。考えれば当たり前です。体が違えば脳みそも別物になるわけですからね。
実際、23話で復活したレイは以前の記憶を失ってしまいます。しかし、ここで以前のレイと新しいレイが完全に断絶しているかというと、そうではないというのがミソです。それは復活のあとレイがゲンドウの眼鏡を見て「初めて見たはずなのに、初めてじゃない気がする」と言って涙を流すシーンから分かります。記憶は無いが知っているというのは"魂の記憶"というべきものがあるということを意味します。
この"エヴァ旧劇考察"では「エヴァの世界で肉体と魂は別」ということを繰り返し述べてきました。そしてその魂というのはどうやら決して個人個人の固定的なものではなく、経験と共に少しずつ変化していく可塑的なものということです。
ここ、筆者の好きなポイントです。
このことがゆくゆくサードインパクトの運命をも変えていくことになるのですが、それはまた別の機会に述べるとしましょう。
ちなみに、wikipediaなんかだとレイの記憶は定期的にバックアップが取られて他のレイにも共有される的なことが書いてあるのですが、これはどうかなと思います。少なくとも3人目のレイはゲンドウの眼鏡の記憶(零号機暴走事故の記憶)がないわけです。もう16番目の使途まで倒してて、最初の使途が来る前のことを覚えてないって……記憶のバックアップほぼ全くやってないじゃないですか。「記憶のバックアップ」なるものが技術的に可能だとしても、その知識はこの作品の理解には全く役立ちません。エヴァ考察にはこういうよく分からない解説もたくさん存在します。
でも、作品そのものに準拠しない、ソースもよく分からないトンデモ情報がこんなにたくさんまことしやかに囁かれているアニメってエヴァの他にはないんですよね。そこがエヴァの深みというか、面白みの1つでもあるなと筆者は思ってます。
ちなみに意味の分からないトンデモ解釈に出会ったりすると筆者は大興奮です。
【2021/1/24 追記】
マルドゥック機関について
マルドゥック機関はエヴァのパイロットを選抜する(たったそれだけのための)組織です。テレビ版15話ではスパイ活動をする加持さんによってこの組織は実はゲンドウによって操られているということが判明します。
ここ、実はかなり重要なシーンなんです。というのはこれはゲンドウがゼーレに対抗する切り札としてレイを用意しているということを示唆するからです。このシーンはわざわざマルドゥック機関という隠れ蓑を使ってゲンドウはレイをパイロットに選んだということを意味します。問題は誰から隠れる必要があったのか?ということです。これは恐らくゼーレの目を欺くためです。テレビ版23話では
冬月「しかしレイが生きていると分かればキール議長らがうるさいぞ」
というセリフがあります。零号機が第16使途との戦いで自爆したことでレイは死んでしまいました。これはゼーレも恐らく分かっていることでしょう。しかし、その後もレイが生存しているということはどうやらゼーレは把握していないようです。ゲンドウは明らかにゼーレに隠れてレイを作っているんですね。ここからゲンドウはレイを使って何かゼーレの意思と反することを企んでいるということまで推測することができます。じゃあゲンドウが何を企んでいるのかというのはまた別の考察で……。
☟続きのお話し
☟旧劇考察第1段はこちら
エヴァ旧劇考察③エヴァと碇ユイの話
エヴァ旧劇考察第3段です!!
今回のテーマは"エヴァンゲリオン誕生秘話"です。
筆者の一番好きな碇ユイのお話しですよ~↑↑
前回の記事はこちらから☟
目次
決戦兵器エヴァンゲリオン
さて、セカンドインパクトによってアダムを抹殺したゼーレは人類存続のため計画の第二段階に着手します。それが
エヴァンゲリオンの建造
です。これはセカンドインパクト前に収集したアダムの情報をもとに行いました。
エヴァンゲリオンの建造は補完計画もありますがそれ以前に使途と戦うため、というのが第一の目的です。アダムや使途はS2機関という超原理で動いています。S2はスーパーソレノイドの略で、とんでもエネルギーを生み出すことができる、この世界でのいわゆるSF設定ですね。
【2020/7/22 追記】
S2機関は一言で言えば"永久機関"です。
エヴァはアンビリカルケーブルによって電力を供給されなければ5分しか動けません。それに対し使途は単独でいつまでも活動していられます。この差はS2機関を持つかどうかです。
トウジが乗ったエヴァ三号機はケーブルついてないのに動き回ってました(アニメ18話)。それは第四使途の残骸から採取したS2機関を研究して搭載していたからです。三号機と四号機はS2機関搭載型として開発された次世代型エヴァだということが劇中で示されています。しかし、三号機は使途が取り付くわ、四号機は大爆発してネルフ第二支部ごと吹っ飛ぶわで、その後しばらくS2機関搭載型エヴァは劇中には出てこなくなります。次にS2機関搭載型エヴァが出てくるのは『Air/まごころを、君に』です。冬月先生はアンビリカルケーブルを付けずに単独で飛行するエヴァシリーズを見て「S2機関搭載型を9体全機投入とは、大げさすぎるな」と言っています。
ゼーレは"裏死海文書"によって間もなく使途が目覚めることを知っていました。エヴァ考察②で述べたように、こいつら使途は人間を滅ぼし、人間に取って代わるかもしれないやつらです。野放しにはできません。しかし使途はS2機関で動いています。人間のそれまでの科学力だけでは太刀打ちできません。
そこで!
アダムから採集した情報なり肉片なりからアダム本体を人工的に再現、対使途ヒト型汎用決戦兵器エヴァンゲリオンを建造するわけです!
このエヴァンゲリオン、S2機関は持ちませんが、自らATフィールドを生成し、さらにそのATフィールドどうしを干渉させることで相手のATフィールドを破ることができます。
これで、使途を全員殲滅!
人類滅亡の危機は脱したのでした。めでたしめでたし。
とは、ならなかったのです。
ゼーレは既に使途を倒した後のことを考えていました。人類補完計画です。エヴァ考察①で「ゼーレはキリスト教の一派が母体かもしれない」と書きました。インパクトのトリガーとなるものに「アダム」とか「使途」とか聖書に出てくるものの名前を付けて呼んでるくらいですからね。その立場から見ればゼーレと言うのは一種のカルト集団なのです。補完計画というのはミサトさんいわく、
「出来損ないの群体として既に行き詰った人類を完全な単体としての生物へ人工進化させる補完計画」(Air)
です。こんなのカルトでしかないでしょう。当然ゼーレの下で働く人たちはゼーレに必ずしも賛同していませんでした。
「DEATH(TRUE)²」では以下のようなやり取りがあります。
冬月「ゼーレの持つ裏死海文書。そのシナリオのままだと十数年後に必ずサードインパクトが起こる」
ユイ「最後の悲劇を起こさないための組織、それがゼーレとゲヒルンですわ」
冬月「私は君の考えに賛同する。ゼーレではないよ」
この2人は決して"人類補完計画"などといういかがわしい計画のためにゼーレの元にいるわけではないようです。
ゼーレ周辺組織
さて、ここでゼーレ周辺の組織関係を今一度確認しておきましょう。
まずよく分からないのが人類補完委員会で、これは実質ゼーレと同じものだと思われます。ピクシブ百科事典なんかには厳密には別で、ゼーレが国連を動かして予算を下ろしてくる際に使う隠れ蓑が"人類補完委員会"と書いてありましたが、”人類補完委員会”なんていかがわしい名前の組織が国連から莫大な予算をもらっていたら客観的に見てドン引きだろとか筆者は思います……。(名前が露骨で隠れ蓑になってない笑) あとマルドゥック機関とかいうのもありますがこれについては後の記事でまた言及します。
このゼーレの下で機能する実働組織が"ゲヒルン"(ネルフの前身)です。
このゲヒルンは第三新東京市に国連直轄の"人工進化研究所"という設備(名前が草)を持っていてエヴァンゲリオンや超優秀なコンピューターMAGIの開発を行っています。ゲンドウはそこの所長を務めていました。
しかし、ゲヒルンと言う組織はエヴァが完成し、続いてMAGIが完成した当日に起こったちょっとした人身事故によりメディアの追求を受け、組織解体となってしまいます。
この辺の出来事は第21話「ネルフ、誕生」で詳しく描かれていますので、興味のある人は見てみてくださいね。
こう書くとゲヒルンとネルフはほぼ同じ組織のように見えますがやってることはかなり違います。ゲヒルンはエヴァ、MAGIの開発が中心的な仕事でした。一方ネルフはエヴァを運用して使途を殲滅することを目的とした組織です。作中のネルフメンバーはこのゲヒルン時代を知っているかどうかで、物語の核心を知っているかどうかが変わってきます。
例えば赤城リツコはゲヒルン時代を知っているのでエヴァやアダムのことについて色々知っています。しかし同い年のミサトさんはゲヒルン時代のことを知らないのでアダムの正体なんかについても実際は全然分かっていません。
こうしてみると作中にはおおざっぱに3種類の人間がいることが分かります。
1.ゼーレ
3.ゲヒルンを知らない新規ネルフメンバー(シンジくんはここ)
この三者がそれぞれ違う意志を持って動いているのが『新世紀エヴァンゲリオン』なのです。
1番目のゼーレは「サードインパクトによって人類を完全な単体へと人工進化させること」を最終目標としています。
3番目の"新規ネルフメンバー"は「死にたくない、生き延びたい」くらいしか考えてません。
難しいのは2番目の"ゲヒルン時代からのネルフメンバー"です。彼らがどう考えていたのかを探っていくべく、彼らのセリフを振り返っていきたいのですが、その前に前提としてエヴァンゲリオンについて詳しく確認しておきましょう。
初号機は"特別な"エヴァンゲリオン
赤城リツコ「アダムから神様に似せて人間を作った、それがエヴァ」
カヲル「(弐号機に向かって)さあ行くよ、アダムの分身、そしてリリンのしもべ」
このセリフから分かるようにエヴァはどう考えてもアダムのコピーとして人工的に作られたものなのです。ところがキール議長いわく
「約束のときが来た。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできん。唯一リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」(Air)
つまり、初号機だけアダムではなくリリスの分身として作られたそうです(これはサードインパクトの行く末にも大きく関わる重要なポイントです(別記事執筆予定))。初号機というのはどうやら"特別なエヴァ"であるみたいです。
初号機には他のエヴァとは異なる特別な点がまだあります。それは碇ユイの魂が入っているということです。旧劇考察Air編③で詳しく述べますがこれはめちゃくちゃ特別な状態です。結論だけ言うと初号機には魂が二つあります。
まとめると
エヴァはアダムのコピーとして作られた。
初号機だけはリリスの分身であり、ユイの心が入った特別なエヴァである。
ということです。
ユイさんの真意
先ほどユイさんの魂が初号機に入っていると述べましたが、これはユイさんが意図的にやったことであるということが分かっています。エヴァにエントリーする実験に自ら志願し、その実験が失敗したと見せかけて、敢えてエヴァの中に自分の魂を残すということをユイさんはやっています(ヤバい)。それが分かるシーンをいくつか見てみましょう。
・実験前
冬月「だからと言って君が被験者になることもあるまい」
ユイ「全ては流れのままにですわ。私はそのためにゼーレにいるのですから。シンジのためにも」(DEATH(TRUE)²)
冬月「人が神に似せてエヴァを作る。これが真の目的かね?」
ユイ「はい。人はこの星でしか生きられません。でもエヴァは無限に生きていられます。その中に宿る人の心と共に。たとえ50億年経って、この地球も、月も、太陽すら無くしても残りますわ。たった一人でも生きていけたら。とても寂しいけど、生きていけるなら」
冬月「人の生きた証は永遠に残るか・・・・・・」(まごころを、君に。)
・実験直前
冬月「(ゲンドウに対し)ここは託児所じゃないんだぞ」
ユイ「ごめんなさい冬月先生、私が連れてきたんです」
冬月「ユイくん、今日は君の実験の日なんだぞ」
ユイ「だからなんです。この子には明るい未来を見せておきたいんです」(21話)
・実験後
ここ!
エヴァで最もエモい場所だと作者は思っています! 字面だけ見ても分かりにくいと思うのでユイさんの思いを要約させてもらうとこんな感じです。
"ゼーレが何をするか、その果てに人がどうなってしまうか、そこに自分は関与することはできない。しかし、人は生きていこうとするところにその存在がある。だから、たとえ補完計画で人類が人類でなくなったとしても、私がエヴァの中で人として生き続けることで人の生きた証を宇宙に残す。それは寂しいことでは決してなく、希望そのものだから、シンジにもその姿を見せておきたい”
切ないですね。
え、切なくないですか?
切ないんですよ!!
ユイさんはエヴァに残るということが人として、そして母として正しいと信じました。
「いつか人が滅んで、全てが無くなってしまうとしても、私たちは確かに今を精いっぱい生きている。そして、その輝かしい事実は永遠に不滅だ」
そう彼女は信じ、きっと息子にもそのことを知っていてほしかったのです。
まさに使途の襲来によって絶滅に瀕している、この不幸な時代に生まれてしまった息子だからこそ、今を生きる素晴らしさを噛み締めてほしい。それがユイさんの願いだったのではないでしょうか……。
ゲンドウの行動の根底には常にこのユイの行動があります。彼女の思いを受け止め、そして自分なりに解釈し、彼は彼独自の行動を始めます。
こうして彼の孤独な闘いが始まるのです……。
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エヴァ旧劇考察②セカンドインパクトとロンギヌスの槍の話
エヴァ旧劇考察第2段です。
この考察記事は大雑把ですが時系列順にお話しを進めていきます。
ようやくセカンドインパクト勃発です。エヴァの全てはここから始まりました。今回のテーマは"セカンドインパクトってなんぞ?"です。前回の続きですが、関連はあんまないのでここから読み始めてもノープロブレムです。
目次
本当のセカンドインパクト
さて、"裏死海文書"のおかげで人類滅亡の運命を知っていたゼーレ。彼らがこの危機を回避するために最初に起こした行動が2000年、南極でのセカンドインパクト誘発です。セカンドインパクトについての手がかりには以下のセリフがあります。
ミサトさん「15年前のセカンドインパクトは人間に仕組まれたものだったの。それは他の使途が目覚める前にアダムを卵にまで還元することによって被害を最小限に食い止めるためのものだったの」(Air)
セカンドインパクトはゼーレが意図的に起こした。
その目的はアダムを卵に戻してしまうことだった。
と言ってますね。AIr冒頭あたりで、ミサトさんはゼーレの引き起こしたセカンドインパクトの真相にたどり着きます。ミサトさんは加地さんを失ってからネルフのやり方に疑問を持ち、独自に動き始めていました。
なぜ、ゼーレはそんなことしたんでしょうか。使途が目覚めたときにアダムがいると何が問題なのでしょう。その手掛かりを探して今度はカヲルくんのセリフを振り返ります。
「アダム、我らの母たる存在。アダムに生まれしモノはアダムに還らねばならないのか。人を滅ぼしてまで」
「ぼくもアダムより生まれしものだからね」
「さあ僕を消してくれ、そうしなければ君らが消えることになる。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ」
使途はアダムから生まれた。
使途がアダムに還ることで人類は滅び、還った使途だけが生き延びる。
ということみたいです。これは前回のエヴァ考察①で話したように「死と新生」を行うサードインパクトの内容とぴったり一致します。つまり、アダムがいれば、人間の死と使途の新生(人間から使途への世代交代)が起こってしまうということです。それを未然に防ぐためにアダムを抹殺しておく必要があった、ということじゃないでしょうか。
人間は絶滅したくないのです。使途に取って代わられるわけにはいかないのです。そのためそのトリガーとなりうるアダムと、人に取って代わるかもしれない使途は絶対に抹殺しないといけないのです。これがゼーレの計画の第一段階です。ゲンドウの意志もここまではまだゼーレと共通します。
しかし!
ここでインパクトは「アダムに使途が接触すれば起こる」というような単純なものではないということは覚えておかないといけません。実際セカンドインパクト時まだ使途は目覚めていません。アダムしかいないのにどうしてあんな大爆発が起こったのでしょう。
人工インパクトの鍵は"ロンギヌスの槍"
セカンドインパクトがいかに誘発されたのかを探るべく、今度はセカンドインパクトで何が起こっていたのかを見てみましょう。セカンドインパクトの記録映像には以下のような研究員の言葉が残っています。
「ロンギヌスの槍は?」
「先週死海からこっちに陸揚げされたままです」
「地下に送る前に処理は必要だろ、大丈夫か?」
「提供者との接触実験は来月13日の予定だ。調整は間に合うよ」
「今日の実験は例のフィールドの自我境界信号だったかな?」
(↑今日何の実験をするかも曖昧な研究者ってどうなの?)
(場所が移る)
「アダムにダイブした遺伝子は既に物理的融合をはたしています!」
「ATフィールドがすべて開放されています!」
「槍だ! 槍を引き戻せ!」
「ガフの扉が開くと同時に熱滅却処理を開始」
「すごい、歩き始めた」
「ヤツ自身にアンチATフィールドに干渉可能なエネルギーを絞り出させるんだ」
(大爆発)
セカンドインパクト直前、アダムに何かの遺伝子を導入し、ロンギヌスの槍を突き刺した。
ということらしいです。これをどうにかして解釈します。
"ロンギヌスの槍"と"ATフィールド"の意味
それを考えるためにここでまた話を少し移して、ロンギヌスの槍の役割について考えましょう。ロンギヌスの槍が出てきたシーンでどんなことが起こったのかを復習します。
・槍の効果
1.ATフィールドを貫通する。
2.セカンドインパクト時アダムに突き刺していた。
3.リリスに刺さっていた槍を抜くと欠けていた足が生えてきた。
4.サードインパクト時、エヴァシリーズが自分の胸に槍のレプリカを刺してリリスと同一化した。
5.サードインパクト時、初号機は槍と合体して生命の樹に還元された。(←は!?)
5番目は意味不明すぎるのでいったん置いておくとして、1~4は結構筋が通ってるんです。まずATフィールドについてですが、これは「誰もが持つ心の壁」という風にカヲルくんは説明しています。この意味は『まごころを、きみに』の冒頭のシーンと合わせてみれば理解しやすくなります。
ここでゲンドウは「時間が無い。ATフィールドがお前の形を保てなくなる」と言います。ATフィールドは心の壁であり、ATフィールドが正常でなければ肉体は保てない、つまり
ATフィールドとは、肉体を形作ることによって本来筒抜けの心を見えないように隠し、心と心を突き放してしまう力
なのです。ATフィールドがもっと強力になれば、使途のように肉体どころか何物も寄せ付けない障壁として使えるようになるでしょう。なので槍を突き刺すことは肉体を取り払うこととイコールであり、場合によってはこれは他者との融合を可能にすることを意味するでしょう。
先ほど言った「リリスに刺さった槍を抜くと欠けていた足が生えてきた(=肉体の回復)」というのなんてこう考えればすごく腑に落ちませんか?
かくしてセカンドインパクトは不発に終わった
ここで、話をセカンドインパクトに戻しましょう。セカンドインパクトでは槍を刺し、遺伝子を導入していましたね。結果は案の定、アダムと導入遺伝子の融合が起こりました。当時南極にいた葛城調査隊のその日の実験目標はあくまで「例のフィールド(おそらくATフィールド)の自我境界信号」なので、槍を刺してアダムのATフィールドに干渉してみようくらいのつもりだったと思うのですが、ゼーレの思惑により大変な事故に繋がってしまいました。
キーとなるのは(手がかりが少なすぎて何とも言えないのですが笑)、遺伝子の導入です。これがなんの遺伝子だったか? ということなんですけど、まあ、人でしょ、多分。使途はまだ目覚めてませんし、リリスは肉体を自由に作る力があるので遺伝子を持ちません(旧劇考察⑥参照)。
こうして覚醒したアダムはセカンドインパクトを起こしました。
でもここまで考えればこの条件で完全なインパクトなど起こせるはずがないんです。先ほど「アダムは使途と接することでインパクトを起こし、人類から使途への世代交代を起こす」と書きました。ここでアダムに接触したのは人の遺伝子だけです。そもそも人間は今絶賛繁栄中なので世代交代する相手がこれじゃいませんし、接触したのは遺伝子だけです。人間には魂があります。魂(心)と肉体は別物です。繰り返しますが、心の周りにATフィールドによって形作られたものが肉体です。なのでアダムに遺伝子(肉体の情報)を融合させたというのは「アダムを覚醒させるのに必要最低限の情報だけをアダムに与えた」という感じでしょうか。
その結果、アダムは不完全なインパクトしか起こせず、暴走したのか、N2兵器で吹っ飛ばされたのかは分かりませんが木っ端みじんになって消滅した……こういうことだと思います。
さて、無事人類滅亡のトリガーとなるアダムを抹殺したゼーレですが、計画はまだまだ終わりません。アダムは消えましたが、使途がまだ残っています。人類滅亡の危機は完全になくなったわけではないようです。
そこで今度は使途殲滅のために、セカンドインパクト前に回収したアダムの情報からエヴァンゲリオンの建造を始めます。そして、「人類補完計画」とかいうカルト計画が少しずつ動き始めるのです……。
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エヴァ旧劇考察 ①インパクトとゼーレの話
この記事の目標をまず掲げておきます。
この考察記事の目標は難解奇怪奇妙奇天烈で有名なあの
エヴァンゲリオン旧劇場版
完全理解!!です。
そのための考察材料はテレビ版と旧劇場版です。新劇は敢えて使いません。当時発表されていたものだけ使います。
特にテレビ版総集編のDEATH(TRUE)²は冒頭に
"これがエヴァンゲリオンの本当の姿です"
とかいうテロップが流れるのでTV版本編より考察材料として信憑性あるってことにしました。ネットの情報も書きますが、眉唾物も多いのでそのときはそうとちゃんと言います。
エヴァ考察記事まとめ☟
目次
インパクトってなに
エヴァ旧劇考察はまず、映画タイトルからサードインパクトの意味を考えるところから始めましょう。
この未完成で発表された映画はTV版の総集編であるDEATH編と、新作映画の予告編となるREBIRTH編の二部構成になっています。"シト新生"自体が"死と新生"のダジャレになってるんですね。
(ちなみにその翌年公開された『エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)²』はこのDEATH編の完全版です。つまりテレビ版総集編ですね。この(TRUE)²は特に深い意味はなくて、2回改正があったよってことです。この辺のいきさつはwikipediaにも詳しく書いてます)
ここから分かるのは、アニメ24話は死に向かう話(DEATH)、そしてその後の部分("Air/まごころを、君に"対応部分)は死後の新生の話(REBIRTH)だということです。"Air/まごころを、君に"はサードインパクトのお話しですから、このサードインパクトというのも"新生"を意味すると考えていいでしょう。
実際『Air』でゼーレメンバーは「滅びの宿命は新生の喜び」「これは通過儀式なのだ。人類が再生するための」などとサードインパクトのことを表現しています。
インパクト=新生の儀式
では、サードインパクトで死に、滅亡したものは何か、これは明確に人類です。
テレビ版24話は、人類が緩やかに死に向かっていく話。
劇場版は、人類が滅亡した後、何かが新生する話。
この構造をまず前提として押さえておきます。("死に近づいていく物語"と考えると何だかTV版の見え方が変わってきますね)
インパクトをそのように捉えると1つの疑問が生じます。
セカンドインパクトやサードインパクトが"新生の儀式"だったとするなら、その前には"ファーストインパクト"なるものもあったの?ということです。
次回の考察で述べますがセカンドインパクトは不発インパクトなので何も滅んでませんし、何も新生していません。ではファーストは? これはサードで滅んだ人類の誕生を指していると考えるのが妥当でしょう。
ファーストインパクトで人間が誕生し、地球を支配した。
その人間がサードインパクトで滅亡し、人間に代わる何かが新生し、新しく地球を支配した。
という大きな流れが見えます。
これが私たち視聴者、エヴァを考察したい人向けのインパクトの説明になります。
ちなみにインパクトについてはもう一つ設定があります。
シンジくんたち作中キャラクターの立場で考えてみましょう。シンジくんはなぜセカンドインパクトと聞いて「セカンドって何がセカンドなんだよ……」と思わないのでしょう。それは「セカンドインパクトが世間的には隕石の衝突として説明されている」ことから説明できます。
作中人物はみんなセカンドの前に起こった、いわゆる「ファーストインパクト」と呼ぶべき最初の隕石衝突を知っているのです。それが”ジャイアントインパクト"です。これは現実にある言葉で、月が隕石の衝突によって生まれたとする仮説です。このジャイアントインパクト=ファーストインパクトという認識のもとにシンジくんたちはいるのだと思われます。テレビ版7話にちらっと歴史の教科書の映像が出てくるのですが、これはそこに書かれていることなので間違いありません。(2021/1/6 追記)
エヴァ世界では月が重要なモチーフとしてよく使われるんですよね。ジオフロントは別名"黒き月"ですし、テレビ版のエンディングテーマは"Fly me to the moon"です。後の方の考察で述べますが筆者はゼーレの本拠地が月にあると思っています。月はエヴァ世界では超重要なキーワードですのでこれからしっかり考察していきます。
まとめるとセカンドインパクトには2つの意味があることが分かります。
1つは「2度目の新生の儀式」という本当の意味。(ゼーレの使う意味)
もう1つは「2度目の隕石衝突」という表向きの意味。(世間的な理解)
ネットなんかだとファーストインパクトで地球に隕石が落ちてきて、月ができて、その隕石にいたアダムとリリスが使途と人間を生み出した……みたいな説をときどき見かけます。これは実は漫画版がソースになっている解釈で、テレビ版の世界観とは必ずしも一致しません。ですが面白い解釈ではあります。以下のようなセリフがこの説を支持しそうです。
ヒトを生んだリリスが"黒き月"から生まれたとすれば、その月を生んだ隕石衝突のときにリリスが地球にやってきたと考えるのも不自然はありません……。
アダムやリリスはどこからやってきたのか?という問題は今はあまり深く触れませんが、この考察を最後まで読んでいただければ最終的にその謎も解けます(多分)。
秘密結社ゼーレのモチーフ
これらの事情を知っていたのがゼーレという組織です。ゼーレは劇中黒いモノリス(石板)の形で登場するあの黒幕っぽい組織ですね。(ちなみにこのモノリスは映画『2001年宇宙への旅』に登場するものが元ネタになります。劇中では進化・未知・知性辺りを象徴するモチーフとして使われていました)
アニメ初期のゼーレはモノリスではなく、実際に人として描かれていましたね。このゼーレ、すごく弱そうで自分は好きです笑。
ゼーレはドイツ語で魂を表す単語です。この人たちは"人類補完計画"という人類の魂を統合して完全な生命へと進化させようとする計画を推し進めています。そこだけ見ると"魂(を意味するゼーレ)"が"進化(を表すモノリス)"で現われるというのはピッタリの演出ですよね。イキです。人類補完計画についてはまた別の機会で詳しく考察します。こんな風にモチーフで遊ぶっていうのはエヴァ作中で結構あります。
ネット上だとゼーレは中世のとあるキリスト教の秘密結社が起源だ、という意見をよく見かけます。これもかなり眉唾ですが、作中の重要なモチーフにキリスト教的な名前が付けられていることを見れば、なるほどと思うところもあります。アダムとかエヴァとか聖書に出てくる単語がよく作中に出てくるのは、それを名付けた人たち(ゼーレ)が元々キリスト教徒だから、というわけです。
このゼーレは社会を裏で支配する秘密組織として出てきますが、彼らがこの世界の仕組みを知っているのは”裏死海文書”という世界の仕組みについて書かれたものを持っているからです。裏死海文書自体がどういうものなのか描写されたことはありませんが、ともかくゼーレは近い将来、人類が滅亡する(インパクトが起こる)ことを知っています。それは困る!ということでネルフやエヴァを作って破滅を逃れようとするわけです。その方法が"人類補完計画"という奇妙なものになってしまったせいでゼーレは後々ゲンドウらと敵対することになってしまうのですが。
【2020/7/21 追記】
裏死海文書の正体
この「裏死海文書」なんですが、文書っていうくらいなのでアダムとかリリスについて書かれたなんか聖書的な文書をイメージしがちじゃないですか? ですが、筆者が思うにこれはそういう"文書"ではないと思います。もしそうだとするとアダムやリリスをさらに俯瞰して見ることができる下図のようないわゆる神様がこの世界に存在することになります。
エヴァンゲリオンの作中に"神"という単語は確かによくでてきます。しかしそれはいわゆる神様として存在するものではなく、あくまで"世界を作り変えることができる力"ぐらいの観念的な意味合いです。別に神様が実際いるわけではないのです。そういう存在がいてしまうとむしろエヴァの世界観は壊れてしまいます。
だとすると裏死海文書の正体は一体何か。筆者はアダムやリリスの存在を科学的に裏付けるものだと思っています。例えば、地層の中の火山灰が積もっている層を調べることで大昔に大噴火があったことを推測できるように。何かしらアダムやリリスと言った超生命体がかつて地球に存在していたということを示す科学的物証。かつてリリスからヒトが誕生したこと(=ファーストインパクト)を裏付ける科学的物証。近いうちヒトの絶滅を導くインパクトがまた起こるということを証明する科学的物証。そういう類のものをまとめてゼーレは"裏死海文書"と便宜的に呼んでいるのだと筆者は思います。あるいは、そういう科学的物証を解析することで得られた世界の成り立ちと人の起源、そして人類を待つ破滅的な未来について報告する一本の論文の名前が"裏死海文書"だと考えてもいいかもしれません。(こっちの方がリアルですかね?)
そしてもう一歩踏み込むなら、その"科学的物証"は恐らく死海の環境そのものなんだと筆者は考えます。テレビ版12話でゲンドウと冬月がセカンドインパクト後の南極を訪れた際このようなことを言っています。
冬月「いかなる生命の存在も許さない死の世界、南極」
ゲンドウ「だが我々人類はここに立っている。生物として生きたままだ」
(中略)
冬月「(南極を指して)まさに死海そのものだよ」
ゲンドウ「だが、原罪のけがれなき浄化された世界だ」
セカンドインパクト後、南極は科学の力で守られなければ生命が存在できない土地になってしまった。
それは死海の環境と同じ状態である。
って言ってます。つまり死海そのものが生命の起源やアダム、リリスの秘密に迫る重要なカギだったということではないでしょうか。(なぜ死海がそんな特殊な環境になっているのかは後の考察で)
【2020/8/1】
『2001年宇宙の旅』とエヴァの結末
ゼーレモノリスの元ネタとなった映画『2001年宇宙の旅』ですが、あらすじは大体こんな感じです。
(ネタバレ注意!!)
舞台は、科学が進歩した近未来(といっても映画中ではそれは2001年ということになっているので今から考えれば最早近"未来"とは言えないのですが)。人類は月に黒い謎の石板(モノリス)が埋まっているのを発見します。未知の物質でできており、明らかに人工的な形状をしているモノリス。一体誰がモノリスを作ったのか?いつから、なんの目的でそこにモノリスがあるのか? 謎が深まります。すると突然、モノリスが太陽の光を浴び、木星に向かって強力な電波を発し始めた!!!! これは何かのメッセージか? それとも……。ということで主人公たちはこの謎を解明するため、木星に向かって出発します。道中AIの暴走とか紆余曲折あった末、木星にたどり着いた主人公。彼はそこで巨大なモノリスが宙に浮かんでいるのを発見します。すると主人公は光の渦に飲み込まれ、スターチャイルドと呼ばれる新人類へと進化したのでした……。
やばいですね。
はい。やばい話なんですよ。でもこの映画はその強烈な映像表現のせいもあり、後世のSF作品群に莫大な影響を残したと言われています。エヴァも明らかにその影響を受けたものの一つです。人類が滅亡し、新しい生命が誕生するサードインパクトなんてのは世界観がまんま同じでしょう。この観点から言えばエヴァというのは究極的には「ヒトはどこへ行くのか、進化の果てに待っているのは一体何なのか」という話だとも言えるんですね。
ちなみに進化と新生命をテーマにしたアニメや漫画は他にも、富野由悠季の『伝説巨神イデオン』や鬼頭莫宏の『なるたる』、しりあがり寿の『そして、カナタへ』などを筆者は知っています。どれもパンチがあって面白いので興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。
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